第19話

鉢合わせ 編②

修 side



「え?同じく"塩顔"ってだけじゃなくて?」

彼女はそう言って、俺とお兄さんの顔を交互に見た。

「え?あ、ホントだ!」

「でしょ?樫野さんは今流行りの"中村倫也"に似てるし、蓮はあの……"星野源"に似てるモンね。」

え?優里さん、そうなんですか?

「ふはっ、"中村倫也"と"星野源"と……千咲は"本田翼"だし、優里さんは"小松菜奈"だし、その4人が一緒に居たら、"大スクープ"ですよね(笑)」

「ふふふっ、リアルにそうだったらね(笑) あ!千咲が樫野さんを選んだ理由がわかったよ。"大好きなお兄ちゃん"と似てるから……でしょ?」

え?

「もうっ!そんなこと、ないよ!って……否定は出来ないけど(苦笑) 私、今の今まで2人が"似てる"って気づいていなかったモン!」

え?千咲?"否定は出来ないけど"が気になるんですが(笑) 

「ふっ、千咲……その反応、修くんが不安になってるぞ。」

と正面に座っていたお兄さんが言った。や……

「修、ごめんね。私も無意識なところはわかんないのよ。無意識にお兄ちゃんと似てるから選んだのかもしれないけど、今は修のこと……ちゃんと好きだからね。」

彼女にそう言われて、照れてしまう。

「ふっ……それを目の前で見せられている俺(兄)の気持ちは?」

「え?知るか!お兄ちゃんだってさ、私が幸せなの嬉しいでしょ?私もね、お兄ちゃんが幸せなの嬉しいの。優里と婚約してくれて、嬉しいよ。」

「ふはっ、そうか。」

「私がね、素直に言えるようになったのも修のおかげなの。前はね、やっぱ"置いてけぼり感"があったからさ(苦笑)」

「あ、前に……知り合ったときも"置いてけぼり感"って、言ってましたよね?素直に言えるようになって、良かったっすね。」

「ふふふっ、聞いてました?樫野さんは"功労者"ですよ?」

「え?あ……千咲、"ポークソテー"おひとつ、どうぞ。」

そう言って、彼女の皿に載せると

「え?あ、ありがとう。」

と彼女はお礼を言ってくれた。

「ふっ、優里……俺の1つ食う?」

「うん、じゃあ……もらおうかなぁ?」

お兄さんは優里さんの皿に載せた。

「「うっ、美味しい♡」」

千咲と優里さんは見事にハモった。

「このセットのスープも美味しかったしさ、やっぱ"スープが美味しいお店は料理も美味しい"その法則は間違ってないっ!」

彼女がそう言うと

「ふふふっ、千咲……一緒に呑み行ったときも『カシオレ美味しいお店にハズレはないっ!』って、言ってたよね。でも、確かにスープが美味しいお店はハズレがないのかも?この"ナポリタン"も美味しいしね。」

と優里さんは言った。

「ふっ、千咲……そんな"食いしん坊発言"してたんだ?俺……酒、少ししか呑めないから、千咲と一緒に呑みに行ったことないなぁ(苦笑)」

「ふふふっ、蓮……イマドキ"ノンアル"もあるんだからさ、今度4人で呑み行こう。」

「あ、いいね♪修も大丈夫?」

そう千咲に聞かれて、

「あ、はい。たぶん皆さんと同じく土日休みなんで、予定合わせられると思います。」

と答えると

「アレ?そういえば……樫野さんはお仕事って……」

と優里さんに聞かれた。

「あ、小学校の先生です。」

「修は意外と忙しいんだよねぇ。平日は早く寝ちゃうしさー、夜遅くには連絡出来ないの。」

千咲がそう言うと

「あ!だからだ!だから、千咲……俺んトコ来る回数減ったんだろ?」

とお兄さんは言った。

「もうっ、お兄ちゃん……確かにそうだけどさ……"舞台裏"を修に明かさないでよっ。」

「悪りぃ、千咲。修くん、こんなヤツだけど……末永くよろしくな。」

そう言って、お兄さんは頭を下げた。

「あ、お兄さん……頭を上げてください。俺のほうこそ、よろしくお願いします。」

そう言って、頭を下げる。頭を上げると……千咲と優里はその様子を微笑ましそうに見ていた。

「ふふふっ、蓮……"可愛い妹"が幸せになって、良かったね。あ……もうみんな、食べ終わったかな?蓮、4人分のお会計お願い。」

「ふっ、ああ。伝票預かるな。」

お兄さんはそう言って、伝票を取った。

「え?そんな……お兄ちゃん、良いのにぃ。」

「ふっ、千咲……良いって。ココは俺の奢り。こん中でいちばん"年上"なんだし、当然だろ?」

「お兄ちゃん……ご馳走さまでした。」

そう言った千咲に合わせて、俺も

「ご馳走さまでした。」

と言って、頭を下げた。4人で店を出て、

「あ、じゃあ……私たち、こっち行くね。」

「うん、じゃあ……私たちは反対側で。千咲、明日会社でね。」

そう言って、別れた。

「千咲、素敵なお兄さんだな。」

「ふふふっ、うん。ちょっと"過保護"なトコはあるけどね……修はお兄ちゃんに認めてもらえたみたいだよ?嬉しいねぇ。」

千咲は嬉しそうにそう言って、繋いでいた手を握り直した。

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Ain't Nobody Know ゆき @kuma0896

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