第53話「ニュルンベルクの思い出1」


※「ニュルンベルクの思い出」では愛斗が英語を喋る際も、片仮名ではなくアルファベットで書いてあります。

※ちなみにで表記しておきますが、英語の使い方や文の構成は、翻訳機や翻訳書(辞典や参考書)ありきなところがあります。まぁ筆者がネイティブじゃないんで、変でも仕方ないことだと思ってください

※ドイツ人の人物像は、全くのオリジナルで、現実にいる人の性格や言動を参考にしているわけではありません

一応注意書きです。書いたんで文句は言わないでください()



ドイツ、ニュルンベルク。その町に訪れた俺は、とある家にホームステイすることになっていた。


その家は三人家族で、娘さんと親、それで三人。そんな構成だった。


たった一週間の滞在とはいえ、その家族は、俺と仲良くしてくれた。


そんな中、俺は気になっていたことがある。



「Why doesn't she come out of the room?」(和訳:彼女はなぜ部屋から出てこないの?)



彼女、というのは、娘さんのことだ。


たまに顔を見せるが、話してはいない。



「My daughter has a wound in her heart」(和訳:娘は、心に傷を負っているんです)



何やら訳ありのようだ。


父親が深刻そうな表情をして、俺に話してくれた。



「Is there anything I can do?」(和訳:僕に何かできることはありますか?)


「Thank you. But don't provoke too much」(和訳:ありがとう。でも、あまり刺激しないでね)



ということなので、その娘さんの部屋に行ってみることに。


正直なところ、ノックをしても追い返されるだけだと思っていたが、意外にも部屋に入れてくれた。



「Hello. My name is Aito」(和訳:こんにちは、僕は愛斗と言います)


「Ich bin Maria」(独語和訳:私はマリアよ)



英語ならわかるが、ドイツ語はさっぱり・・・。まぁでも、この子がマリアだということは分かった。


髪は綺麗な金髪で、とても明るい色だ。だけど、表情はそれに反して暗い。



「Möchten Sie Schach spielen?」(独語和訳:チェスしない?)


「え、えーっと、オッケー」



何を言ってるかはわからないが、とりあえず、チェスのセットを持ってきていたので、これからチェスをしようというのは何となく理解した。


ゆったりとチェスをやりながら、マリアに質問してみる。



「Why are you shut up in the room?」(和訳:なんで部屋に閉じこもってるの?)


「Ich habe Angst」(独語和訳:怖いから)


「えぇー・・・Can you speak in English?」(和訳:英語で話してくれますか?)


「Scary」(和訳:怖いの)


「Scary? Why?」(和訳:怖い? なんで?)


「I don't want to teach」(和訳:教えたくない)



教えたくない・・・か。


親御さんに、あまり刺激しないでほしいと言われてるわけだし・・・。


でも、この子は見た目俺と同い年。そんな子が、何かに悩んでる。


慈悲とか同情とかそんなところだけど、放っておけるわけないよね。



「Let's breathe the outside air」(和訳:外の空気を吸おうよ)


「I hate it」(和訳:嫌だ)


「why?」(和訳:どうして?)


「What can you do for me?」(和訳:あなたは、私に何ができるんですか?)



彼女がいきなり、重たい質問をしてくる。


何が・・・俺は、彼女に対して何ができるのだろうか。


そんな深いこと、考えているわけがない。


だけど、彼女の悩みは、それだけ深く深刻なものなのだろう。


何があったのかは知らないけど、このままじゃ、将来後悔する。


別に、俺自身が彼女と同じ経験をしたわけじゃない。けど、そんなこと誰だって想像できる。



「What kind of person do you want me to be?」(和訳:僕は、あなたにとってどんな人であってほしいですか?)



質問を質問で返し、彼女は戸惑う。


そしてチェスの方も、あと一手で俺のチェックメイトだ。

さぁ、どうする?



「I want you to be next to me」(和訳:私のそば(隣)にいてほしい)


「OK. But why did you think so?」(和訳:いいよ。でも、なんでそう思ったの?)


「I wanted a friend」(和訳:友達が欲しかったから)



その一言と同時に、マリアは駒を動かす。


そして、俺の番が回ってきた。


この回、俺の駒を動かすことによって、勝負が決まる。



「チェックメイト」



駒を動かし、そう言う。俺の勝ちだ。



「Let's play again. My friend」(和訳:また遊ぼうね、私の友達)



ちょっとカッコつけたかな? そう言って、マリアの部屋から出て行った。


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