第13話「言葉はなくても表情が語っている」


ガチャっと、ドアの開く音がする。



「やはりか・・・」



そう、ニヤリと呟いてしまう。


結局、俺はマリアの帰りを待っていたのだろう。



「おかえり」



俺がそう言うと、日本の挨拶が分からないマリアは、



「え、えっと。はい?」



そんな感じで、戸惑った顔をする。



「マリアのために色々買っておいたから、適当に確認しておいて」


「そうなの?」


「あぁ」


「出て行けって、この前まで言ってたじゃん」


「しょうがないから、しばらく居候させてやる。それと、日本語喋れるなら普段から日本語で喋ってくれ」


「・・・?」


「なんでわかんねぇんだよ!?」



とりあえず、夕食にすることにしました。



「肉じゃがだ。マリアの好きな日本料理だ」



不思議そうな目で肉じゃがを見つめる。まるで、食べてよいモノか、匂いをかいで見極めてる小動物みたいだ。



「エーッヒト?」


「うん・・・うん?」


「・・・?」


「えっと、そのエーヒット? っての、どんな意味があるんだ?」


「・・・?」



せめて"知らない"とか、その辺の言葉を発してほしいところだ。


ちなみにだが、肉じゃがはマリアのお口に合った模様。


あからさまに美味しそうな表情をして食べていた。


作った側の感想としては、多少大げさでも、美味しそうに食べてくれると作った甲斐があるってもんだ。


なんかおふくろの気持ちが、少しばかりかわかった気がしなくもない。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る