3月
Episode1 「成果を果たす」?
――〇〇さんは、成果を果たしました。
一見問題がないように思える一文だが、意味を考えて読むと違和感がある。それは重言になっているせいだろう。
以前、『NIHONGO』で「違和感を感じる」の重言の話をした際に、これが問題ない使い方だと紹介した。理由は「意味が明確になる、強調される、新しい意味が加わる、そもそも意味の重なりではないなど、適当な理由があって『不適切な重言』ではないもの。(『明鏡国語辞典』第三版)」だから。
では、今回の「成果を果たす」はどうだろうか。同じように意味が明確になったり、新しい意味が加わったように思えるだろうか……。
まずは言葉を一つずつ見ていこう。
「成果」とは「あることを成し遂げて得たよい結果」である。
一方で「果たす」は「しなくてはならないことや、しようと思っていたことを成し遂げる」なので、両方とも「成し遂げる」とか「やりきる」という意味が被ってしまう。
そのため「成果を果たす」と言うと、「結果を成し遂げた」とか「出来上がったよい結果を成し遂げた」というような意味になり、何だかよく分からない言葉になってしまっている。
重言によって言葉の意味が明確になる場合もあるが、今回は逆に分かりづらくなってしまっているので、これは不適切な使い方であろう。「成果」を使って最初の例文を表現するのならば、
――〇〇さんは、成果を収めました。
とした方が、すっきりすると思う。
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