第25話 僕と整理整頓
イグドラシルに餌をあげた後、
彼女は結構サバサバした方だと思っているし、女の子女の子した部屋ではなさそうだが、それでもやはり少しくらいドキドキしてしまうもの。
「どうぞ」と言われておそるおそる入った彼は、イメージ通りに綺麗な部屋を見て思わず「おお……」と声を―――――――――。
「……おお?」
漏らしたものの、途中から疑問形に変わった。
ドアの開き始めに見えた部屋の右半分は良かったのだが、何故か左半分だけがものすごく散らかっていたのだ。
……いや、散らかっているよりも、集められていると言った方がいいかもしれない。とにかく、色んなものが混ざった山が出来ている。
「何があったの?」
「部屋の整理をしようと思てな。大晦日の大掃除に捨てるかもしれへんもんをまとめたんや」
「大晦日って5ヶ月くらい前だよ?!」
「捨てようとは思うんやけど、全部必要な気がしてまうんよ」
「あるあるだよね。さすがに多すぎると思うけど」
「だから、暁斗くんを呼んだんよ」
橙火が言うには、自分ではあれもこれも残してしまいたくなるため、他の人が勝手に片付けをしてくれる機会を待っていたんだとか。
ただ、
「
「こんな光景見たら、絶対バカにするやん」
「確かに否定は出来ないね」
「それに、捨てるとは言え男の子に服とかを触らせるのはちょっとな」
「いや、僕も男なんだけど」
「やっぱりそういうことするつもりなんや?」
「そ、そういう意味じゃ……」
戸惑う彼にニヤリと笑いながら「暁斗くんのその
それがどういう意味なのかは分からないが、とりあえず智也ほど異性と意識されていないということは理解出来た。
彼自身も自分が男らしいとは思っていないため、そりゃそうかと受け入れることにして、手始めに山の一番上にあったクマのぬいぐるみを取ってみる。
「橙火さんもこういうの持ってたんだ」
「そんな意外やろか」
「ちょっとだけね」
「その子は捨てるつもりやったけど、ゴミ袋に入れようとすると色々と
「すごくわかるよ。僕もずっとぬいぐるみを大切にしてたから」
「やんね! じゃ、これは置いとくわ」
そう言いながらクマのぬいぐるみを受け取り、ベッドの上へと移動させる彼女。
次に大きさの合わなくなったズボン、破れたTシャツ、古びたおもちゃと聞いていったが、直せば使えるだとか、リサイクルできるなんて言われてで全く減らない。
確かにこれでは一人で片付けても終わるはずがないのも頷ける。暁斗がやれやれと呆れていると、視界の端に映っていた窓の外を何かが通った。
「今のは……?」
「ドラちゃんかな?」
「ここ二階だよ、ありえないって」
イグドラシルじゃないと考えられる理由はそれだけではない。玄関は鍵がかかっていて、いくら賢くても犬では外に出られないはずなのだ。
そうなれば、残る線は不審者か鳥かくらいだろう。前者なら迷わず攻撃するしかないが、もしも動物だった場合は傷つけるわけにはいかない。
「と、とりあえず見てみよう……」
見たところ、ベランダには何もいない。暁斗は部屋に落ちていた朝顔なんかを育てる時に立てる黄色い棒を持つと、こっそりと窓を開けて出てみた。
「……暁斗くん、何かいる?」
「ううん、カラスか何かだったのかな。どこかに飛んでっちゃったみたい」
「それなら良かった」
「怖い人じゃなくて良かっ―――――――」
ホッとしながら部屋に入ろうとした瞬間だった。彼は背後から飛びかかってきたものに押し倒されてしまう。
その獣……いや、女の子は「サラミを寄越すにゃ……」と呟いていて、振り返らずとも声と匂いで正体を察せた。
「ね、ねね子?!」
「にゃぅぅ……サラミが足りにゃいにゃ……」
そこに居たのは、もはや猫としての本能に体を乗っ取られてしまったねね子だった。
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