第18話

Ain't Nobody Know-鉢合わせ 編-

修 side



「あ、すみません……アレ?優里?……とお兄ちゃん、どうして居るの?」

友人夫婦に渡す"出産祝い"を選んでいると隣に居た彼女がそう言った。え?

「ふふふっ、千咲。偶然♪」

彼女の親友の優里さんはそう言っているけど……

「もうっ、優里!"偶然"じゃないんじゃないの?ココ、教えてくれたの優里じゃんっ。」

と彼女は言っている。

「え?"偶然"だよぉ。確かにココは教えたけどさ、ココでデートするとも限らないじゃない?私たちはね、千紘たちに渡す"出産祝い"を選びに来たの。」

「千咲、優里の言う通りだぞ!俺らは"出産祝い"選びに来たんだ。」

彼女のお兄さんもそう言っているけど……

「んー、なんか怪しい……2人で私たちの様子を見に来たんでしょ?」

と彼女は訝しんでいる。

「まぁまぁ。……あ、せっかくなんで……4人で昼メシ食べませんか?」

そう誘ってみると

「あ、はい。是非。……千咲、良いよね?」

と優里さんは彼女に聞いた。

「樫野さんが良いなら……」

「じゃあ、決まり。見て回って、どの店にするか考えましょ。」

そう言って、レストランフロアを4人で見て回った。

「あ!ココ、良いんじゃない?」

彼女が指差した店はいわゆる"ファミレス"で……

「千咲、俺もそう思ったんだ。ココなら、各自好きなモン選べるしなぁ。それに、お前……"オムライス"、ちっちゃいときから好きだったよな?」

とお兄さんは言った。

「ふふふっ、お兄ちゃん。覚えててくれたんだぁ。……あ、私……昔っから、"オムライス"が大好きで。"子ども舌"なんで、子どもっぽくてすみません。」

「あ、いえ。俺も"オムライス"好きですよ。まぁ、今日何にするかはメニューを見てから考えます。」

4人で店内へ入って、席に座り、メニューを見る。

「えっと……私はもちろん"オムライス"で。優里はどうする?」

「うーん……私は"ナポリタン"にしようかなぁ?」

「そっか。俺はこの"タレカツ丼"にしようかなぁ?」

お兄さんがそう言うと

「え?"タレカツ丼"?」

と彼女は言った。

「ふっ、わかった。千咲に1枚やる。」

え?お兄さん?

「ふっ……千咲さん、良かったね。俺は……この"ポークソテー"にしようかな?」

そう言うと

「ん?"ポークソテー"?」

と彼女はまた言った。

「ふっ、千咲……修くんから1つもらったら?俺のはいいからさ。」

「あ、同じ"豚肉"だもんね(笑) じゃあ……樫野さん、良いですか?」

「あ、はい。じゃあ、俺から千咲さんにおひとつ渡しますね。」

4人分の料理を注文し終わったあと、料理が運ばれて来るのを待っていると

「んー、やっぱ妬けるなぁ……」

と優里さんは言った。

「え?何が?優里、どうしたの?」

「"蓮と千咲が積み上げてきた34年間"に嫉妬してるの。蓮はさ、千咲のこと……だいたい知ってるんだもんっ。」

そう言って、優里さんは膨れている。

「え?優里だってさ、妹……美紗音ちゃんと積み上げてきた時間があるじゃん!それと変わんないって。」

優里さんにも妹さんが居るようで、彼女がそう言うと

「そんなことないって。私は……美紗音のこと、何も……"何も"でもないけど、私はほとんど知らないモン。樫野さんも妬けちゃいますよね?」

と優里さんは俺に話を振ってきた。

「え?俺っすか?そうだなぁ……俺も弟居るけど、優里さんと同じく、俺も弟のこと……ほとんど知りませんねぇ。まぁ、でも……妬けたりはしませんよ。」

「ふふふっ、樫野さんは心が広いですねぇ。ん?千咲と樫野さん、"さん付け"で呼び合っているんですか?」

え?俺たち?

「あ、はい。お付き合いをはじめたのは今日からですしね(苦笑) それに……千咲さんのほうが"年上"ですから。」

「まぁ、それは……気にしちゃいますよね。私も蓮のことを"呼び捨て"にするってなったとき、気にしちゃいましたもん。」

優里さんはそう言って、苦笑いしている。

「優里……樫野さん、私……"修"って、呼んでもいいですか?私のことも"千咲"でいいですよ。」

「あ、はい。"千咲"……」

「ふふふっ、"修"。」

彼女はそう言って、嬉しそうだった。

「千咲……それを目の前で見せられている俺(兄)の気持ちは?」

お兄さんはそう言って、苦笑いしている。料理が運ばれてきて、各自食べ始めた。

「お兄ちゃん、優里……嫌な思いをさせて、ごめんね。"ランチ"終わったら、"別行動"のほうが良いね。」

千咲がそう言うと

「千咲……そうだよね。私も『妬けちゃう』とか言って、ごめんね。ふふふっ、そういえば……樫野さんも"長男"なんですね。私も"長女"だし、千咲は"長子"に可愛がられるのかもしれないね。」

と優里さんは言った。

「ふふふっ、そうかも♪"末っ子"だから、可愛がられる術を知ってるのかも!"懐に入り込む術"っていうかさ。」

「ふふふっ、私も樫野さんもまんまと入り込まられちゃったってコトね。"ごろにゃー"って感じで……ん?樫野さんと蓮、どことなく似てる?」

斜め前の席に座っていた優里さんがそう言った。

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