六時限目 先生がくれたもの





「なんだ……これ………………」


俺は目が覚めて、

早速隊長の居るテントの前まで来た


しかし……そこには、無惨にも死んだ隊長の姿が

そこにはあった


「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」




この後、俺の叫び声で飛び起きた

第七医師団の医者達が、

必死に隊長を蘇生させようとしたが

魔法は全く効かなかった


俺達は絶望した


俺達の他に居た、本物の医者が駆けつけてきた


その医者からは……「死亡」とかえってきた


この一件は、刑事事件として判定されたが

今は東軍と西軍が戦っている最中なので

全く進展はなく、そこには昨日あったはずの

活気は……なくなっていた。




あれから数日が経った


恐らく三日は経っただろう


俺はテントの中でうずくまっていた


俺もいつかああなるのだろう


後悔が脳を過ぎる


思えば俺は、何がしたかったのだろう


ビーストと戦うと思い立ってから1ヶ月


俺自身は、全く進歩していない


英雄になったのもたまたまだ


他のやつらだって、きっと出来ただろう



「もう…………死にたい………………」


ガバァッッッ!!


テントが開く音がした


俺はベッドの中で、変わらずうずくまっていた


「……アーフィンさん。」


「……シュヴァ……………………ルツ…………」


「そんな掠れた声じゃ、先生が悲しみますよ……」


「…………」




「何しに……来やがった……?」


「……心配だからに決まっている!!」


「……少し……声の迫力がちげぇな………………

なりすましじゃあ…………ねぇよな…………」


「小生も、あれから色々あったんです。

小生は……"覚悟"を決めたんです……!!」


「…………そうか。」


「それはそうと……カイゼンさん……

いや、同行していたカイゼンの行方が

わからなくなっているのは知っていますか?」


「………………そいつがやったのか…………?」


「……恐らくは、ですが……」


「………………」




俺はその言葉を聞き、

昔から使っていた愛剣の元へ向かう


シャッシャッ


シャキィン


納刀された愛剣の輝きを見る


「……殺す………………」


シャッシャッ


「……やめた方が良いですよ。」


シュヴァルツが、行手を遮ってきた


「……てんめぇ…………

自分が何やったのか…………わかってんのか?」


「……わかっているつもりです。」


「あぁ……?………………わかってねぇだろォォォ!!

てめぇ、隊長ほっぽり出して

どこほっつき歩いてやがった……!!


てめぇほどの洞察眼がありゃ

動きのおかしいやつがいれば、

そいつがスパイだと断定出来たはずだろうが!!!


もちろん俺にだって非がある

目の前のことばっか気にしてたせいで、

足元をすくわれちまった……


だが、なぁ…………!!

てめぇが第七医師団と別行動すると聞いたときゃ

反吐が出たわァァァ!!!!」


「……第七騎士群の時期大隊長にあるまじき失態だった

………………本当に、すまない…………」




シャッシャッシャッシャッ


「アーフィン!!もうやめて!!」


「……あぁ? ………………カレン、か……」


シャッシャッ


ふわっ


「……!?」


カレンが近づき、抱きついてきた


「もういい……もういいの!!

私たちの中で誰かが犠牲になっても、

次に進まなきゃいけないの……!!」


「んなこと……わかってんだよ…………

………だけど……自分が不甲斐ないばかりで…………


思えば俺は、英雄になりたかった訳じゃねぇ…………

"近くの人の"英雄に…………なりたかっただけだ……」


「……アーフィン君、わたしも……そう思うよ。」


「アイリス……さん……?」


「わたしだって、同じ第七騎士群の仲間だった……

……言ってもいいかな……」


「……いいと思うぞ。」


「……わたし達は人間じゃなくて、

ホムンクルスだった……

そしてそれを多分、先生はわかってたんだと思う。


先生は「この世の闇を知りすぎていた」……て、

わたしと二人で話してた時に言ってた。

それってつまり……わたし達がホムンクルスだって

知ってたんじゃないかな……?


それで先生は、世界征服という夢を捨てて

わたし達ホムンクルスに、一番に寄り添ってくれていた


少し調べてみたんだけど……

先生が編成した"精鋭部隊"は、

皆ホムンクルスだったんだよ。


そんなわたし達ホムンクルスに、

ずっと一緒に居てくれた……


戦術とか、兵法とか、自分の知っている

戦いの知識。その全てを教えてくれていた……


死んでしまった後にわかった……

わたし達に、"生きる理由"を……作ってくれていたこと


……もちろん、全て推測だけど、

わたしは、そんな先生のことを……

自分がホムンクルスだってことを知った時、

「利用されていた」って……思っちゃったんだ……」


「……アイリス、さん……」


「もし、ここに先生の霊がいたら……

ごめんなさいって……言いたい

約束を守れなくて……ごめんなさいって……言いたいよ」


「隊長は……隊長がシュヴァルツを

時期大隊長に任命した時に……

隊長は……自分が死ぬことを

予期していたんだろうな………………


くそ……ちくしょう、俺は……

俺たちは……先生の為に、何が出来たんだ……?」




「ねぇ……ちょっと外に出てみない?」


「カレン……?」


そういえば、俺は三日以上も外に出ていなかったな


他の第七医師団の皆は……何をしているんだろうか


シャッシャッ


俺は、乱れた服装のまま

テントの外へと歩いていった……




バサッ


「……!!??」


俺はテントの布を上げ

外の世界の様子を見た瞬間、驚いた


第七医師団の全員が、

変わらない様子で患者の治療をしていた!!



「先生が死んだ最初の日は、

そりゃ皆憂鬱としてたんだよ。

ワタシも、もう第七医師団なんかやめて

どこかに逃げちゃおうとか思ってたんだ。


だけどね……皆勇気づけられてたんだよ。

ある一人の英雄に……!!!」


「……それって……?」


「アーフィンに決まってるじゃない!!

あなたが頑張って前線を前に押し返した時、

確かな希望を抱いたんだ……!!」


ダッダッダッ


患者の傷を治していた第七医師団の皆が

俺を見ると、いっせいに近づいてきた!!


「そうだぜ!!俺たちガヤ組も、

アーフィン達と付き合いはあんまないけど、

それでも、同じ同僚としてリスペクトしてんだ!!」


「一人称がアーフィンと被っている……

あぁ、俺たちは知っている。


だけど、それでも良いと思った。


一人称が例え被っていても……!!

俺たちは俺たちで、ちゃんと個性があって、

出番があって、死なない……

それだけで、良いじゃないか……!!


一人称オタクの俺も……

第七騎士群の一員になってそう気づいたんだ……!!

だから、これからは

そうやって割り切って生きていけるよ……!!」


「……俺と一人称が被ってたやつと……

一人称で人の優劣をつけていた一人称オタク……!!」




「私も忘れてしまっては困る……!!

叔父として、ジオル君のことは

絶対に忘れることは、ない……!!!」


「アタシは、ただのオーナー……

だけどね、アタシだって……

ジオルのこと、大切に思ってたのは同じよ!!」


「カートさん……!! オーナー……!!」



「どう? 皆スゴいでしょ!?隊長が死んでも、

皆は隊長の意志を継ごうと頑張ってるんだ……!!


今度は、ワタシ達の番だ……

皆を導いていくのは、ワタシ達なんだ!!」


「カレンさんの言う通りですよ……!!

わたしだって、火の魔法が使える……!!

先生から教わったこの力で、

世界を、もっと良い物に出来るって……

わたしは、信じるから……!!」


「えぇ、小生も……!!

この先生から認められた剣術、

そして時期大隊長として……!!」


「……俺は……隊長がイメージした……

最強の自分として……」




「「「「先生の意志を、継いでいく……!!!」」」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る