ジオル・ドーヴェル 死亡





「さて……皆、覚悟は出来たかな?」


「イーリック……でしたか。

情報提供、感謝します」


「シュヴァルツさん……こんなやつに

感謝しない方が良いよ。」


アイリスが口をとんがらせて言う


「手紙、準備出来ました……!!」


ナガサキが、石の地面に手紙を置いて

座りながら万年筆を手に取っていて

準備は万端のようだ


「第七騎士群のスパイ……それは……」




「ふわ〜あ……」


私は目が覚めた


良い朝だ


こんな朝は、アイリスがビーストを

初めて倒した時以来か……


「すみませーん」


若い男の声だ


テントの向こうで、何かあったのだろうか……


「はい」


シャッシャッシャッ


地面の砂を蹴り分けて、

私は声のする方へ行った




「手紙です」


「はい、ありがとうございます。」


シャッシャッ


「あの人……あんなに慌ててどうしたんだ?

手紙を渡した瞬間、あんなに慌てて……

……シュヴァルツから!?」


私は慌てて手紙の中身を見ようとした


「おーーーーい!!」


シャッシャッシャッシャッ


「ん……カイゼンか。

こんな朝早くに起きるなんて、

お前らしくもない。」


「へっへっへっ、…………

今日は気分が良いから、早く起きたべさ。」


「少し待て。今シュヴァルツから

手紙が届いたんだ。

先に読ませてくれないか?」


「……分かっただべ!!」


「すまないな……」




"今すぐ逃げろ"


何故か赤い文字で、それは書かれていた




「……何だ? 今すぐ……逃げろ?」


グシャッ!!




「ヴ……!?」


気づけば、腹に太い短剣が貫いていた


背中の傷が痛むどころじゃない


痛い


痛い


痛い、痛い、痛い、痛い、痛い


ズザッ!!


私はその場に倒れ伏した


誰だ……!?


東軍の残党か……!?


しかし、私の目に写っていたのは

その想像を超えるものだった


「……か、カイゼン………………

な…………何が起こった…………!?」


ニタァ


「……わからねぇべか?」


ズボォ


「ゴホッ……」


短剣が何者かによって引き抜かれた


目線をなんとか上げると、

カイゼンの右手には、なぜだろうか

さっきまで私の腹を貫通していた短剣が

握られてるではないか


「……カイ………………ゼン………………?」


「さよならだべ……"先生"」


意識が薄くなってきた


声が黒魔術師より掠れてきた


あぁ


私は死ぬのか


英雄にもなれないまま


何者にもなれないまま


死んでいく


私は、人の為に何が出来たのだろう


魔法の本に、人を進化させる為〜

と豪語したのにも関わらず、

結局は他人任せだった


俺の人生に、意味はあったのか……


いいや


アイリスやシュヴァルツ、カレンやアーフィン


オーナーや親父、叔父さん


ヴァーズさん、黒魔術師にあの凄い老兵


思えば、人に恵まれた人生だった


色んな良い人に囲まれた


人関係で悩んだことは、ただの一度もなかった


過去の思い出も含めて、

私は……"幸せ"だったんだな……




ありがとう


私は、今まで人を疑わずにいられた


そのせいで死んでしまったが……

今になってはどうでもいい


悔いが残らないと言えば嘘になる


これから先、誰が第七医師団を引っ張っていくのか……


いや、それは立派になった彼らがやってくれるだろう


私がいなくなっても、あの冷静なシュヴァルツが

華麗な剣捌きで、人類の進化を推し進めてくれる




あぁ……意識が遠のいていく


私は死ぬのか


やっと実感してきたよ


……なんだか眠くなってきたな


お迎えか


親父より先に死ぬのは嫌だったが……

まぁ、仕方ないだろう……


「騎士さんよ!!」


……ん?


「隊長ぉ!!」


「先生、小生があなたの意志を継ぎます」


「先生……あの日の約束はどうするんですか……」


これは……走馬灯か


第七騎士群の皆の声が聞こえる


あぁ……安心する……


25年間……生き急いだ人生だったな………………

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