Old hag attack:02「ニューファンドランド島」

 カナダの州のひとつ、ニューファンドランド&ラブラドル州に属し、カナダ東岸沖の北大西洋上にある大きな島である。


 およそ四万三千平方マイルある面積を持つこの島には、五十万人をやや上回る数の住人が住んでいる。州都は東端の港町、セント・ジョンズ。島唯一の大都市であり、人口はおよそ十万人。そのほかの人々は海岸線に散在する小さな村落に住んでいる。亜寒帯に属し冬は雪と流氷に閉ざされるが、海洋性気候でカナダの他地域と比べると比較的温暖である。


 ニューファンドランド島の島民は「ニューファンドランド・イングリッシュ」「ニューファンドランド・フレンチ」を話すが、かつては「ニューファンドランド・アイリッシュ」や先住民ベオスック族「ベオスック語」が話されていた。


 十一世紀初め、グリーンランドから南下した北欧のバイキングの船団が島の北西端のランズ・オー・メドゥーズに到達して植民地を建設、ヴィンランド(葡萄の国)と名付けた。その約五百年後の一四九七年、英国王の援助で大西洋を西に航海したジョン・カボットがこれを発見し、ニューファンドランドと命名。英国初の海外植民地となった。


 世界屈指の漁場、グランドバンクのすぐ側で、十八世紀にはフランスが進出し水産資源をめぐる英国との植民地戦争の舞台となるが、一七六三年のパリ条約で英国の支配権が確定。フランスはかろうじて南端の小島のサンピエール島、ミクロン島を確保し、現在もこの二つの島はフランスの海外領土である。


 その後、ニューファンドランドは英連邦内の自治領となり、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アイルランド自由国と対等な地位を得たが、アイルランドが英連邦を離脱した年と同じ一九四九年、ニューファンドランドはカナダに併合された。 そんな歴史から、カナダの中でもちょっと異質な風土、ほとんどの英語圏ではすでに失われている伝統的文化が、隔離状態による保存効果によってニューファンドランドでは残されている。


 超自然的な光現象、鬼火や狐火、幽霊船に関する信仰や記述が、幽霊や死の前兆やその他の現象と同様に一般的に認められており、かつてよりあまり聞かれなくなったとはいえ妖精に関する俗信や話さえ、セント・ジョンズや中心部から外れた港でも聞くことができる。こうした伝説現存の分布や変わりゆく姿は超自然的な俗信が無知な過去の遺物であり、科学的思考が隆起になるにつれ、衰退していくものである。


 ニューファンドランドは隔離状態ではなかったものの、北米その他の地域と比べてより多くの俗信を持っており、より広くそれらが流布しているようだ。だがこの州でも開発が進み信念はだんだんと一般的ではなくなってきており、もっとも開発の進んだ地域でもっとも急速に失われてきている。同様なことは何世紀にもわたって世界中で幾度となく繰り返され、文化と体験のあいだでの現代的理解の重要な部分でもあるだろう。

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