ヴィオノは再び司書席に座った状態で目を覚ました。先ほどの血しぶきは跡形もなく消え去っていた。魔王が降臨した際に同時に発動された生の呪い。最早、この世界の住人は魔王を倒さぬ限り死ぬことは許されない。彼女の頬に生暖かい涙が伝う。何故泣いているのか。あの日から何に囚われていたのだろう。魔王の配下に下ったとされるあのドラゴンを殺すこと?それとも、リブロンを見殺しにしたやつらに復讐すること?そのどちらも果たさずこの図書館に閉じこもって本を読んでいたのはなぜ?彼女はそういった考えをぐるぐると頭の中で掻きまわすとやがて、彼女の一番の愛読書【スカビュウズ】を手に取り、席を立った。そして、大きく跳躍し、その本を8階にある本棚に自らの手で収めると、この王宮図書館【マロニエ・コマン】の扉を開き、外へ飛び出していった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界へ たかみ真ヒロ @takamimahiro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

同じコレクションの次の小説