幽霊になった少女たちが奏でる夢想(トロイメライ)

事故で亡くなってしまい、その後幽霊になった少女はなぜかピアノが弾けなくなります。

そして頼りなげな知識の中で考えついた「ピアノの幽霊」を捜す旅をする。

読んでいると、キラキラした曲が好きなピアノの名人かなちゃんも、過酷な家庭環境だった主人公のゆかちゃんも、ピアノを失う以前から「生きていく術」がはっきり見えていなかったのではないかと思わされます。

物語は終結に向けてやや強引とも思える展開を見せますが、そこに夢想のエネルギーの強靭さを感じます。まさに「子供の(子供たちだけが見ることができる)情景」。

「まるで正装して誰かを待っていたみたいにそこにあった。」
この一文にゾクゾクっとしました。

世の中には幽霊になれる人がいる、夢想を叶えられる人がいる──素敵な物語です。