第11話「優しさで数万円は結構高価だ」


「おまたせ〜」



そう言って、こちらに向かってくる女性。


彼女は裕太の友達で、今日の買い物に、彼女も付き合ってくれるみたいだ。



「おはよ、今日も可愛いね。特にロングスカートがセンスある」



裕太お前なぁ・・・。


まず女性のことをほめる。モテる人はやっぱ違いますね(白目)。



「はいはい。あ、初めまして、姫乃(ひめの)です。今日はよろしくね」


「愛斗です。こちらこそ」



改まった挨拶は済ませたので、早速店内に入る。


今日の予定は、彼女に全てお任せだ。


洋服、家電、家具・・・。


全部で数万円もした。決して安くない出費だ。



「ミアちゃんのためにこんなに買い込んで、愛が深いですな」


「違うから」


「あれ? マリアちゃんと愛斗くんって付き合ってるんじゃないの?」



不思議そうな顔をして、姫乃が言ってくる。この表情だと、おそらく悪意はなさそうだ。


ということは・・・。



「違うから!? 裕太なにホラ吹いてるの!?」


「あははは、すまんすまん」



やっぱそうですよね。裕太が適当なこと言ってただけですよね。



「マリアちゃんって、ドイツの人って聞いたけど」


「自称な。詳しい身元は俺にもわからん」


「愛斗はよくそんな子を家に居候させてるよね。やっぱ愛して」


「いないからな?」


「では、愛斗くんは何故、ここまで尽くすんですか?」



姫乃から刺さるような質問。



「なぜというか・・・なんだろうか」



まぁそうだよな。普通はここまでしない。


ましてや、俺は記憶喪失で、マリアのことは一切覚えていない。


なのに、なんで俺は、ここまでマリアに優しくするのだろうか。



「やっぱ、愛が」


「裕太は黙ってろ!?」



その後、俺は永遠に裕太にイジられまくりました。


そして帰りは荷物が多くて重たいです。


これ、マリアは喜んでくれるだろうか・・・。


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