第12話:ナナミが消えた

 あのあと、先輩は用事を思い出したとかで帰っていた。俺は久しぶりにやったせいかい眠かったのでホテルでそのまま眠ることにした。


 朝起きて、シャワーを浴びて家に帰る。ナナミがいるかと思ったがいなかった。なんだよ。先輩とのこと報告しようと思っていたのに。なぜだかわからないがイライラしている自分がいた。


 こういう気分のときはパソコンゲームに限る。いつものようにパソコンを起動する。バトルロワイアルの100人中1位を目指す殺し合いのゲームをすることにした。


 みんなは課金してフル装備なのだが、1人スターで買える鞄だけもった普通の恰好で1位を目指す。いつもなら簡単にバンバン撃って余裕で1位になれるのに今日はなぜか3位が最高記録だった。


 クソっ。なんだよ。今日は最悪な日だな。先輩とやったというのに俺は何にイラついているんだ。そうか。ナナミがいないからか? いやいや。ナナミとの時間はあまりにも少なかっただろう。思わず俺は布団の匂いを嗅ぎに行く。うん、ナナミの匂いがするな。なぜだか安心した。


 この変態行為を見せれば出てくると思ったのだが、全く出てくる気配もない。これじゃあ本物の変態になってしまいそうだ。


 ナナミの甘い匂いが愛おしくて俺は布団の中に潜る。どこいったんだよ。俺にはまだ彼女出来ていないんだから消えてはダメだろう。


 ピーピーピーピー


 パソコンから音が鳴り始める。画面はまさかのブルースクリーンだった。やられた。完全に乗っ取られた。俺は電源を落とそうとしても無理だったので、強制的にコンセントを引き抜いた。


 音は止まったが、今度は赤くスクリーンに切り替わる。


「あなたは、課金制ゲームをしましたが、お金を払っていません。1週間以内に○○○○銀行に100万円振り込みをお願いします」


カシャ


「これによりあなたの顔は認証されました」


 画面には俺の顔が写しだされていた。怖い。いつの間に俺課金したんだよ。してねぇよ。


 すると、下の方にいきなりチャット画面が開いた。ナナミの顔のアイコンだった。


「勇也、あの先輩がR18の課金対象だったみたいよ。やったんでしょ? あれだけ言ったのに」


 俺は慌ててキーボードに打ち込む。


「どういう意味だよ。先輩は先輩だよ」


「バカ勇也。あなたの知っている先輩はアメリカに留学しているのよ。だからここにいるはずないの」


「じゃああの先輩は……」


「あれはR18ゲーム。攻略対象の一人。しかも淫魔のマルコちゃんよ。だから、先輩に化けることだって簡単よ」


「えっ……どうしよう。俺課金したつもりは……」


「わかっているわよ。何の話もなかったんでしょ。今こっちの世界で調べているからそのお金は払わなくていいわよ。あともう先輩に近づいちゃだめよ」


「わかった」


 まだまだ聞きたいことがあったがチャットは終了した。


ピンポーン


 家のインターホンが鳴る。モニターを見ると先輩だった。ヤバイ。俺は居留守を使うことにしたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る