4月

Column1 一字抜けています

 日本語関連の書籍をネットで探していたときの話です。ある一冊の本がヒットしたので、どういう内容か概要を読んでみたのですが、内容説明があまりにも簡素だったためいまいちよく分かりませんでした。

 こういうときに一つの意見として見るのが、読者のレビュー。これが決め手で買うことはそれほど多くはありませんが、客観的に書かれている内容ですと参考になる場合があるので、時折読むことがあります。

 今回はレビューが1件だけ書き込まれていました。どれどれ、と早速読んでみると、だいぶ手厳しい評価が書かれていました。

 思うところがったのか、その方は長々と感想を書いたのち、最後にこんな風に締めくくっていました。


 ――これ、楽しめる人がるんかな。


 ……んんん? 「がるんかな」?

 よく見てみると、どうやら一文字抜けているようです。

 そう思って、


 ――これ、楽しめる人がるんかな。


 と一文字補ってみたのですが、それもちょっとしっくりこない。格助詞の「が」ではなく、「は」を入れてみたらどうだろう。


 そう思って、


 ――これ、楽しめる人はいるんかな。


 と直してみると、求めていたものに近い感じがしますが、それでも落ち着かない。

 私の感覚ですが、


 ――これを楽しめる人はいるんだろうか。


 とすると、ぴったりくると思います。しかし、レビューを書いた人はちょっと書き捨てるような言い方をしたかったのでしょうから、これでは丁寧になってしまう。

 では、レビューを書いた人の気持ちとしてどう表現したらいいのかと考えたら、


 ――これ、誰が楽しめるんだろ。


 とかでしょうか。


 それとも、


 ――これ楽しめる人、いるんかな。


 もしくは、


 ――これを楽しめる人、いるんかな。


 などはいかがでしょうか。

 ……と、お遊びはこれくらいにいたしまして。


 この方、書籍が自分が望んでいた内容ではなかったため、ちょっと苛立ってしまい、気持ちに任せてレビューを書いてしまったのではないかと想像します。

 上記に挙げた一文以外にも「~ってあるんで、~ってことなら、~言わなければ、~のような気がする」と、長く書いてある箇所があったのですが、何を言いたいのか分かりにくいんです。これではレビューの読み手は多分最後まで読み切らないで終わってしまいそうな気がいたします。


 書いた方の心境はお察ししますが、マイナスの気持ち(ときには行き過ぎたプラスの気持ち)に任せて書いてしまうと、読んだ人を不快にさせたり、理解を難しくさせたりしますし、ときには真に受けた読者の方の手を取る機会を奪うことにもなりかねません。

 買ったことを後悔したのであれば、冷静にそれを分析しレビューに反映させるのことが、これから買うか迷っている人に対して一番親切なのではないでしょうか。それに最後に書き捨てた言葉に脱字があるなんて……ちょっとだけ格好悪いなと思ってしまいました(格好つけているわけじゃないとは思いますが)……。


 もちろん、いつ何時なんどきも完璧であるのは難しいことです。しかしこういったケースの場合は、いつも以上に気を付けなければならないなと、反面教師として学ばせてもらったという話でした。

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