第6話 モノローグ -ひとのおもい- タマ、ひとのおもい

-タマやタマ-


-お前が私の後継ぎになれたらねぇ-



あたしが初めて、絵を書いてみたいと思った時の記憶だ。



世は室町の頃だったはず。

あたしを拾った夫婦は、あたしがあやかし猫だと知らず、

あたしは幾年いくとせかを猫として飼われていた。


尋常ならざる猫であり、人に成れるもので、

けれども、どちらの似姿をしても、

人にも、猫にも、結局のところ成りきれず、

まがい人、まがい猫、

せいぜいが、そういったものでしかなかった頃のことだ。



飼い主の絵描き夫婦には子が無く、

そういった意味では、あたしがあの家の子だった。



二人は猫だと思っていても、黙って猫のふりをするあたしに、

いつも人の言葉で話しかけてきた。


-タマやタマ-


あたしへとそう話しかけて、

いろいろなことを話してくれた。



いつまでも手の掛かる子ども。

けれども、ずっといっしょにいる子ども。


彼らが望んだ相手。

あたしはずっといっしょに居た。





そしてあたしは、あるときから、あの人たちの娘になる。

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ひとりごと みなはら @minahara

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