Column1 「おられる」について

 最近は「おられる」も聞くようになったかと思いますが、調べてみると本来は誤用と言われています。


 理由は「おる」が元々謙譲語であるのに、尊敬語の「れる」を付けて「おられる」とし、尊敬語表現として使うのは不適切である、という考えがあるためです。「おられる」が使われるようになったのはいつごろなのか。はっきりとは分からないのですが、江戸時代の文献には載っていないようなので、明治以降に使われ出したと考えてよさそうです。


 一方で「おられる」という形は誤用ではあるものの、使う人の数が増えて来ています。よって辞書にも掲載し始めており、『明鏡国語辞典』と『三省堂国語辞典』では確認できました。

『三省堂国語辞典』は新しい言葉を取り上げる辞書として有名ですが、辞書に載っているのですから、辞書編集者のなかでは「誤用とは言えなくなっている」という考えを持った方がいらっしゃるということです。

 そのため、誰かが「おられる」という使い方を全力で否定したとしても、誤りとは言えません。いつも申していることですが、「言葉は生き物」です。そのため時代によって、正しい場合もあればそうでないこともあります。重要なのは、使う人が言葉の歴史を知っていること。

 誤用である歴史がありつつも、時代によって変化していることを知っていれば、これらの問題を大らかに受け止めることができるはずです。

 もちろん、「おられる」を絶対に使わないでいる方もいらっしゃいます(言葉の研究をしている方の多くは、もしかするとそういう傾向にあるかもしれません)。

 しかし、前述したように言葉は時代によって変化するもの。どちらが正しい、誤りと言えなくなってきているものについては、使い手がよく考えて使用するなり、使わないなり、選べばよいのではないかなと私は思います。

 ちなみに私は、このことを知るまで、頻繁に「おられる」を使っていたように思います。


> もちろん、「おられる」を絶対に使わないでいる方もおられます。


 みたいな感じですね。

「いらっしゃる」よりも、さりげない尊敬語表現に思えるので使いやすいんですよね。そしてきっと、今後も使っていくと思います。ただ、校閲者に見られた場合、ペケというか……指摘されることはある(実際に直すかを決めるのは作者ですが)と思います。

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