第3話:対病魔作戦
翌朝部屋から出ると下の階からコーヒーのような匂いがしてくる。
もうニーナが起きて朝食の準備をしているのだろう。
昨晩家に帰った後、俺とニーナはイヴァンにこっぴどく叱られた。
というか、泣きつかれた。
無理もない。
小さな村の中とはいえ子供だけで深夜まで外出していたのだ。
俺とニーナは何度も謝り倒し、やっとの思いで布団に入ることができたのだ。
しかし、冴えてしまった頭の電源を落とすのには時間がかかった。
布団の中で改めて自身の置かれた環境を考えてしまったのだ。
元いた世界とは全く違うこの世界でも多くの似た部分がある。
それは太陽のような惑星があり、朝と夜が別れていることだ。
少し違う点は月のような衛星が二つ存在することだ。
また、時間も1日は24時間ではなく26時間ほどある。
1日が2時間多いのは仕事をしていた頃の俺にとっても都合が良かっただろうに。
こっちの世界ではその2時間もあまりメリットにはならない。
それに当たり前だが言語も全く異なる。
彼らが使っている言葉は初日につけられたネックレスで理解できるようになってはいるが、読み書きは全くできない。
どうやら村人の中でも字が書ける者は少なく、学習しようにも手立てがないのだそうだ。
そして今日から対病魔作戦が決行される。
村長の号令のもと、村人達とマッコミ貝を集めて石鹸を作るのだ。
気を引き締めて取りかからないと。
両手で頬をパシッと叩き階段を降りると、テーブルの上にはすでに朝食が置かれていた。
「おはようございます。ニーナ、イヴァンさん」
「おう、坊主。おはよう」
「マヒロ!おはよう」
明らかにイヴァンの俺に対する風当たりが強くなっている。
くわばらくわばら…。
「お前、昨日のこ」
やばい…。
またその話が始まるのか。
絶対長いことぐちぐちと言われる…。
「そ、そういえばイヴァンさんの飲んでる飲み物ってなんて言うんですか?」
会話を被せて小言を回避する。
朝からネチネチ言われるのはごめんだ。
「ん?あぁ、これか。カフワだよ。
子供が飲むと夜寝れないぞ」
なんだそれ、コーヒーじゃん。
「そ、そうなんですか。故郷で似たような飲み物を飲んだことがあって…」
「マヒロも飲む…?」
「じゃぁ、ちょっとだけ…」
トテトテと台所に向かったニーナが手に湯気が出た陶器を持ってきて渡してくれる。
液体は琥珀色より少し濃い色をしている。
すっと鼻を近づけるととってもコーヒーの良い香りがする。
そこでふと頭をよぎる。
この水は昨日飲んだ汚染水と同じく庭の井戸からくんだ水のはずだ。
それなのに全く腐った匂いはしない。
熱したことによって水に繁殖している菌が死滅したのだろうか。
試しにカップの端を口に当て空気と一緒に飲み込む。
あぁ、コーヒーだわ…これ。
普通に美味しい。
異世界に来て2日しか経ってないのにもう昔馴染みのもので感動している。
俗に言うホームシックだ。
「これ美味しいよ!ニーナ!」
「え、あっと…」
急に大きな声を出したのに驚いたのかニーナがオドオドしている。
「こら、俺の愛娘をビビらせるな…」
「ごめんなさい」
適当に頭を下げる。
「で、でも苦くない…?」
「苦いよ。でもその苦みが癖になるんだ。
それに苦味の奥に酸味と甘味があるし」
あぁ、懐かしい。
ブラジルにブルーマウンテン、マンデリン。
この世界にもコーヒーのように風土によって風味の違うカフワがあるんだろうか。
「マヒロって大人の人みたい…」
ニーナから何故か羨望の眼差しを受ける。
コーヒーが飲めたから大人って…まぁ、元大人なんだけど。
ふと、ニーナが背伸びしてカフワを飲んで苦いと涙目になっているところを想像して笑ってしまった。
「明日からマヒロもカフワ飲む?」
「そうだな…。朝はカフワがいいかな」
「わかった!」
「まったく、ガキのくせに生意気だ…」
「生意気でごめんなさいー」
適当にぺこっと頭を下げるとイヴァンの力ないチョップが頭に刺さり、ニーナがそれを見て笑う。
この家族の心地よさが改めて心に染みるな。
「さぁ、朝飯だ!冷める前に食べて、今日から貝殻集めがんばるぞ」
「はい!」
「うん!」
机に用意された湯気立つ豆のようなものを煮たシチューは、昨日より体に染みて、より美味しかった。
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昨日の村長の号令で村人の若い衆が24名集まった。
この人数が今このプロジェクトにアサインできる精一杯なのだろう。
村人にも生活を維持するための日課がある。
急に現れた子供の意見を快く引き受けてくれたのだ、それだけで感謝だ。
「みんなよく集まってくれた!まずは礼を言う」
イヴァンが前に出てチームの指揮を取る。
知識のある俺が指示した方がいいのだろうが、子供があれこれ言うよりイヴァンのようなリーダー気質の男が指揮をとるほうがことが早く進む。
同僚の倉木と似てるのに性格はまるで正反対だ。
チーム分けや役割などはすでに事細かにイヴァンに伝えてある。
まず、このプロジェクトを進めるにあたってメンバーを4グループに分ける。
チームA 貝殻を集める
チームB 貝殻集めをサポート
チームC 油の調達
チームD 炎の魔法で化学反応を起こす
この4つのグループに分ける。
石鹸の基本的な作り方は高校生の時、化学の実験時間に学んだものとスタートアップ企業の再生エネルギー知識がある。
イヴァンの指示でチームわけが進む。
村人の特性を知っているからかイヴァンは効率よくチームを組んでいく。
A,Bチームには力のある男性達14名
C,Dチームには村の女性達が中心に10名
ニーナも女性の多いDチームに参加してくれている。
「それじゃぁ、A,Bチームは俺と川に入る!
Aチームは腰に紐を巻いて、Bチームは陸上からしっかり支える。
午前午後で交代してやってくから、気を引き締めろ!」
『おう!!』
さすが昨日の号令で集まってくれただけはある。
みな病魔を倒すために一致団結している。
さて、女性陣の多いC,Dチームの指揮はイヴァンに代わって俺が取ることになっている。
女性達の組織で指示を出すのは慣れていないがやれる限りのことをしよう。
「えーと、皆さん!本日からC,Dチームの指示をさせていただきます。マヒロです!
よろしくお願いします。」
紹介文句を言い切り頭を下げる。
顔を上げると女性チームの皆様はにこやかな顔をしていた。
「子供が頑張ってる…可愛いわね」の顔だ。
釈然としないが、まぁ嫌われるよりマシだ。
ポケットから紙を出し、C,Dチームの本日のタスクを確認しようとすると女性達の中でもとりわけ幼い女の子から声が上がった。
「あれがニーナの彼氏ぃ…?!」
「ちょちょちょちょっと!ラムー?!
違うから!」
声の主はニーナの隣にいる、そばかすが特徴的なラムーと呼ばれた女の子だ。
年はニーナと同じくらいで髪は少し赤茶色をしており田舎娘、赤毛のアンみたいなイメージだ。
ニーナとは少しイメージが違い、その顔からは活発さが滲み出ている。
「なに?あんまり冴えない男じゃない」
酷い言われようだ。子供に…。
これでも前世はバリバリのイケメンビジネスマン。
その整ったルックスとスタイル、金融に各業界の知識や雑学の引き出しの多さ、尊敬こそされど冴えないなんて評価は初めてだ。
女性からのアプローチが絶えない對馬さんだぞ。
「マヒロはカッコいいよ! 髪はふっさふさのもふもふだし、黒色の綺麗な目だし、それにとっても頼りになるし、大人だし!」
ニーナからあんなに大きな声が出るとは思わなかった。
相当ラムーと仲が良いんだろう。
ていうか、照れるからやめて…。
「ダンの方が男らしいけど」
「マヒロは王子様みたいだもん!」
「王子様って、ニーナまだ絵本の虫なの?」
「うっ、うるさい…」
「あらあら、微笑ましいわね」
「ニーナちゃんったら顔が真っ赤よ」
「うふふ…」
同じチームの女性陣のから微笑ましいわねムードが漏れてくる。
こんな感じでこのチームの指揮を取れるのだろうか。
というか、緊張感なさすぎないか。
早速不安になってきた…。
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改めてC,Dチームの面々を見渡す。
男性は俺ともう一人、お爺さんのみだ。
後は主婦と少女たちで構成されており、雰囲気は和やかだ。
「ではまずCチームの皆様には油を用意してもらいます!」
「油…」
「油ねぇ…」
「うーん…」
女性陣の顔がかげる。
なんだ、この世界には油さえないのか。
動物や植物が存在しているからあって当たり前だと思い込んでいたのに…。
「えーっと、油っていうのは…」
「いやいや、わかるわよ」
「わかるのだけど…」
「んー」
やはり女性達の表情がパッとしない。
「な、なにか問題ありましたか…?」
「問題というか、油は普段街に買いに行ってるのよ。でも、先週の買い出しで盗賊に馬車ごと盗まれてしまって…」
「と、盗賊ですか…しかも、馬車がないのか…」
ドラ◯エの職業でしか聞いたことないぞ…。
かなりハードモードだな…。
「そうなの。歩いて行くこともできるけど、片道4日くらいはかかるし、何より最近は盗賊が出るから少人数は危険だわ…」
となると、往復で10日は見込む必要がある。
油は石鹸を作る上で最終工程で必要なのもだ。
幸い急務ではない。
ただ、盗賊が出る道のりを女性陣達のみで買い出しに行かせるわけにはいかない…。
「わかりました!油の件はイヴァンさんと相談しますね。今日は皆さんで土窯を作る事にしましょう!」
土窯は貝殻を高温で焼く工程に必要だ。
炎の魔法でどれくらい高温な炎ができるのかわからないので、土窯で風を通す機構を作り上げる事で火力を補填する。
ある程度土窯の形を木の棒を使い地面に描いて行く。
設計はとても簡単で大きさは大きい方が良い。
少しめんどくさい作業だが、これなくしては石鹸は完成しないのだ。
「みなさん!まずこのような形で土窯を作成します」
地面に描いた土窯の設計図をもとに作り方を説明していく。
「その次に泥を集めて枠の方から固めていくこれを繰り返して強度を保ちま」
「えー、めんどくさい」
「え、えっと…」
またしてもラムーという少女に調子を崩される。
彼女は相変わらず腕を組み顔を背けている。
「だってめんどくさいものはめんどくさいもん」
「でも、病魔を倒すのに必要なものを作らなきゃいけないんだ」
「それはわかってるわ」
「な、なら協力してくれると助かるんだけど…」
俺は子供の扱いに慣れていない。
なので子供が拗ねている時に下手に出るしかないのだ…。
「協力はするわよ!しないなんて言ってない!」
ラムーの顔が赤く膨れる。
下手に出たのが悪手だったのか。
子供って難しい…。
「ラムー、落ち着いて。マヒロ、泥を集めなくても土窯はできるよ?」
ニーナが怒るラムーの肩に手を置きひょこっと後ろから現れる。
なんだその小動物みたいな動作。
「どうゆうこと?」
「見てもらった方が早いよね?ラムー準備できてる?」
「えぇ、任せて」
そういうとラムーは地面に描いた設計図に手をつき、ニーナが暖炉に火をつけた時のように何かを詠唱し始めた。
「万物の根源たる自然よ、その広大なる大地の力を付与せよ…」
俺の描いた土窯の周りが青白く光った瞬間、地面がうねりをあげ、隆起しはじめる。
「フロンド!」
次の瞬間地面の土が膨れ上がると同時に円状に凝固し、設計図と瓜二つの土窯ができた。
「うそだろ…」
魔法を使えればなんでもできるのかよ。
俺にも使えないかな…。
「どう?こんな感じ?」
ラムーは相変わらずそっぽを向いたまま俺に確認をとる。
「す、凄い…。想定通りの形だ…」
ラムーの使った魔法に驚愕する。
わずか20秒程度で目の前には2メートルの大型土窯が出現した。
「そ、そう? それならこれで良いわね」
「ラムーはの土魔法はやっぱり凄いね!」
「普通よ、普通」
今のは土魔法なのか。
前に見たニーナの魔法は炎魔法。
それに精霊が扱うという風魔法。
他にもいろいろ種類があるんだろうか。
「他にも何か作るの? 泥集めするより楽でしょ」
「えっと…とりあえず以上かな」
「そう…」
少しギクシャクした返答がラムーから返っててくる。
彼女の態度からきめつけて、疑ってかかった自分が悪い。
最初からラムーは手伝ってくれるつもりだったのだ。
だから、ここにも来てくれた。
謝らないと…。
「それよりさっきはごめん」
「な、なにが?」
「めんどくさいって言われたから、勝手にやる気がないのかと思って…」
「いいわよ、私の言い方に問題があるってよく言われるし」
「それでもごめん」
あー、恥ずかしい。
25歳にもなってこんな子供に謝るなんて。
いや、謝る必要がある状況を作ってしまった自分が恥ずかしい。
もっと人のことよく見なければいけないな。
「いいの。でも、みんな大切な人のこと思って集まってるから」
ラムーの言葉に胸を掴まれた。
当たり前のことを見落としていた。
ニーナもラムーも村の人達も皆んな大事な人を想って集まってくれているのだ。
土窯ができた後は雨も考慮して撥水性に強みのある魔物?の皮でできたシートを被せ、薪を集める作業に移った。
今すぐに薪が必要なわけではないが、土窯が完成した今、C,Dチームができることはこれくらいだ。
イヴァン率いる貝殻集めのチームが袋に沢山の貝をいれて帰ってきた頃にはもう日は傾き初めていた。
「よーし、今日はこれまでだな」
「そうですね。あ、貝殻は乾燥させる必要があるので天日干しにしましょう」
「わかった」
イヴァンたちが集めてきた貝殻は軽く10キロを超えていて、子供の身体の俺にはとても重く感じた。
初日でこれほど集めたのだから上々だ。
「おーい、お前ら最後にこれを地べたに並べて天日干しする!それが終われば今日の作業は終わりだ。よろしく頼むぞー!」
『おー!!』
天日干しの作業は全員で行ったのですぐ完了した。
作業が終わる頃には日が落ちていて、そのまま広場での立食パーティーが始まった。
村の女性たちが食料を運んできてくれたのだ。
感染症を止めるには良くないことだろうが、俺にはこの雰囲気をぶち壊してまで家で食事を取るべきと言うことは出来なかった。
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端っこの方で猪のような魔物から取れるとされるもも肉の燻製を食べているとイヴァンがカップを片手にこちらに歩いてきた。
「とりあえず1日目お疲れさん」
そういうとぐいっと俺の方にカップを近づける。
「これは…?」
「これか?果実酒だ」
おいおい、こちとら未成年だぞ。
なに普通にお酒を勧めてるんだ。
飲みたいけど。
「えっとお酒って飲んで大丈夫なんですか?」
「ひょっとして下戸か?」
「そんなことないですけど…」
「じゃぁ、ほれ」
「ありがとうございます」
こちらの世界では八歳児でも酒を薦めるのか。
流石に体に悪すぎないだろうかと思いつつ、アルコールの魅力には抗えないので口に液体を運ぶ。
「おいし…」
アルコールが適度に果実の甘酸っぱさを調和している。
ストロ◯グゼロのような化学的なアルコール感がない。
「だろ!使われてるビドウはこの村の特産品だ」
「ビドウ…」
葡萄じゃん…。
「それより、マヒロ。お前記憶が曖昧ってのは嘘だろ」
「え…」
そういえばこの村に来た時そういう設定にしてたんだ。
村に置いてもらうために。
すっかり忘れていた。
「流石にわかる。ガキのくせに物知りだし、こんな田舎村よりずっと都会から来たんだろ」
「えーっと、まぁ…」
「帰りたくないのか?」
帰ってやらなければならないことがある。
でもまだこの村にいたい。
姉を救うことと今の生活を天秤にかけて俺は今の生活を取ろうとしている。
あれほど前世では姉に固執していたのに。
「いづれは帰りたいです、けど…」
「なんだ?」
「今はイヴァンさんやニーナとソフィーさん、村の人達と一緒にいたいです」
「そうか…ならいろいろ聞くのはやめる」
「はい…」
「そのかわり帰りたくなったらすぐに言え
その時は俺が手伝ってやる」
「はい…」
なんでだろう。
心の奥がじんとする。
「何泣いてるんだよ」
イヴァンが笑顔で俺の頭にチョップする。
そのチョップの優しさが身に染みる。
本当の父親とはこんな感じなのだろうか。
「泣き上戸なだけです」
「そうかい」
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翌朝もいつも通りにリビングに降りると朝食の準備ができていた。
机に並べられた朝食とカフワのにおいが鼻腔をくすめる。
ただ、いつもと違うのはイヴァンもニーナもリビングにいないということだ。
朝食を置いたままいなくなるなんてことはないだろうし、部屋に戻ってるんだろうか。
少し部屋の中を見渡すとリビングの奥の部屋の扉が少し空いていた。
確かニーナの母、エレーナさんの部屋だったはずだ。
嫌な予感がして早足に扉に近づく。
しかし、それは余計な心配だったようだ。
部屋の中にはエレーナさんに朝食を食べさせるニーナがいて、二人は楽しそうに会話を弾ませていた。
二人の会話に興味があり、悪いことだと知りながらも聞き耳を立ててみる。
「そうなの!マヒロってば凄い物知りなの」
「そう、とっても賢い子なのね」
「うん!それに病魔にも詳しいの」
「あら、それならお母さんもまたニーナと遊べるようになるかしら」
「大丈夫だよ、お母さんは心配しないで」
「うん、ありがとう。それにニーナがお嫁さんになるまではお母さん死ねないよ」
「お、お嫁さんはまだ先だけど…」
「あら、ニーナったら。可愛いお顔がりんごみたいに真っ赤よ」
「あ、赤くないよ?」
「誰か好きな人でもいるの?まぁ、お母さんはお見通しだけどね」
「お、お母さん!」
「あーあー、うちの娘はもう立派なレディねー」
「むぅ…」
これ以上この親子の会話を聞いてはいけないような気がしてその場をそっと離れる。
やはり、ニーナはお母さんっ子だ。
エレーナさんとは普段イヴァンといる時より自然体で話している気がする。
リビングに戻るとちょうどイヴァンが帰って来ていた。
肩からいくらかの薪を縛った紐を吊るしている。
薪の調達にでも出ていたのだろう。
「おかえりなさい」
「ただいま、これ2階の物置に運んでくれるか?」
そういうとイヴァンは薪の束をこちら投げる。
「うわっと…」
重いものを投げるなよ…。
ってあれ…。
全然重くない。
普通に4.5kgはありそうなのに八歳児の身体でも簡単に持てる。
「お前意外と力持ちだな」
「あ、いや。それほどでも」
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朝食を終えると油調達の件をイヴァンに話した。
結果年とはA,Bチームの男性陣から4名を買い出し班に割り振ることになった。
貝殻集めはこのペースで行くと順調だろうし、特に問題はない。
今日のC,Dチームの仕事は濾過装置の作成だ。
昨日のラムーの魔法を使用すればこちらも簡単に出来るはずだ。
予定とのズレは少しあったが、このまま順調に進めば病魔を防ぐ計画は上手くいきそうだ。
異郷人の旅路〜〜エリート人間の進み方〜〜 鍛治 透 @toru_kaji
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