第7話 共同浴場とシスター
共同浴場は孤児院の敷地内にありもう一つの塔にある。長い通路を通ったとこにある。湯冷めするとのことで夏でもバスローブは絶対らしい。
「ついたよ。着替えはそれぞれ空いてる棚を勝手に使っていいからね。」
「うん」
ユトの言うとおり私は空いている棚に持ってきた着替えを入れた。共同浴場は日本の銭湯のような感じだった。なんだか異世界なのにところどころ風呂文化といい日本文化か混じっている気がする。
「ベル?脱がないの?先行ってるよ」
ユトはサッサと着替えてドアを開けて風呂場に向かった。それに続いてラムちゃんやアレンも私を置いて行ってしまった。
しかし今までが順調に行き過ぎていたが今私は最難関門に直面している。なぜなら私は女の子だ。
スッポンポンになれば竿も玉もつかぬ姿があらわになる。そうなればいくら子供で胸がないからとはいえ付いているはずのものがないならばあっけなくバレる。
しかしここでバレるわけにはいかない。
私は大きく息を吸って覚悟を決めて服の裾を掴んで大きく上へガバッと脱ごうと手を振り上げた
「えいっ!」
しかしヘソがチラリと見えるまで上げたところで後ろからヌっと伸びた男の白い腕が伸びてきて私の振り上げる腕を掴んで止めた。
「こらこら。少し待ちなさい。」
後ろから私を抱くように腕を回していたのは紛れもないシスターのムルだった。
「シスター!」
「今から入るのですか?入るときは私を呼びなさいといったでしょ?」
え、そんなこと言ったっけ…多分この人の勘違いだと思う。なぜならシスターは仕事がまだ残ってるからと私を部屋に残してすぐにどこかに行ってしまったからだ。
「そんなこと聞いてませんよ」
「そうでしたっけ?……あ、いい忘れてましたね。すみません(ニコッ)」
このシスター絶対にすみませんなんて思ってない!!
「さぁ、少し場所を変えましょうか。お風呂はあとで私と入りましょうね。」
「え?」
そう言うと後ろから伸びていた手は私を抱きかかえるように私の胴に手をかけ我が身に引き寄せた。シスターは右手で私の尻を持ち上げ左手を背中に回して私をしっかりと支えて持ち上げた。首の座っていない赤子でも抱いているのか。そんなにしっかり抱かれなくたって私は歩けるのにと思ったが私はシスターに身を任せて共同浴場を出た。
しばらく夜風が涼しいシーンとした通路をシスターに抱っこされながら歩いているとシスターは私の背中に添えていた左手で私の頭をポンポンとした。
「シスターどうしたんですか?」
「可愛らしいと思ったので」
「は、はぁ…」
「嘘です。本当は少しお話があったので連れ出しました。」
「嘘なんですね」
「君が可愛いのは本当ですよ?(ニコッ)」
変なフォローをされても困るので私は軽くあしらった。それにしても話したいこととは何だろう。私は高校生を22歳になるまで留年するほど頭が悪く特に現代文と数学、地理、化学…どの分野も欠点の数々は凄まじく教師は最終的に私をなんとか卒業させるべく特別チームを編成して私を卒業させようとまでしてくれたくらいだ。勉強だってたくさんした。しかしなぜか1年ごとにリセットされるように全く定着しないのだ。それくらい私の頭はひどい出来だということだ。
しばらくもんもんと考えているとシスターは私の髪を優しくなでながら話し始めた
「急に孤児院に連れてきてしまい申し訳ありません。まだ謝っていませんでしたので。」
なんと話というのは連れてきてくれたことに対してだった。私としては転生者で見よりも何もない状態だったからこっちとしては嬉しい限りだし感謝せねばならないのはこちらの方だ。私は慌てて謝るシスターに弁解する
「違います違います!!迷惑だなんて思っていません!!拾ってくださったことにむしろ感謝しています!」
これは紛れもない事実だ。あそこでシスターに出会わなければもしかしたら今も私はあそこに倒れていたかもしれない。
「そうですか。それは良かったです。ですがもう一つお伝えしておくことがあって連れ出したんです」
私はなんだろうと首を傾げた
「さっきは君が風呂に行ってしまったと周りの子達に聞いて驚きました。間に合ってよかった。」
「え…?なんで私がお風呂に入るのにシスターが焦るんですか?」
シスターは何か言いたげな顔をしてからヤレヤレと頭を抱えてため息をついた。
「先にお伝えしておくと、私は君が女児であることは把握しています。私はその上で、君をこの孤児院で預かろうと思いました。」
「え!?」
私は驚いてつい大きな声を出してしまった。シスターはあまりに驚く私を見てクスクスと笑った。まったく、笑うところじゃない。本当にびっくりしたのに。
「理解するしないは問いません。しかし君にはこれからこの孤児院で皆とともに“習い子”として生活してほしいと思っています。」
「そして、心苦しい気持ちもわかりますが男として生活してもらうことになります。」
「“習い子”…?」
やっぱり男として生活するのは変わらないか。それは大丈夫だろう。今まで男性に女性として見られたことがないのが私のアイデンティティですらあるからだ
「君の年くらいならまだ傍目からでは男児か女児かの区別は付きません。その点は安心してください。」
「そ、そうですか…」
私はここまでの話を聞いてホッとした。女児とバレたら最悪追い出されて独り身になると思っていたからだ。とりあえずセカンドライフの最悪の結末は回避できた。
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