第9話 寝付けぬ夜
明日は早いから早く寝なさいとは言われたものの私はすぐには眠ることができなかった。
もし今目をつむるとこの今日の一日が長い夢であって、目を開けると留年大学受験ぼっち生活に戻るのではないかと思ったからだ。
「眠れないのか。」
すると右横のアレンが私の方に体を向けて小さく声をかけてくれた。
「うん。」
「ベルは図太そうだからラムみたいにすぐ寝てしまうと思ってた。」
ラムはユトの右横でスヤスヤと一番始めに寝てしまった。気持ちよく眠られて羨ましい限りである。
「なに?二人ともまだ起きてたの?」
私の左横だったユトも身体をぐるりとこちらに向けて私を心配してくれた
「ごめん、起こしちゃった?」
眠っていたユトを起こしてしまったんじゃと思ったがユトは首を振った
「ベルが眠れないらしいんだ。」
「そうなの?ベル」
二人は私の顔の方を向いて心配してくれた。申し訳ないが本当に眠れない。というより起きたらこの長い夢が終わりそうで怖くて目を閉じれないのだ。私は小さく頷いて答えた。
「起きたら…また一人になるんじゃないかと思って…」
私のか細い声を聞いて、アレンは私の布団の中に腕を入れて私の手を見つけると、そっと私の布団の中で手を繋いでくれた。
「眠れないなら俺が握っておくよ」
するとユトも続いてギュンッと私の布団の中に両腕をツッコミ今度は私の左腕に巻き付くように布団に入ってぎゅっと抱きついた。
「これなら絶対離れないよ!安心した?」
二人が私の腕や手をつかむ。
二人の体温を感じる。
ポカポカと暖かく横にいる二人の匂い。
そして何より繋いだこの手が私を安心させた。
「二人ともありがとう。なんだか夢の中にでもいるみたいだよ。すっごく嬉しい」
「夢なんかじゃない。ほら、手だって握ってる」
そう言って布団の中でぎゅっと握っていた手をアレンは私に見せつける
「そうだよ。僕なんかもうベルに離れてって言われても腕から離れてあげないよ。」
ユトは私の腕に頬をスリスリとして甘い顔をこちらに向けてくる。こんな顔の美少年に肌をスリスリされて離れてなんて言えるわけがないが、この先ずっと離れないとなると日常生活に支障が出るので勿体無い気もするが離れてほしくもある。
「あの、ずっとは困るから朝になったら離れてほしいな」
「うーん…どうしてほしい?」
ユトはまた意地悪そうな顔で返してきた。私の顔を見てくっつかれていることに本気で嫌がっていないことが分かったらしい。この男は分かった上で聞いてるのだ。将来魔性の男になりそうな予感しかしない。予感であってほしいものだ。
そしてアレンもユトも私の手を話さず私が眠ってしまってからも繋いでてくれた。
その後の記憶はない。私は目を閉じることに恐怖を感じなくなり、ホッとしてぐっすり眠ってしまった。
「ベル…寝たかな?」
「あぁ。寝息も立ててるんだ。これで寝てなかったら相当な芸達者だ。」
「それもそうだね。」
ベルの寝息が聞こえるとユトとアレンも続けて目を閉じた。そしてしっかりとベルを掴んだその手を話さず二人はそのまま眠ってしまった。
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