第3話 はじめまして孤児院の方々
教会からしばらくしてようやく孤児院に辿り着いた。教会は街の端に位置しており孤児院からは街を通って行くらしい。
孤児院の敷地につく頃には街の賑やかな声も聞こえなくなっていた。聞こえるのは鐘の音と小鳥のさえずりや風で木々の葉が擦れる音だ。
「ここが私達の孤児院-Fです。さあシオン。そろそろベルをおろしてあげなさい。」
シスターがそう言うとシオンは仕方ねえなといった感じで抱きかかえていた私の両脇を優しく掴みゆっくりと地面におろしてくれた。
するとシオンはクスッと人差し指を少し曲げ柔らかく握った右手を口元にもっていき、笑う口元をさり気なく隠して笑った。
「俺の胸の中はそんなに心地よかったのか?」
「え?」
私はなんのことかと思ったが、シオンが自分の左頬に人差し指を向けてココだよ言わんばかりにコチラに合図を送るので何だろうと思って自分の左頬に手をやるとベッタリねっとりしたものが手につく。
「うげ!」
「はははっ!俺に抱かれるだけでなくスヤスヤ寝入っちまうなんてよほど気持ちよかったんだな!」
手についたよだれは確実に私のものであり私が寝たという確実な証拠だ。孤児院につくまでの記憶が街からあやふやになっていたのは寝てしまったからだろう。後ろには森が見えるので賑やかな声が消えるやいなや寝たのだろう。
皆がニヤニヤして私の顔を見るので恥ずかしくなって服の裾で急いでゴシゴシとよだれを拭き取った。
「シスター!取れましたか?」
「取れましたよ。ただ頬にまだシオンの服のシワの跡が付いています。可愛いですよ(ニコッ)」
「はい!?」
寝起きの状態で今からセカンドライフの家のみんなに挨拶するなんて最悪だ。確実に居眠り坊主やのんきな奴という変なあだ名もつきかねない。
「大丈夫です。そのほうが子供っぽくて可愛らしいです。さあ行きますよ。」
そう言ってグッと手を掴み私を強引に連れて行く。このシスターは物腰柔らかな印象のくせして行動は実に意地悪な性格の人だと思った。
孤児院は普通の建物だった。特に装飾のこった建物というわけでもない。建物にツタが絡みついて立派な緑のカーテンができており小さな花たちもポツポツと見える。そして孤児院の横に威風堂々と立つ太くて大きな幹の木の枝は孤児院の窓の方まで伸びている。
「ここが孤児院…」
「さぁ開けるよ。みんなただいま。」
「おかえりなさいシスター。」
子供達は全員男の子で年は最年少で7歳くらい。一般的な孤児院より年齢層が高いのかこの異世界ではこれが一般的なのか分からないが成人男性に近い年齢の体格のいいものもいる。周りをキョロキョロとしている私を物珍しそうにみんな見ている。
「シスターそいつ誰?。新しい少年隊のメンバー?」
みんなの集まる間を割って入ってきたのはピンクアッシュの短髪の髪の私と同じくらいの年齢の生意気そうなガキだった。
「少年隊に入るかは後にベル自身が決めることです。ベル、皆に挨拶を。」
軽く背中をポンッと押されて前に立たされた私を皆が一層見る。皆私の事に大変興味があるみたいだ。私は頬をさすりシワが残っていないか心配になりながら挨拶をした。
「こんにちは。ベルと言います。今日からこの孤児院でお世話になります。よろしくお願いします。」
パチパチパチパチ
「それでは皆で食事の準備をしましょう。ラムはベルと一緒にポトの実を取ってきてくれるかな。」
「えー。コイツと行くのかよー。いいよ僕一人で行けるしこんなどんくさそうな奴いたら日が暮れちゃうよ。」
なんて失礼なやつなんだ。さっきのピンクアッシュの短髪で釣り目の生意気そうなガキは見た目通り生意気だった。生意気というよりただただ失礼な気もする。
「お願いしますね(ニコッ)」
「ゔっ…!!」
しかしシスターの黒い笑顔にはかなわないみたいだ。上下関係がはっきりしているなー。
「分かったよ。アンタはベルだっけ?僕はラム。」
偉そうに自己紹介をしたピンクアッシュの短髪のガキの名前はラム。年齢は私と同じくらいかな。
「よろしくね。ラム」
「言っとくけど僕はまだ君のことをこの孤児院のメンバーだなんて認めてないからね!足引っ張ったら森の奥でできるだけひと目につかないところに置いてっちゃうから!」
フンッと言って草かごを背に背負い森に向かっていった。私はまだ草かごを背負っていなかったので急いで背負ってラムの後ろを追いかける。
森の奥でって言ってたけどそんなことしないよね?少し心配なまま私は孤児院の敷地から出て森に向かった。
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