第13話:最終話
何度もインターホンが鳴るのを無視し続ける。だんだんと100万の借金が怖くなったのもあり、布団にくるまった。静かになったので布団が出ようとした。
「やっぱりいた。やぁ勇也君」
「先輩どうやって……」
「鍵空いてたよ?」
違う。これは先輩じゃないんだ。マルコなんだ。気をつけなくては気を引き締める。
「マルコだよね?」
「なんでわかったのよ? そんなに私の中が気持ちよかった?」
「ガバガバだったじゃないか。やり過ぎている証拠だろ」
「ふふふ、そうね。でもあなたのモノも平均より下なんじゃない?」
そう言いながら俺の股間を触れてくる。
「やめろっ。やめてくれっ。なんでこんなことするんだ」
「なんでかって? あなたが課金しないからでしょ?」
「課金がどう関係するんだよ」
「私たちゲームの中の世界では課金してくれて初めて先に進めるのよ。お付き合いまでいかずにずっと出番なしのR18のヒロインなんか枯れていく一方よ。だからこうして、実力行使に出ているのよ。あなたにとっても悪くない話でしょ? 美味しい思いもできるのだから。二次元じゃなくてリアルに体感できるのだから」
「……ならナナミは……」
「あの子はどうやらあなたに惚れちゃったみたいね。だからもうゲームの中から出て来れないんじゃない? 私たちの世界ではいかに相手を惚れさせるかがポイントであって、お客様ファーストなのよ。自分の考えなんかも持つのなんか禁止事項よ」
「そんなのあんまりじゃないか。いくらゲームの世界とはいえ感情くらいあってもいいだろう」
「そんなきれいごとはいいのよ。この前のあれは100万の課金だから。言うの忘れていたと思って。もし、無理ならあなたのその濃そうな液でもいいけどね?」
「誰がお前なんかにやるか」
「でも、あなたの体液はいい感じよ。匂い、濃さ、粘り気完璧だったもの。淫魔にとっては最高の食事だもの」
俺の股間に顔をうずめだす。パソコン画面がまたピーピーピーうるさくなり始める。今度はなんだろう。
「規約違反でした。申し訳ありません。回収致します。課金の件もなかったことに致します」
淫魔のマルコは砂のように粉々に消えていった。パソコンを見るとマルコの姿があった。ゲームの世界に帰らされたようだ。ナナミはどこだと思ってみると悲しそうな目で俺に手を振っている。何か言っているか聞き取れない。
「さ・よ・う・な・ら・あ・り・が・と・う」
読唇術で分かってしまう。嫌だ。ナナミと離れたくない。俺は画面に向かって叫ぶ。
「おいおい、俺に課金させたいんだろう。今から課金するからナナミをこちらに送れ」
「申し訳ございません。無理です」
「なんでだよ。迷惑被ったんだからこれくらいいいだろう。金は払うと言っている」
「………それはこちらの弱みに付け込み、あわよくば踏み倒せるとお思いでは?」
なんだろう。この画面の奴、言葉に棘があるな。文字だけで俺を苛立たせるとかある意味天才だな。文才なのか? いや、シナリオライター?
「違うわ。なら今からコンビニでチケット買ってくるわ。ママゾンでいいのか?」
「わかりました。なら10万円のところ今回の詫びを入れた5万円で手を打ちましょう」
なんだろうな。この上から目線。まぁいい。ナナミが戻って一緒にまた遊園地とか行きたい。普通に遊ぶだけでいいのだ。あの笑顔が見たい。
「わかった。待っておけ」
俺はあるいて1分のコンビニへと向かい、5万円分購入した。俺の一か月の生活費が消えたが、今はそんなことどうでもいいのだ。
急いで課金しようとしたら、タイトルが出てきた。
「R18、あなたが課金してくれたら何でもします~一途な恋にあなたは何を望む?」
待ってくれよ。なんだよ。このチープなタイトル。でも今はスルー一択だ。俺はそのタイトルを選んでクリックした。その瞬間エピローグの画面が始まる。
これって……俺とナナミの出会い。画面を通してみるナナミは現実より幼く見えるが最高である。他者視点で見られるのはこれでこれで楽しい。
遊園地デートからお化け屋敷のキス。そして、ライバル登場。ここまでが順で流れていた。画面が消えた。
まさか騙されたのかもしれない。俺は不安になり、ナナミの名前を呼ぶ。
「ナナミ、ナナミ、ナナミ、ナナミ―!!」
「うっさいわね。聞こえてるわよ」
言葉とは裏腹に真っ赤な顔をしたナナミが出てきたのであった。
無課金で遊んでいたら謎のメッセージにより、俺は人生初の課金することとなってしまった SORA @tira154321
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