過去…そして現在へ





「……そうかぁ。俺も、覚悟を決めなきゃなぁ……」


「覚悟……?」


「あぁ……"親父"。俺"達"のこれからする偉業……

英雄物語を、後世に伝えてくれねぇか?

そうすれば、俺はアンタを恨まねぇよ。」


「!!! ハッハッハッ……

あぁ。君に限らず、皆の偉業を

これからも、本につづるとしよう……!!」


「これからも……て、まさか!?」


「あぁ……君達全員を一度に見れてなくて残念だが、

毎日君達の行動を本に記してある。

フッフッフ……」


「尾行してんのかよぉ!??」


「ハッハッハッ……良いじゃないか。

皆、誇るべき私の子供だよ。」


「まぁなんだ、ほどほどにな……」




ゴロゴロゴロ……


「雷雲……!? この砂漠に……!?」


私は、誰にも負けないような、

最強のアーフィンをイメージし、

目を開けると、早速雷雲が立ち込んでいた


アーフィンの体は黄色の粒の光でよく見えなく、

周りの敵兵士の手が止まった


「……親父。俺の"英雄譚"が……始まるぞ。」


バァッ!!


俺は、高くなった視線に違和感を感じながら

腕で光の粒を払い除ける


「……あれは……私の、イメージ通りだ……!!!」


そこには、太く、全身に筋肉がつき

海外のアスリートのような高い身長で

ガタイの良い……アーフィン・ザックが

そこには立っていた……!!




バチバチッバチバチッ


「……出来る!!雷が俺を呼んでいるッッ!!」


俺は右手を上げ、

雷を操るようにイメージする


「……」


俺は目を閉じる


一瞬の猶予


世界にある雷雲が、ここ目指して

いっぺんに集まってきているのを感じる……!!


「……はやく!!その男を斬れぇぇぇ!!!」


向こうの指令官が慌てて言う


「出来ません!!!

この光の粒がじゃまをして

思うように動けません……!!!」


「……もう、遅い!!!」


ビリビリビリビリ……


雲の中で、雷が飛んでいる


時は来た


「くらえ……ワールドクラッシャー世界の嘆き


うわぁぁぁぁぁ!!!


ドゴォォォォォォォォン!!!




「おぉ……まるであれは、わっしの指輪じゃ……」



その雷撃は、美しかった


本来起こるはずもない雷雲の下


人の営みが交差する砂漠地帯


その一つの世界に、ない物が降った


青く、青く、青く……


ラピスラズリのような、深い青だった


今まで体に恵まれ、何かに感謝したことはなかった


しかし、わっしはここで初めて神に感謝する


「夢を与えてくれて、ありがとう」


それは老人にとってもあり得ないこと


しかしこの青年は、それだけのことをやってのけた


わっしは拝んだ


天使にも似た、ある青年のことを……





「ヴァーズさん……!!」


「おぉ、帰ってきたか!!」


「……フン。……………………やるな。」


私たちは帰ってきた


ヴァーズさん達の居るカステラまで


「おーい、わっし達のことも忘れちゃ困る!!」


「はいはい、バッカーノさん

アンタも凄かったじゃねぇか!!」


アーフィンはいつも通りの姿に戻っていた


「アーフィン殿、あなた様には敵いませぬ。」


「なーにをー」


「へっへっへ」


「へっへっへ」


共に笑い合う


俺たちは帰り道、少しの間話してみて

気が合い、すっかり仲良くなっていた




「第一名誉騎士様に……あの青年が?」


「あぁ……今回の英雄は、あの二人だ!!」


「!!? 俺が……英雄!??」


「私からも言おう。君は英雄だ。

ずっと押され続けていた西軍が、

ある医者の青年に希望を抱かせられた。


活路は見出した。

これからは、私たち西軍が

総力を上げて前線を押し返す!!

皆……よくやってくれた!!!」


オオオオオオオ!!!




ア〜ア〜アアア〜


どこかで歌声が聞こえる


前線が一度崩壊したことを知ってか

一度東軍は前線を下げ、

仕切り直しの動向をしていると知り

ヴァーズ指揮官がこの間に士気を上げようと

宴を開いている!!




イッキ!!イッキ!!


「よーし……」


私は、今まで色々あったのも相まってか

老兵と一緒に酒を飲んでいる


今はイッキ飲みを煽られている所だ


ゴクッゴクッゴクッ


「おぉ〜、やはり最近の若者は飲めるのう!!

わっしも昔はあれぐらい飲めたというのに……」


「……ぷはぁ!!三杯目、飲み切った!!」


オオオオオオオ!!!


「ふぉっふぉっふぉっ

四杯目、いくかのう?」


「いや、この辺でやめておこう。

まだ酔い潰れる気はしない。」


「おかたいのう……まぁ良いか。

この辺でイッキ飲み大会はやめておこう。」


「いやーもう聞いてくださいよ!!」


「なんじゃ?」


「ここに来るまで、いろいろなプランを立てて

行ったんですよ!!

でも、初っ端から意味不明なことがあって

もう……私の努力は何だったのか……」


「ふぉっふぉっふぉっ

人生、予想外なことばかり起こるもんじゃし

そんなにきにせんでもええではないか。」


「……失礼、酒が回りすぎているようだ……」


「寝るかの?」


「……アーフィンと話がしたかったが、

私よりも、もっと話がしたい人が居るだろう。


シュヴァルツからも手紙が来ているかもしれないし、

早めに寝るとするか……」


「それがええのう。

さて、わっしらも夜遅くまで起きるもんじゃない。

老人は、ここでー解散!!」


えー……




「うーむ……ここは、こう……」


「……ヴァーズさん

こんな夜遅くまで……お疲れ様。」


コトッ


黒魔術師が、コーヒーカップを机の上に置いた


もちろんその中にはコーヒーが入っていた


「黒魔術師……コーヒー、ありがたく頂こう。」


「……俺も、前線に行かなかった分

……ここでサポートしなくてはな……

そのコーヒーも、俺が作った物だ。」


「ほう、黒魔術師も変わったやつだが

そんなことにも気を回すんだな。」


「……一つ……良いか?」


「? 何だ?」


「この戦い、もし俺が生きて勝てば……

他のローブ族にも声をかけて、

第七医師団の力になれるよう、

別行動するつもりだ。」


「……フン。勝手にしろ。

その頃には、てめぇも用無しだ。」


「……!!」


「……もし、暗殺という手段を使わなくなったら

の話だ。まだまだ、夢のまた夢だ。」


「……もし、第七医師団の用も済んだら

丘の上にでもでかい家を建てて

平和な日常を送ってみようと思う。


その時になったらの話だが……

ヴァーズさんも現役を辞めたら、

シェアハウスとして使うようにするから……

一緒に珈琲店をやろう。」


「!!! ……ばーか。オレはてめぇの嫁かよ。」


「……」


「!? 黒魔術師、今笑って……?」


「……いいや。」


「ほら、今も笑った。」


プイッ


「んんだよ。てめぇ、そんなキャラだったか?」


「……フ、歯の食べ残しがあっただけだ。」


「……おめぇはその家建てたら、

オレじゃなく、嫁でも作れ。

男の幸せを、一度噛み締めとけ。」


「…………………………」




「はい!!アーン!!」


「あ、あ〜ん……」


カレンさんが、フォークに刺さったいちごを

俺の口に近づける


「……ダメだよそんなんじゃ!!

そんなんじゃモテないわよ!!」


「か、カレンさん……い、いや、もう遠慮しとく。

男の魅力を上げるとか、俺はごめんだね……」


「えぇ〜、ケチ」


「ケチではねぇだろ……」


「……それより、凄いね、アーフィン。

すっかり合衆国の英雄だ。」


「へへっ、お先に英雄になったぜ!!」


「はぁぁぁ……

私も、アーフィンやアイリスさんみたいに

誰かに慕われたりしたいなぁ。」


「いやいや、何言ってんだよ。

この街の英雄になったってことは、

この街ではもう野ぐそ出来ねぇんだぜ?」


「うわ」


「もう変なこと出来ねぇってことだ。

これからは、英雄的な立ち振る舞いを……」


「アーフィンはそのままで良いよ。」


「え……?」


「あ!! いや……何でもない!!」


「なんだよ〜そのままで良いよって

俺は俺のままで良いのか?」


「……良いと思う。」


「そ、そんなに隠さずに言われたら

変に照れるな……」


「……うん。」


「……俺たちさ、もしこの戦いが終わったら

一度だけ……付き合ってみないか?」


「!!!」


「あ……い、嫌なら別に良いんだけどよ

なんていうか〜そのー……」


「……良いよ。」


「!!??」


「なーんてね!!ワタシはワタシで、

アーフィンに肩を並べられるぐらいになったら

そうする!!

アンタに甘えるほど、ワタシは可愛い女じゃないよ!」


「へへっ!!そっちの方がカレンさんらしくて

良いや!!」


「ふふふ!」


「ははは!」




俺は英雄になった


いつか夢見た英雄に、俺はなった


だけど何でだろう


見知らぬ人に感謝されるより、カレンさんや同僚に

「すごいね!!」とか「いいね!!」とか

言われた方が、ずっと嬉しいんだ!!


まだ酒は飲めないけど、

戦の後のジュースが、人生で一番美味しかったのを、

10年後も覚えてるだろうな……











「そろそろ……頃合いか。」

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