六時限後のさようなら





この後、第七医師団の皆に

自分達は、本当は人間じゃなかったことを教えた


最初は皆戸惑ったけど、

それはすぐに晴れていっていた


最近の自分達は働き過ぎていると

シュヴァルツさんは言い、

今日はもう休みの日にすることになった


このことで、俺は感じた


「俺たちは、最後の一人になるまで

絶対に折れることはない」……と


隊長が残してくれたものは……

本当に、スゴい物だった……!!!



あれから一日が経つ


この夜は、誰も暗殺されないように

一人一人交代で起き、見回りをした


何事もなく、無事に起きれてよかった……




「グリーン!!」


パァァ……


「ありがとう!!

タンクトップの男の人!!」


俺はあれから立ち直り、

第七医師団の一人の医者として

また患者の怪我を治していた


「アーフィン!!

こっちはもう終わったよ!!」


カレンの声が聞こえる


あれから俺は、カレンさんのことを

呼び捨てで呼ぶようになった


「カレン、こっちも終わったぞ!!」


シャッシャッシャッ


バサッ


布のめくれる音がする


シュヴァルツさんが、医務室のテントの中に

入ってきた


「アーフィンさん、カレンさん

終わりましたか?」


「おう!!」


俺は勢いよく返事をする


「ええ!!」


それに負けじと、カレンも勢いよく返事をした


「それなら、少しこちらへ来てくださいませんか?」


「「……?」」




「う〜む……ここはあれだ!!

天翔ける至高の龍スーパードラゴン

なんてどうだ!!!」


「カートさん、

何ですかそのネーミングセンス……」


シュヴァルツがツッコミを入れる


「ハッハッハッ!!

我々ドーヴェル一族は、

何故だか皆ネーミングセンスがないんだ!!」


「シュヴァルツさん、

カートさんは何の名前を決めていた所だったんだ?」


俺は訳がわからず、

シュヴァルツさんに質問をした


「……これからは、前の第七騎士群のように

全員で行動するようにする。

それで何ですけどね……」


「なんだぁ?」


「先生が死んでしまったことが

騎士団長の耳まで届いてね。

こんな手紙が届いたんです。」


シュヴァルツはポケットから手紙を取り出して

俺に渡してきた


「どれどれ……?」




第七医師団様へ ドーヴェル騎士団から


私です。

騎士団長、ハンネバル・ドーヴェルです。

お元気でしょうか?


アーフィン・ザックの活躍は、

ここまですぐに届きました。


流石は第七騎士群の期待の新人

すぐにやってくれた!!


私も聞いた時、興奮しました


アーフィンとの約束もあり、

すぐにその活躍を手記にとどめました。


さて……このままでは、千行は足りないので

本題に移らせてもらいます


私の実の息子、ジオル・ドーヴェルが

亡くなったのを聞きました


さぞ辛かったでしょう

私も聞いた時、なぜ親なのに側にいられなかったのか

後悔が胸によぎりました


しかし、あなた方第七騎士群は

この手紙が届いている頃には立ち直ってることでしょう


そこで何ですが……隊長亡き今、

第七騎士群の正式な大隊長が居なくなりました


息子に「自分が死んだら

シュヴァルツを大隊長にしてください」

と手紙が届いたのですが……


私自身、これ以上第七騎士群に

損失を出したくありません


そして本題ですが、私たちドーヴェル騎士団と

業務提携する……

いわゆる"独立"をしてみてはいかがですか?


今回の敵は、一つの大隊が立ち向かえるほど

楽な相手ではなかったようです


あの息子さえ……敵と相見える前に

この世から亡き者にされてしまった……


この反省を踏まえ、我らがドーヴェル騎士団は

そちら第七騎士群を、一つの組織として

全力でサポートをする体勢を作りました


その為、第七医師団のすることを

誰にも邪魔されない為に、

自分達が一つの勢力として活動できるよう

独立することを推奨します


名前はお任せします


でも、良い名前を付けてくださいね


ドーヴェル騎士団長


ハンネバル・ドーヴェルより




「独立!? 俺たちが……!?」


「えぇ!? アーフィン、ワタシにも……

…………えぇーーー!!!」


「他の皆にも、もう見せてある。


これから小生達は、一つの組織として

ジェネシスと明確に敵対することになります。


今までは「ドーヴェル騎士団の"中の"

第七騎士群がジェネシスと敵対している」

という状況でしたが……

これからは、「ドーヴェル騎士団と

もう一つの組織がジェネシスと敵対する」

という状況になります。


つまり……これから、

"ジェネシス対ドーヴェル騎士団と小生達が

生き残りをかけての大戦争が起こる"

……ということです!!!」


オオオ……


「はいはーい!! ワタシ思ったんですけど、

独立したら、騎士団から基本的に

どんなサポートを受けられるんでしょーか!!」


カレンが手を挙げながら言った


「それは、既に来ています。

オーナーさん!!」


「はいよ!! オーラーイ!!オーラーイ!!」


ガタンゴトン……


「おぉ!? ……その袋全部がそうなのか!!?」


俺は、その凄まじい荷車の大きさに驚き、

その後、大きな布の袋にまた驚き

恐らくまたその中身に驚くだろう


多分、この袋は横に10メートルはある

それほどデカかった


「この中には、色んな物が入っています。

お金や剣、生活必需品に……

こんな物まで!!!」


バッ!!


シュヴァルツさんが、

さっきまで右手に何かを隠していた物を

天高く持ち上げた


「それって……まさかぁぁぁ!?」


アイリスさんが、目が飛び出るほど驚いた


「そう……!! 騎士団長直筆の

"魔法の本"です!!」


オオオオオオオ!!!


「スゴい……!! ていうことは、

団長が使える魔法、全部記されてるってこと!?」


アイリスが、声高に言った


「恐らくは!!」


「わたし達は……まだまだ強くなれる……!!!」




「よし、皆納得しましたよね。

なら次に、独立する為に名前を決めましょう!!」


「う〜ん……何にすればいいか……」


「……わたし、考えてある。

もし自分達が独立する時の為に……」


「アイリスさん、どうぞ」


「……「ジオル騎士団」……

先生の為の、先生の為に作られた

最高の騎士団……!!」


オー……


「どう……? そのままかな……?」


「小生、それで良いと思います!!」


「おう!! 俺も、その名前の方が

意志を継いでるって感じで良いと思うぜ!!」


「ワタシも!!

隊長のこと……絶対に忘れたくないから!!」


ザワザワザワ


「おい……!!アイリスさんが

すごい名前を思いついたぞ!!!」


「ジオル隊長の意志を継いだ騎士団……

う〜ん、一人称よりいい響きだ……!!」


「皆さん、決まりで……良いですね?」


異議なーーし!!


「それではこの"独立宣言届け"に

「ジオル騎士団」と書きます!!

朝早くに集まってくださり、ありがとうございました


「かたいぞー!!シュヴァルツさーん!!

えー、「朝早くに集まっていただき、

誠にありがとうございます」」


アーフィンがシュヴァルツに似せた声で言った


ハハハハハ!!


「そんなにかたく言ってないのですが……

まぁ、いいですよ。

好きに小生の声でやってください」


シュンッッッッッ!!


「みっんなー!!」


!!!??


シュヴァルツさんの隣に、

突如として小さな子供が出てきた


「……イーリックさんですか。」


「あれ? おかしいな

突然良い雰囲気が僕のせいで壊れたみたいな……」


「……当然よ、初代ビーストさん。

アタシだって、あなたを初めて見た時

鳥肌がたったもん。」


ナガサキが言った


「そうか。まだ第七医師団には

僕自己紹介してなかったか。

どうも〜、一番初めにジェネシスに作られた

初代ビーストでーす!!」


!?


「あれれ、今度はこの場所だけ氷河期になってない?

ここ砂漠なのに……なんで?」


「もう……黙って」


アイリスさんが少しイラつきながら言った


「……僕、またまた情報を仕入れてきたよ。

まぁ……僕なんて、どうせ必要ないし……

一人でも、生きていけるよね……」


「……コホン。」


「……?」


「小生達はもう、第七医師団じゃなく

ジオル騎士団と名乗るようになりました。


だから、何ですが……

イーリックも、小生達の仲間になってくれませんか?」


!!??


「シュヴァルツくん……!?

良いの?そんなことして……」


ナガサキが疑い深く言う


「……確かに、イーリックは少し信用出来ません。

ですが……第七医師団のスパイの情報は的確でした。

これ以上、役に立つことはありますか?」


「まぁ、シュヴァルツさんが言うなら……

アタシも初代ビーストのこと、信用しても良いよ。」


「!!?? い、良いの……?

僕なんかが入っても……?」


「"人を許すほど、自分は許される"

……これも先生の言葉です。


器の大きさは、あの人の最大の特徴でした。

先生の意志を継ぐなら……

きっと小生達も、和解できます……!!」


「けど、ここには

ビーストの被害にあった人も居るって、確か……」


「俺のことか?」


「……アーフィン、さんでしたっけ……」


「俺は……ビーストに話せるやつがいるなんて

知らなかった。


ビーストは皆感情がなくて……

人を、思いのまま殺していく

冷酷なやつらだと思ってるが……

シュヴァルツさんがそう言うのなら、

アンタのこと、ビーストとは思わないでおく。

さっきの言葉は水に流しておくぜ。」


「じゃあ……!!」


「……ジオル騎士団へ、ようこそ!!」


シュヴァルツさんが、

初代ビーストに手を差し出した


ビーストは、その手に応えるよう

丁寧に手を握った!!


それは、ビーストと騎士団の初めての和解


歴史が動いたと言っても過言ではない瞬間だった……




………………………………




「……ジオルが死んだ?」


「ラースさん、どうやらそのようです」


カイゼンぐらいの大柄な男が言った


「そうか……ぼくの末裔、死んじゃったのか……

………………いや、生きてるね。」


「……というと?」


「ぼくの目は特別でね。

1000年後の未来まで自由に見れるように

魔法をかけたんだ。


本来ならこの後、どうなるかもわかるはずなんだけど

やっぱり見えないや。」


「……どう言う風に見えているのですか?」


「そうだね……いつもなら意識すれば

周りの時が止まって、

自分だけ未来のことが分かるんだけど……


一年後の未来を意識すると、

ずっと"変わり続けてる"んだ。


その中の変わり続けてる未来の中で、

ジオルが出て来ない未来がないんだよ。」


「オオ……それはすごいですね。」


「この先どうなるか……ぼくでも分からない。

だけどきっと、ジオル騎士団は

ぼくの想像を超えるような……

物凄い"英雄団"になるだろうね!!」


「騎士王のお墨付きですか……いやはや、

ジオル騎士団……何と末恐ろしい……」






「アズキ。」


「……カイゼンか。」


「やってきたお〜」


「そうですか……ご苦労様でした。」


「いや〜、先生さぁ

最後までオラァのこと睨まなかったよぉ!!

あの感じはぁ、そうだなぁ……

「最後まで希望を絶やさなかった」

って、言うのかなぁ……?」


「……それだけか。」


「それでよぉ……"良い話"があるんだぁ。

おらぁは今回の功績で上層部と会うんだがぁ

もしかしたら……ものすげぇ人物と会えるぞぉ……?」


「……興味ない。

おれは、ただキメラを研究するだけだ。」


「待て待て、おめぇにとって悪い話でもねぇぞぉ?」


「……?」





6年前 謎の場所


「アズキ!!」


「は、はい!!、"先生"……!!」


「アズキに限らず、

全ての生徒達よ!!!聞けぇぇぇ!!」


!!!!


「オレ達は、今まで幾つもの死線を乗り越えてきた!!

今回も、きっとオレ達は生き残る!!

"魔法の親"はとんでなかった……!!

オレの想像を遥かに上回る、強大な敵だった……!!


だが……それでもオレは生き残る!!

最後の最後まで、戦い抜くぞォォォ!!!」


オオオオオオオ!!



…………………………




「ジオル・ドーヴェル……

まだジオル騎士団は、

彼のことについて、全く理解出来ていない……

遂には死んでしまったな。」


キラキラッ


「……また星の停止が始まった。

落ちていく、落ちていく、落ちていく……」


ドゴォォォォォ…………………………


「……爆発してしまった。

あと残る星々は、1000もない


しかし、この魔法は人類にとって必要なものだ……


輪廻の輪の外側に存在する者達……

ローブ族と、ホムンクルス達よ…………

早く……ここまでたどり着いて来い………………

我は、待っているぞ……!!!」


一人の謎の人物は

何かを悟ったように言った


まだまだこの物語は、始まったばかりだ……






ドノー・ファンには縛られない

ジオル騎士団独立日記


――完――

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ドノー・ファンには縛られない ジオル騎士団独立日記 あか @redaka

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