◆質問箱◆ 愛犬が、ご褒美欲しさにお利口さんなふりをするのは「おざなり」ですか?

 今回は11月のEpisode3に、肥前ロンズさんからご質問をいただきましたので、回答したいと思います。



Q、うちの犬、ご褒美が欲しくてその場でパパっとお利口さんな振りをするのですが、この場合「おざなり」で合ってるのかな……



A、肥前さんのワンちゃん、お利口さんなふりをするんですね(笑) 可愛らしいです。

 さて、今回のご質問は肥前さんのワンちゃんがその場限りの仕草をしていたのであれば、「おざなり」で合っています。Episode3でもご説明しましたが、「おざなり」は「おざなり(お座なり)」とは、「誠意のない、その場限りの間に合わせであること」という意味ですので、こちらに該当します。

 

 どうやら「おざなり」と「なおざり」の使い分けについて難しいと感じていらっしゃる人は、案外多くいるようで、神永暁さんの著書『悩ましい国語辞典』にもこの項目が載っていました。折角ですのでご紹介いたします。

 『悩ましい国語辞典』に掲載されていた例題は、下記の二つです。


①子どものしつけをおざなりにする。

②子どものしつけをなおざりにする。


 「おざなり」「なおざり」は、どちらも「いいかげん」という意味を含んでいます。この二つは確かに成り立つように見えますが、②の方が例文のようには使えないと説明があるのです。

 それは何故か。まず①の「おざなり」は「熱心ではなくても、何かしらのしつけはしている」ということを意味しています。では、②はどうか。こちらは「しつけ自体をしない。ほったらかしにする」という意味になるのだそうです。

 神永さん曰く、ちょっと乱暴かもしれないと言いつつも、「おざなり」=なげやり、「なおざり」=ほったらかし、という考え方を持つと良いと書いておりました。


 しかし、『NIHONGO』の読者の方は多分これだと納得しないと思うので、さらに別の方法で調べてみました。

 やはりここで役に立つのは毎日新聞校閲センターの『毎日ことば』ですね。こちらでも「おざなり」「なおざり」が取り上げられていました。

 読んでみて分かったのは、類語辞典を調べると、二つは同じ項目にははいっていないということ。ということで私も調べてみたのですが、確かに「おざなり」の類語を調べると「場当たり」「その場限り」が登場します。一方で、「なおざり」は「いい加減」「投げやり」「おろそか」という言葉と一緒の括りに入れられています。

 『毎日ことば』では、辞書編集者・松井栄一さんの『ちがいがわかる 類語使い分け辞典』(小学館)を引用して、このようにまとめていました。


 >「おざなり」については、「類似の語」として注記されています。「その場の間に合わせで中途半端に済ませるようす。『なおざり』と混同されやすいが、意味は異なる」といい、使い分けに迷うのはあくまで語形が似ているからだと言っているようです。


 >最後に改めて、毎日新聞用語集からこれら2語の使い分けの項目を引きます。

  (中略)

 一応「する」のが「おざなり」、「しない」場合もあるのが「なおざり」。「○○をおざなりにする」という形は、そもそも「○○をする」と言いにくい場合には使えない、と考えるのもよいかもしれません(「基本をする」とは言いにくい)。


 とのことです。


 (今回は引用ばかりでしたが、)回答は以上です。

 ご質問ありがとうございました。



<引用URL>

『毎日ことば』

~おろそかにしたくない、「おざなり」と「なおざり」の差~

https://mainichi-kotoba.jp/enq-325


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