第49話「姉貴ってたまに鋭い」


姉貴の英語力が想像の三倍なかったことが発覚したところで、夜ご飯にすることにします。


最近はマリアのご所望により、和食ばかりだが、今日も例外ではない。


今日はカツに味噌だれをかけたのだ。



「カステリッヒ」



マリアのお口にも合ったようだ。


言ってることは相変わらず分からないが、表情で何となくわかる。



「愛斗、マリアちゃんはなんて言ってるの?」


「これに関しては俺も分からん。ドイツ語とかじゃないのか?」


「そういえば、記憶が消えちゃった時期に出会った子なのよね。ということは、ドイツ人か」


「まぁそうなるな」


「というか、この子、詐欺じゃないでしょうね?」


「まぁ、だとしたらとっくに被害を受けてるし、多分大丈夫だろうけど」



今までのマリアの態度を見る限り、とても詐欺とは思えない。


というか、こんな貧乏学生から、一体何を奪うというんだ。


あれか、俺の心か? 奴はとんでもないものを盗んでいこうとしているのか!?



「It's not a scam. I love Aito! not a lie」(和訳:詐欺じゃない。私は愛斗のことが好き! 嘘じゃない)


「愛斗、和訳して頂戴」


「えーっと、私は詐欺じゃない、その・・・俺のこと、好きだ、と・・・嘘じゃないと」


「しっかり和訳しなさい通訳!」


「俺は通訳じゃねぇ!?」



こんな恥ずかしい文面、言われてる本人が口に出すなんて赤面して当然だろ。



「というか、お姉ちゃん聞き捨てならないことを聞いたんだけど」


「はい?」


「愛斗、やっぱこの子と付き合ってるんじゃない」



あ・・・あぁ・・・。



「いや、付き合ってない」


「嘘でも彼女さんの前でそんなこと言うんじゃない!」



あれ、これ前にも聞かされた覚えがあるぞ。



「Aito?」


「あぁ、すまない。姉貴が失礼したよ」


「She is a good person」(和訳:彼女は良い人よ)



良い人・・・ねぇ。



「あら、マリアちゃん日本語通じるの?」



マリアが英語、俺が日本語で話していて、会話が成立していることに、姉貴が気づいてしまった。


まぁでも、俺とマリアの関係もおおかたバレちゃったし、もう隠すこともないか。


もちろん俺から説明することはないけど。



「・・・?」



そう思ったはいいが、ここで、マリアさんお得意のいつものやつが出ましたね。


あれ・・・とぼけ顔って言うの? まぁそんな感じのあれ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る