第6話 部屋の同居人

「ラムってばもう新入りのこと仲良くなったの?いいなー僕はユト。よろしくねベル。」


そう言ってラムの後ろから現れたのはラムや私より身長の高い男の子だった。サラサラの肩までつきそうなほど長いクリーム色の髪の毛でまるで女の子のようだった。


「よろしくユト」


握手を求めたその右手に気づき、私も右手を出した。すると彼は私の右手をさらに左手でそっと包み、仲良くしようねと微笑んだ。


しっとりとしたその手に包まれて私の右手は熱くなってしまいそうだった。なんだか触り方が丁寧なせいで変な汗までかいてきた。


「どうした顔が赤いぞ?疲れてるのか?」


「え?いや、大丈夫!あ、ユトもう手を話してくれても大丈夫だよ!」


照れながらそう言うとユトはふーんと首を傾げてこちらを見つめてから物足りなさそうに手を放した。


「大丈夫ならいいが…」


そう言って私を心配してくれたのは紺色の髪で目が真っ赤な男の子だった。


「ほら!アレンも自己紹介しよ。」


「言われなくてもわかってる。俺はこの部屋の室長のアレンだ。よろしくなベル。」


「うんよろしくね。」


アレンも私より背が高い。背の高さで言うとアレンとユトが同じくらい高くて私とラムちゃんが同じくらいだ。少し私のほうがラムちゃんより高いかもしれない。しかしそんなこと本人に言ったら怒られそうなのでやめておく。





そして、ご飯も食べて窓の外は暗くなってきた。そろそろ寝る時間である。


私も今日は色々あって眠たい。転生したことが本当は夢で起きたら留年高校生の大学受験生活がまた始まるのかと思うと嫌になる。そんなことをもんもんと考えている間に皆は何やら棚から何かを出して準備をしている。


「ラムちゃんラムちゃん何してるの?」


「はぁ?風呂に行くんだよ。悪い?」


声をかけただけでこれだ。森の中でお友達交渉成立したから私達はもうお友達のはずなのになぜだ。私はラムちゃんとこんなに仲良くなりたいと思っているのに。思いの一方通行って悲しい…



「そうだ。今から僕らお風呂に行くんだ。着替えはそこに置いてあるから一緒に行かない?」


ユトは嬉しそうに棚から着替えを出して私の入浴セットの準備をしてくれた。




就寝前に風呂に入ることはルールであり神に捧げる体を毎日清めることは絶対らしい。


ここはおそらくヨーロッパに近い文化なのでお風呂文化はないはずだ。そう思っていたがどうやら違うようだ。


共同の風呂場があり、皆そこで汚れを落とすのだと言っていた。基本的に時間など決まっておらずみんな入ってゴチャゴチャとしているらしい。


「はい、これはラムちゃんの着替え。貸してあげるよ。」


「ちょっと待ちなよ。僕の着替えなのになんでユトが貸してあげるていになってるのさ!おかしいだろ!」


「何を言ってるの?さぁこれを持って一緒に行こ」


「それはこっちのセリフだよ!ユトだって自分のが余ってるんだから、それを貸せばいいだろ」


「えーでも僕の着替えだと少し大きいから。小さい着替えってなると、この孤児院だとラムのしかないよね?」


ユトは反抗するラムの頭の上に手を当てながら笑顔で言った。ラムはクソーっといった表情で悔しそうにしながらも私に着替えを貸してくれた。やっぱりラムちゃんはツンデレいい子だ。


「そろそろいいか?ユト、ラム、ベル。準備ができたら早くいくぞ。」


そうアレンに促され、私はラムちゃんから着替えを受け取って部屋を出て風呂場に向かった。

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