Episode3 「適当」って、どうテキトウ?

「適当」という言葉を辞書で引くと、以下のような説明が出てくる。


*****

【適当】『広辞苑 第六版』

①ある状態や目的などに、ほどよくあてはまること。「――した人物」「――な広さ」

②その場に合わせて要領よくやること。いい加減。「――にあしらう」


【適当】『新明解国語辞典 第八版』

①そのものの性質・状態が、今求められている条件・目的に合致すると思われる様子(こと)。「その場に――した形容詞や副詞を使って表現を豊かにする」

②本格的に対処するのではなく、一応つじつまが合うようにして当面の事態を収拾する様子。「君の判断で――にやっておいてくれ」

*****


 このように「適当」には、二つの意味が存在する。

 私が、「適当」という言葉を初めて聞いたときの使い方は②の方だったので、①の意味を知ったときは驚いた。また、当時調べた(子供用の)辞書には①の説明しか載っていなかったため、②の使い方は誤りであると認識し、それ以降は「適当」という言葉を使う時は「適切に対応する」という意味で使用するようになった。


 しかし周囲の人たちが使うのは②の方だ。

 そのためコミュニケーションで齟齬そごが生じてしまうときがある。もちろん前後の文脈と相手の言い方を分析して、どちらの意味で使っているのかを考えてはいるのだが、仕事の中で「それ適当にやっていて」と言われると結局分からず、「どっちの意味で使っていますか?」と聞いてしまうことが多い。

 ちなみに私は、文章を書く場合は「ほどよくあてはまること」を「適当」と表記し、「その場に合わせて要領よくやること」は「テキトウ」や「テキトー」とするようにしているが、他の人はどのように区別しているのだろうか。そもそも、区別をしているほうが珍しいのだろうか。


 そういえば、他にも「いい加減」「塩梅」という言葉も、「適当」と同じ感覚がある。上記に『広辞苑』の語釈を引用したが、その説明に「いい加減」が登場しているが、先に述べたようにこの言葉も「適当」と同じように二つの捉え方があるため、②の意味だけに登場させて良かったのかと勝手に疑問に感じている。

 ただ私が引いたのは第6版なので、最新版は違うかもしれないが……。

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