第16話

番外編②

千咲 side


2020年7月11日。今日は千紘さんと中村さんの結婚式。優里は千紘さんと仲が良くて、お兄ちゃんは中村さんの会社の先輩で……私はオマケで呼んでもらった。披露宴のお料理はデザートのみビュッフェ形式。

「じゃあ、優里、お兄ちゃん!私、行ってくるね。」

「え?千咲、ひとりで大丈夫?私も一緒に行こうか?」

「ふふふっ、良いって。優里はお兄ちゃんと一緒に待ってて。」

そう言って、離れる。ふふっ、さすがにさ……親友と兄とは言え、婚約しているふたりのあいだに入ることは出来ないよね。手に持ったお皿に盛り付けていると

「こんにちは。新婦のご友人のかたですか?」

そう男性に声を掛けられた。優しそうな笑顔の男性。

「あ、はい。一応(笑)」

「ん?"一応"?」

「あ、はい。私の親友が新婦の友人で、兄が新郎の会社の先輩なんです。私はオマケで呼んでもらいました(笑)」

そう言って、笑う。

「あー、そうゆうことですか。えと、僕は新郎の学生時代の友人で、樫野修(かしのしゅう)と言います。」

「樫野さん……私は四宮千咲(しのみやちえみ)です。」

そう話していると、優里と目が合った。手を振ると

「ん?さっきおっしゃっていた"親友"のかたですか?」

と樫野さんに聞かれた。

「あ、はい。その隣に居るのが兄です。」

そう言うと、目が合ったのか樫野さんはペコッとした。

「ふたりは婚約してるんです。」

そう伝えると

「え?婚約ですか?それはおめでとうございます。」

と樫野さんは言ってくれた。

「ありがとうございます。ホントにこれまでの道のりが長かったんです。2人のことは大好きなんですけど……"置いてけぼり"感がハンパないですね。あ、すみません。出会ったばかりのかたにこんな話。……何かお取りしましょうか?」

「ふっ、いえ。あ、あの……」

「はい?」

「今度2人で会いませんか?」

「え……あ、はい。是非。」

そう言って、笑った。出会いがどこに転がっているかなんて、誰にもわからない。

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