第17話

修 side



「なぁ、修?」

「なんだよ?悠真?」

「あのさー、俺の結婚式に職場で世話んなってる先輩の妹が来るんだけどさ、彼氏居ないみたいだから……声掛けてやってくんねぇ?」

仲間内で呑んでいると、来月結婚する学生時代の友人の悠真に言われた。

「悠真の職場の先輩の妹さんが来んの?悠真とはどうゆう繋がりよ?」

「や、俺は特に繋がりはないんだけどな……千紘の友だちなんだよ。」

悠真はそう言って、苦笑いしている。

「千紘ちゃんの?」

「ふっ、ああ。千紘から写真も預かって来たんだ。『修に会う』って言ったら、『くれぐれもよろしく』って、千紘のヤツ言ってたよ。」

そう言って、携帯で写真を見せて来た。

「この左側の子な。因みに真ん中の子はその先輩の彼女。」

「わっ、可愛いじゃん。俺が狙っちゃおうかな?」

覗き込んできたヤツがそう言った。

「ふはっ、山本……オマエ、既婚者じゃん。浮気する気?」

悠真がそう言うと

「やっ、さすがにそれはな。ウチのカミさん、怖ぇーしな。娘も居るから、それはな……」

と山本は苦笑いしている。

「先輩の妹にはさ、"愛人"に成り下がって欲しくないんだよ。こんなかで未婚なの、修だけじゃん?だからさ、修にお願いしたいんだよな。」

「あー、そうゆうことね。わかった。じゃあ、結婚式で会ったら……声を掛けてみんな。」

「修!サンキュー。俺のミッション完了。」

悠真はそう言って、嬉しそうだった。



「樫野さん?どうしたんですか?」

やべっ、千咲さんと一緒に居るんだった。

「や、な……悠真に千咲さんのことを頼まれたときのこと、思い出してたんだ。」

「え?中村さんに私のことを?」

「ああ。世話んなってる先輩の妹だから、『くれぐれもよろしく』ってさ。」

まぁ、実際に『くれぐれもよろしく』って言ってたらしいのは千紘ちゃんなんだけど、要約してそう伝えると

「中村さんがそんなことを……あ、そういえば聞きました?千紘ちゃん、"おめでた"なんですって。千紘ちゃん可愛いし、中村さん格好良いし、おふたりのお子さんなんて"美男美女"間違いナシですよね。」

と千咲さんは言って、嬉しそうだった。

「ああ、悠真に聞いた。アイツ、とっても嬉しそうだったよな。」

「私、プレゼントするの好きなんで、今から"出産祝い"を贈るのが楽しみなんです。」

「おっ、じゃあ……今日いろいろ見ますか?良さそうなモンあったら、買っちゃったら?」

「はいっ、じゃあ……そうします。……樫野さんと『2人から』ってことにしますか?」

千咲さんにそう言われた。え?

「千咲さん、俺ら……まだ付き合ってないよな?」

「ふふふっ、はい。樫野さんが『まだ』って、言ってくれて……嬉しかったです。」

え?"ひっかけ"だったってこと?

「ふはっ、まんまとやられちゃいました。千咲さん、俺と付き合いますか?」

「ふふふっ、はい。私で良かったら、よろしくお願いします。」

樫野修、彼女が出来ました。



「あっ、ココ……兄と優里の"初デート"の場所なんですって。"初デート"は映画で、それも『中村さんに勧めてもらった』って言ってました。」

そう!千咲さんと会っているココは映画館が併設されている、いわゆる"シネコン"なんです。

「あ、悠真に?アイツ、なかなかやるなぁ。」

「そうなんですよね。中村さんには兄妹共々お世話になりっぱなしです。兄は"初デート"の場所勧めてもらって、私は……樫野さんを紹介していただいたし。」

千咲さんはそう言って、照れている。

「え?俺はさ、悠真みたいに格好良くもねぇし、正直"優良物件"じゃねーよ?千咲さんこそ、可愛いし……"引く手数多"なんじゃないっすか?」

「いえいえ、そんなことないです。こんな30半ばの私の相手をしてくれるのなんて、樫野さんくらいで……」

そう、彼女は俺より3つ上……悠真には悠真の職場の先輩と妹さんの年齢も聞いていて。

「ふはっ、そんなこと気にしてたんすか?俺、特に"年上趣味"ってワケじゃないんすけど……それでも、千咲さんはとても魅力的です。あ、ちゃんと言ってなかったっすけど、俺……千咲さんのこと、好きです。2人で会うのは初めてなのに、こんなこと言ってすみません。」

「ふふふっ、いえ。私もちゃんと伝えてなかったですね。私も樫野さんのこと……好きです。」

千咲さんはそう言って、繋いでいた手の指を絡めて来た。

「ふはっ、じゃあ……見て回りますか?」

そう言って、デートを再開した。



その様子を見守って居る人影が2人分……

「ふふふっ、蓮。千咲、上手くいって良かったね。」

「ああ、俺も優里と一緒に見に来れて、良かったよ。さぁ、俺らも"デート"しますか?悠真と千紘ちゃんに"出産祝い"買わないとだもんな。」



蓮と優里も"シネコン"に来ていることに鉢合わせするまで気づかなかった千咲と修なのでした。

千咲、この場所を教えてくれたのは誰?そこから推測出来るでしょ(作者より。笑)



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