第54話「ニュルンベルクの思い出2」


ホームステイ先の家族の娘さん、マリアと打ち解けて、一夜が経過した。


今日はマリアが珍しく外出しており、家にいなかったので、俺も散歩がてらその辺をふらつくことにした。


ちなみに、出かける前にマリアの両親に聞いたところ、マリアが外出することはたまにあることらしい。


さすがに、ずっと家の中じゃ切羽詰まるよな。



「シェナー・ブルネン・・・ここでいいのか?」



石畳の道を歩き、ちょっとした広場に着く。


狭い路地が多かったので、広場に出ると、謎の開放感があるというものだ。


とはいえ、狭い路地もそれはそれで良いものだ。


そんな感じで、気になる方向へとどんどん進んでいく。


やがて、トラムの走る大きな通りに出た。


その先は川沿いに緑が広がっている。


こういうのも悪くないよな。そう思い、近くでコーヒーを買って、寝っ転がりくつろぐ。


今日はいい天気だ。本でも持ってきてたら、読書に熱中しそうな感じで本当に気持ちがいい。


やがて、うとうとしてきて・・・。



「ん? ん~・・・はぁ~・・・」



寝てしまった。


んで、気づけば夕方になっていた。


夕方とはいえ、この時期の日没時間は20時から21時ぐらいだ。


日本の常識が叩き込まれてる俺の脳みそからすれば、ありえないくらいに遅い。


ゆえに、まだまだ日も高ければ、全然明るい。昼間に近い感じで不思議なものだ。


とはいえ、時刻は夕方。早く帰らなければ、ホームステイ先の家族に迷惑をかけてしまう。


そう思って起き上がった瞬間、川の向こう側を歩いている、マリアの姿を見つけた。


帰り道もイマイチ覚えていないので、一緒に帰ろうとマリアの姿を目で追っていると・・・。



「ん?」



目を疑うような光景だ。


早い話、いじめられていた。しかも、結構暴力とかも混じっていて、見ていられない感じだ。


相手の見た目は、青年くらい。まぁ同い年くらいだろう。


日本でいじめはよくある話だが、どうやら日本だけじゃないみたいだ。


まぁ何がともあれ、さすがに止めに入るべきだよな。


俺は川の向こう岸まで走って、止めに入った。


さすがにちょっとボコされたけど、これをマリアが、女の子がうけていたと考えると、辛いよな。



「Are you all right?」(和訳:大丈夫?)



いじめていた奴らがいなくなったので、マリアに駆け寄る。



「I'm more worried about you」(和訳:あなたの方が心配よ)



心配したつもりなのに、逆に心配されてしまったな。



「I'm fine」(和訳:大丈夫)


「Doesn't look like that」(和訳:そうには見えないよ)



さすがに、怪我しすぎたかな?


でも、女の子を助けるなんて俺カッケーとか、呑気なことを思っていました。


それだけ、怪我のことはどうでも良かったんです。



「Let's go home」(和訳:帰ろう)



こんなところにいても仕方がない。


マリアに手を差し出し、帰ろうと言う。



「OK」(和訳:わかった)



そして、帰路についた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る