Anecdote:03「盗夢法」

 わたしはその夢をどう盗むのか、確立した方法を学んでいった。

 盗夢法には陰陽縛、五印術、八大行、九星運がある。


 陰陽縛とは、陰陽説と呪術を掛け合わせて作られた。陰陽とは、分離することはできず互いに補い合う関係にあり、根本の性質はそれぞれ異なっている。陰陽の人体へのは働き、心理的性質をもって相手を捕縛。つまり、身動きできなくする基本中の基本の技。陰の気をつかう陰呪縛と、陽の気をつかう陽呪縛で相手を縛るのだ。


 八大行とは、陰陽を自然現象にあてはめて、呪術をもって捕縛する陰陽縛の発展させた術。天と地、雷と風、水と火、山と沢はそれぞれ互いをおぎないながらも異なるもの。これらをもって自然の力を借り具象化することができる術。おもに相手の動きを縛ることにもちいられ、天上結界、局地結界、雷撃結界、風圧結界、水流結界、爆炎結界、山巓結界、沼沢結界がある。


 五印術は、五行説と呪術を組み合わせて編み出された秘術。五行は、水、火、金、木、土の印象によって象徴され、自然の力がともに動的な宇宙を創っていることを表している。陰から陽へ、そしてまた陽から陰へと循環する気の、自然の流れを相生関係といい、つながれたものに互いを滋養するが、中間に結ばれた関係は拘束し、束縛することで均衡を保とうとすることを相克関係と呼び、相互に破壊をもたらすことになる。

 五行は五季、五臓、五神など、感情や時季、体の組織や心情など根源にかかわり、呪術をもちいて間接的に相手を操作できる、夢を盗ることが容易になる。


 水印。下に流れて潤す「潤下」をもって操る術。五色は黒、季節は冬、五臓は腎臓と膀胱、五感は聴覚、五体では骨、不安や恐れの感情を操ることができる。腎ではじまり腎で終わる、これを腎精といい人生の本来の意味。

 火印。熱によって上昇する「炎上」をもって操る術。五色は赤、季節は夏、五臓は心と小腸、五感は味覚と顔色、五体は血管、喜びと興奮の感情を操る。

 金印。外からの力で形を変える「従革」をもって操る術。五色は白、季節は秋、五臓は肺と大腸、五感は嗅覚と体毛、五体は皮膚と皮毛、悲しみの感情を操る。

 木印。ぐんぐん生長する「曲直」をもって操る術。五色は青、季節は春、五臓は肝臓と胆嚢、五感は視覚と爪。五体は神経と腱、靱帯、怒りと欲求不満の感情を操る。

 土印。万物は生じ生長させ実らす「稼穡」をもって操る術。五色は黄、季節は土用、五臓は脾臓と胃、五感は食感と唇、五体は筋肉、物思いと思考活動の感情を操る。


 九星運は、星の動きによって夢を産み、また摘みとることもできる奥義。

 だけどアネクドートはわたしには無理だと言った。奥義を自在に操るためには強い意志が必要であり、まともに使いこなせるのは夢使いだけだからだ。


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