離婚の原因は「僕がすべて悪い」

あかりんりん

離婚の原因は「僕がすべて悪い」

幸せそうに見える僕の家族だが、正式に妻と離婚することになった。


今や日本では3組に1組が離婚する時代であるので、特段珍しい事でも無い。


離婚の主な原因は僕が妻に対して長年に渡るモラハラ、いわゆるモラル・ハラスメントである。


言い訳すると僕の両親を見て育ったことで、昭和では「男は仕事だけしていれば良い」風習が当時にはあった。

その結果僕は「金を稼いだ方が偉い」と勘違いしていて、専業主婦で3人の子育てをしてくれていた妻を罵り、責め続けてしまっていたのだ。


僕がその過ちに気がついたのは28才の時、横浜へ転勤した時だった。


都会では父親が仕事をしながら子供の行事だけでなく、公園や幼稚園へ連れて行く姿をよく見た。

それに僕よりも圧倒的に大きい会社に勤めており僕よりも金も稼いでいるであろう人たちが。


僕はそれに衝撃を受けた。


それと同時に、まさに天狗の鼻をへし折られたのだった。


自分のこれまでの父親像が崩れ去り、自分のちっぽけなプライドを捨てる努力をし始めた。


それから僕は妻を労るようになり、積極的に家事や育児を取り組み、妻に任せっきりだったことを恥じんで勉強し始めた。


すると今まで興味が無かったような事をたくさん学ぶ事ができた。


その中で、ある年配の男性の心理学者が言った内容に震えたことを覚えている。


「お母さんが元気な家庭は子供の良い心が育つ。つまり、お父さんの一番大切な仕事は、会社で働くことでは無く、もちろん家事や育児をすることでも無い。お母さんを元気にさせることだ」


この公演を聞いた会場では男性達はションボリし、女性達はスタンディングオベーションで拍手喝采だっだ。


このような勉強をしていて、ようやく妻にこれまでの7年間分の謝罪を始めたのだ。


だが、妻はもう僕を許してくれなかった。


もう僕を「ストレスの塊」だと考えていて、妻は解決方法は長年に渡り試していたが、当時から僕が全く聞く耳を持たなかったので、もう諦めてしまっていた。


長期に渡り苦労とストレスを与え続けていたから、それも仕方ないことだと思った。


そんな妻と、一つだけ意見が合うことがあった。


それは皮肉にも離婚は示談で済みそうであり、余計なお金を払ってまで裁判するつもりは無いことである。


以前は僕は子供の親権を取りたかったが、前述した「母親の重要さ」を学んだ後、子供のためにも僕が親権を取るべきではないと決断した。


「僕が生きている間に何か形として残しておきたい。それは今まさに書いている小説や子供達などでもかまわない」

と、僕の勝手なエゴのために子供達を犠牲にする訳にはいかない。


こういった考えが出来るようになったのも一つの成長だと考えているが、すべて遅すぎた。


示談で養育費は毎月約8万円、相場はよく知らないが子供が3人いるから当然の値段なのかもしれない。


そして3年前に購入した建売住宅とチャイルドシート3つ付きの車および貯金約8割を妻達に与えることになった。


そこまでは順調に話が進んでいったが、1つの事柄で少しだけ悩むことになった。


それは「今後、定期的に子供に会うかどうか」ということだ。


僕の周りの友達で離婚したカップルを何組も見てきたが、いずれも子供達に定期的に会う約束をしているようだった。


中には全財産を渡す代わりに、子供達に月に一度会うように要望していた男友達もいた。


だが僕は真逆の考えだった。


想像してみて欲しい。


例えば両親が離婚した後、母が一人で仕事と育児と家事に追われ、ヘトヘトになって精神的にも肉体的にも疲れ果て、精神を病んだとする。

そして養育費とパートの仕事だけでは貧乏でおやつも買えない。

学校などの行事でも周りは華やかな服装をしているにも関わらず、一人だけボロボロの、さらには兄弟のお下がりを着ている。

それが原因でイジめられ、不登校になってしまった。

ヒドい時には家の窓に石を投げられ、窓ガラスを割られることもある。

もちろん警察には通報したが、解決には至ってない。


そんな苦しい人生の中で、月に1回、元父親がヘラヘラしながらドーナツを買ってやってくるのだ。


そんな時あなたならどうするだろうか?


こいつのせいで母さんもオカシクなり俺もイジメられたと考えている僕ならこうする。


「こいつを殺して俺も死ぬ」


と父親が置いていった金属バットで撲殺するのだ。


・・・


どうだろうか。


少し話を盛ってしまったが、全く無いケースではないだろう。


では次は、少し展開を変えて別のストーリーとしよう。


離婚した母親を心配して、母の友達がよく家に来て手伝いをしてくれるようになった。


そして、いつしかその友達の弟も一緒に手伝うことになり、その弟がとても好印象で母と気があった。


それなら程なくして母はその友達の弟と再婚することになり、やがて四人目となる子供も産まれた。


幸せな家族像がまた出来ていた。


そんな中、今度はお酒を飲みながらフラフラ会いに来る元父親と月に1回会う日がまたやってきた。


そして父親は酔いに任せてイヤミを言う。


「ほー!俺が居なくなったと思ったらすぐに再婚か!このアバズレめ!おい!お前もこんな女のどこが良いんだ!ホンっとにバカばっかりだよ!」


と、弟の方にも八つ当たりして一人で怒鳴って暴れて帰って行く。


どうだろうか。


「こいつさえいなければ・・・」


そう思い、やはり元父親が置いていった金属バットで撲殺してしまうのではなかろうか。


・・・


と、2つほどストーリーを例に出したが、いずれにせよ、父親が定期的に会いにいくべきではないと考えている。


それではどうするか?


僕の答えはこうだ。


「もう俺は死んだ事にしといてくれ。当てはないが他県に住むつもりだし、万が一出会っても他人の空似だと」


この話をすると僕の友達は大抵こう言う。


「クズ」


「無責任」


「子供が可愛そう」


「撲殺されろ」


確かにその通りだと思う。


だが、やはり子供を持ったとしても「自分の人生」も大切にするべきだと思う。


毎日両親のケンカを子供に見られるぐらいなら、早く離婚してお互いに楽しく過ごすべきだ。


離婚した人が全員不幸で、結婚している人が全員幸福なんてことは無いだろう。


僕の周りだけでも離婚しても人生を楽しんでいる人もたくさん知っているし、結婚を続けているが不幸な人もたくさん知っているつもりだ。


だから考え方は人それぞれで正解など無いのだが、離婚などせずに仮面夫婦としてでも結婚生活を続けた方が良い場合もあるのかもしれない。


だが、僕はこうなってしまった。


遅すぎたのだ。


もう分かっているつもりだ。


離婚の原因は「僕がすべて悪い」



以上です。

読んでいただきありがとうございました。

夫婦の数だけストーリーが有りますよね。

さぁ、思い切り人生を楽しんじゃいましょう。

だって一回限りですからね。

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離婚の原因は「僕がすべて悪い」 あかりんりん @akarin9080

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