雪の精霊

バブみ道日丿宮組

お題:栄光の雪 制限時間:15分

雪の精霊

 形なきものは崩れ落ちることもなくただ消えるもの。

 そんな儚い存在が雪の精霊。

 彼らは冬の雪が降る短い季節だけ生きる存在。春には彼らが昇華した花の精霊が現れる。

 僕はそんな彼らを研究してるうちの1人で、彼らとのコミュニケーションを求めてる。彼らは人懐っこい性格をしてるから簡単なコミュニケーションはできた。

「こんにちわ」

「ーーーーー」

 背中にある四枚の美しい透明な緑の羽を動かし、空を滑空するその様子はいつみても神秘的だ。人間が空を飛ぶのを夢見た過去はきっと間違いじゃなかった。

「今日はどこからきたんだい?」

 精霊は、

「ーーーーーー、ーーーー」

 僕の周りを飛んで、キレイな光の鱗粉を散布する。

 彼らの声は未だ翻訳することはできない。これが可能になった時人間は新たな未知へとたどり着けるだろう。

 精霊が僕らにもたらすのは一体なんだろう。

「また精霊さん、きてるの?」

 声に視線を向けると、一人娘がパジャマ姿で見てた。

「あぁ、こっちにきてごらん」

「んー」

 抱きつく娘を優しく撫でると、その周りに精霊たちが集まってきた。彼らは子どもが大好きだ。だからこそ、雪遊びをしてるとよく近づいてくる。

 一緒に遊ぶとその日は幸運が訪れると言われており、幼い子どもたちは彼らを友だちとして一緒に遊ぶ。決して言葉が通じなくても子どもは友だちになれる。それが彼らの魅力。大人たちも邪険に扱うことはせずその様子を眺めるのがこの街での日々だ。

「キレイ」

「ーーーーー」

 飛び交う精霊たちはその声に嬉しいのか娘の周りをぐるぐると回る。

「じゃぁ朝ごはんを食べようか。またね」

「ーーーーー」

 言葉を理解してるのか、精霊たちはその場を後にした。

「またきてくれるかな?」

「あぁ、彼らは子どもが大好きだからね」

 娘が抱きついたまま、居間に向かうと妻が朝ごはんを作ってた。

「もう少しだから待ってね」

 テーブルに座った私は、彼女を見つめる。

 研究に没頭する私に起きた奇跡。雪の精霊がもたらしてくれた出会い。もし彼らがいなければ、私は人としての幸せを感じることもなかった。

 だからこそ、彼らについて深く知りたい。もっと多くの人に知ってほしい。

 世界にいる精霊は数多い。人間とともに暮らしてるものもいれば、嫌悪してるものもいる。それはまるで人間のようであり、神秘的でもある。

「はい、おまたせ」

 テーブルに配膳してく妻の背中には6の青い羽がきらりと輝いてた。そう……彼女もまた精霊のかごを受けた存在なのだ。

 すぐそばにいる存在、それが精霊……なのかもしれない。

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雪の精霊 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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