第68話「なかなか起きないお姫様を起こすには?」


12月25日。昨日の夜から某赤い帽子おじさんのレースゲームを明け方まで遊んでいたせいか、俺含め、全員その場で寝落ちするように寝っ転がりながら寝ていた。


両隣にいる女の子二人は、色々と無防備すぎるような気もするが、さすがに起きたばっかの状態で、性欲が刺激されることはない。


ってことで、顔を洗い、台所に立って朝ごはんを作る。


朝ごはんとはいえ、時刻はもう十時半だ。


適当に用意したので、寝ている二人を起こしたいのだが・・・。



「起きろー!」



叫んでも起きる気配を見せません。


この子たち、どんんだけ熟睡してるんだよ。


今なら今なやりたい放題できる・・・じゃなくて、朝ごはんは作ってしまったので、起きてもらわないと困る。


ということで、どのご家庭にも一つはある、漫才の小道具ハリセンを召喚。


思いっきり叩きました。



「Fa male・・・」(和訳:痛い・・・)



ソフィアの方は起きました。だけど、マリアが起きない。



「いや、なんで起きないんだよ」



ハリセンでぶっ叩いても起きないとは・・・どうなってんだこいつ。


どうするかなぁと悩んでいると、眠そうな目をこすりながら、ソフィアが言う。



「The princess wakes up with the prince's kiss」(和訳:お姫様は王子様のキスで目覚めるよ)



ねぇソフィアさん? あなた確か、英語は喋れないんじゃないの?


なんでこういう時だけ、確実に意味が伝わる英語を話すんですか。



「残念だ。それはできない」


「・・・?」



そっか、マリアと違って、ソフィアは本気と書いてマジで日本語が通じない人なんだった。



「ウィーハブネバードンザーッツ」(We have never done that/俺たちはそれをしたことがない)


「What is it?」(和訳:それって?)


「き・・・キス」


「ふ~ん?」



うっわー、なんか弱み握られた気分だ。



「それじゃ、愛斗の唇はまだ誰のものでもないんだ」



さりげなく日本語を使うと、ソフィアは自身の唇に人差し指を当て、そのまま顔を近づけてくる。


お互いの息が肌に感じるレベルまで近づいたところで、何かを感じ取ったのごとく、マリアが飛び起きる。



「ワスツゥースドゥー!?」


「Questa era la migliore sveglia」(和訳:これが(あなたにとって)一番の目覚ましだったね)


「サイニヒトゥアイバーン!?」



何を言ってるのか分からん会話がしばらく続いたが、無事、三人で朝食を食べることができました。


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