12月

◆質問箱◆ 「散歩をさっさと切り上げるのは『なおざり』ですか?」

「◆質問箱◆ 愛犬が、ご褒美欲しさにお利口さんなふりをするのは『おざなり』ですか?」に、肥前さんからさらにご質問があったので回答いたします。


Q、質問に答えて下さりありがとうございます!

じゃあ私が散歩をさっさと切り上げるのは「なおざり」かな…やっぱり「おざなり」かな……(笑)



A、えーと……つまり「前回の説明では分からなかった」……ということですよね(^^;) 私の説明が至らず、すみません。


 今回はとりあえず、肥前さんがどういうときに使いたいのかというのを具体的に考えながら、「おざなり」と「なおざり」の使い分けをしてみましょうか。上手くいくか分かりませんけど、良かったらお付き合い下さい。


 その前に、前回のことをもう一度復習します。

 「おざなり」は、「その場の間に合わせで中途半端に済ませるようす」、「なおざり」は「いい加減」「投げやり」「疎か」という意味でしたね。

 そして「一応『する』のが『おざなり』」、「『しない』場合もあるのが『なおざり』」と、『毎日ことば』を引用しながら説明したと思います。

 でも、それでも分かりにくかったんですよね……。そのため、『毎日ことば』の内容をさらに引用してみようと思います。

 『毎日ことば』では、「なおざり」と言えても「おざなり」が使えない場合があることについて下記のように説明しています。


(引用開始)

「尊い人間の生命を等閑にしたのは、どいつだ!」(葉山嘉樹「海に生くる人々」)

 (中略) 

「なおざり」の代わりに「おざなり」を当てはめることができない例です。

 なぜ「おざなり」を当てはめることができないか。「おざなり」は「誠意のない、その場限りの間に合わせであること。『―の環境対策』『―に報告して済ます』」(明鏡国語辞典3版)。要するに、本来ならきちんとしなければいけないことを、いいかげんに、やっつけ仕事として済ませることを言います。「御座形」という漢字表記からも分かるように、お座敷から用事を済ませようとするのは真面目な態度ではないということです。


 しかし、上の例のように「生命を~」などという場合、「生命をいいかげんに済ませる」というわけにもいきません。一方の「なおざり」は「物事を軽く見て、いいかげんにしておくこと。おろそか。等閑とうかん」(同)。こちらも「いいかげん」という意味を含みますが、「おざなり」のいいかげんさには怠惰さが感じられるのに対し、こちらは「軽視」という価値判断がにじみます。「生命を軽く見る」なら話も通じます。

(引用終了)


 ほぼ全部引用してしまって……なんだか怒られそうですけど……。

 以上のことを読むと、以前よりは「おざなり」と「なおざり」の違いを分かっていただけると思うのですが、難しいでしょうか? 

 私が説明するよりも分かり易いのではないかな、とは思うのですがどうでしょう。


 これを踏まえて、肥前さんがこの二つを使いたい場面に話を移します。

 どうやら愛犬と戯れているときのようです。

 先に正直なことを申し上げますが、その場面(状態)で「おざなり」「なおざり」を使う事自体無理があるのかなと、個人的には思います。

 理由は肥前さんは愛犬の散歩をしているので、「ほったらかし」にしているわけでも、「疎かに」しているわけでもありません。この時点で「なおざり」は使えません。前回も「子どものしつけ」の例文を用いて、「なおざり」と「おざなり」の意味の違いを比べましたよね。

 何かしら関わっているのであれば(それも比較的多い回数であれば)「なおざり」とはいえません。ただ、子どものしつけも「していない」状態に近かったら「なおざり」と言えるのかもしれませんが。


 それでは「おざなり」が使えるのかというと、それも難しい。何故なら、散歩には行っているからです。

 ポイントは「早く切り上げる」ことが、どういうことなのか、です。

 例えば道をショートカットしているのか、それとも早足で歩いて時間を短縮しているのか。もし前者であれば「愛犬のストレスをその場しのぎで解消する」、という意味で「おざなり」が当てはまりそうです。

 でも、そうですね……早足で歩いて時間を短縮しているというのも、犬からみたら「その場しのぎ」になる……のでしょうか? 犬を飼ったことがないので、私には分かりかねます……。


 それでも、「おざなり」を使いたいんだと仰るのであれば、「愛犬との散歩をおざなりにする」という風には言うことができると思います。もしくは「愛犬との散歩がおざなりになっている」とか。でも、こういう言い方はあまり耳にはしませんけれど……。


 いただいた質問の内容だけですと、これが精いっぱいの回答です(愛犬との関係性もよく分からないので何とも……)。

 「おざなり」「なおざり」は、どちらにも言い換えられることができる場合もあることから(全てには当てはまらないのですが)、使い方がややこしい言葉であると思います。

 あとは、使うのが難しければこの言葉に執着せず、別の言葉に置き換えるということも一つの手だと思います。

 確かにこの言葉でしか表せないものはありますが、苦手な言葉を無理に使おうとする必要はありません。それよりも相手に伝わるように、自分がよく分かっている言葉をうまく使って表現した方が、読み手にとっても読みやすい文章になると私は思います。


 回答は以上です。

 ご質問ありがとうございました。


<おまけ>

 実際に小説などで使われている、「おざなり」「なおざり」の使い方の例を挙げておきます。参考までに。


【おざなり】

・おざなりな返事

・おざなりな口調

・おざなりな答え

・おざなりに扱う


【なおざり】

・なおざりな返事

・なおざりに描く

・仕事をなおざりにする

・大事な問題をなおざりにする


*「おざなりな返事」「なおざりな返事」どちらもありますが、意味が違うことは、これまでの説明で分かっていただけるかと思います。

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