プリン、プリン、プリン…

貴音真

「プリンの秘密」

 あなたは、『』をご存知だろうか?

 コンビニエンスストア、スーパーマーケット、洋菓子店…

 様々な所でプリンは販売されている。

 では、あなたはそのプリンに使われる原材料をちゃんと確認したことはあるだろうか?

 プリンには卵や砂糖など様々な物が使われている。

 しかし、あなたは目にしたことがあるだろうか?

 プリンという食品の原材料として記載されている『』のことを…




「イーッヒッヒッヒッヒッ、よく来たね。今日もプリンを買いに来たのかい?」


 四年前、僕が育った田舎にある寂れた洋菓子店はプリンのみを扱うプリン専門店になった。

 以前はケーキをメインに販売していた店だったのだが、少子化により誕生日ケーキの販売数が減り、四年前に前の店の店主が夜逃げ同然に店を出ていき、それをのまま使うかたちで後を継いだのは他所から来た年齢不詳の老婆だった。

 その老婆の販売しているプリンは絶品で、遠方からも買いに来る客が多くいた。僕もその一人だ。

 帰省するのではなく、プリンを買うために僕は毎週末片道二時間かけて田舎へ帰っている。


「はい。あ、でも今日は遅かったみたいですね…」


 僕はあからさまに落胆した態度で老婆の問い掛けに答えた。

 この日は事故渋滞が発生したためにいつもより到着が遅くなり、プリンは売り切れてしまっていた。


「イーッヒッヒッヒッヒッ、そうガッカリするこたないさね。さえ良ければ新しいプリンを作ってやろうかい?」


「えっ!?良いんですか!?是非ともお願いします!!」


 一度消えた希望が再び甦ったことに喜んだ僕はすぐにそう答えた。

 翌日まで待てばよかったのだが、翌日は接待ゴルフがあるためにすぐにトンボ返りしなくてはならず、それは出来ないために諦めていたところへの老婆からの思わぬ提案だった。

 僕が答えると老婆は「少し待っときな」と言って店の奥へと姿を消した。


 それから一時間近くが経ったが老婆は全く戻ることなく、何か作業をしている様な音も聞こえてこなかった。


「どうしたんだろう?プリンってこんなに静かに作れるのか?」


 店の奥にある調理場からは卵をかき混ぜる音はおろか、物音一つしなかった。

 僕は老婆が消えた店の奥がすぐに調理場という事を知っていた。なぜならこの店の前の店の店主は僕の親戚だからだ。


「さすがにおかしいな……よし!」


 さらに二十分ほどが経過した時、僕は老婆の身に何か起きたのかと心配になって店の奥へと足を踏み入れた。

 しかし、そこに老婆の姿はなかった。


「あれ?おかしいな…上か?いや、上は居住スペースのはずだよな……ん?」


 調理場を見回した俺は見慣れないものを見つけた。

 それは、以前の店にはなかった地下へと続く階段だった。いや、階段というよりは梯子と言うのが正しい。

 僕は興味本意でその梯子を下りた。

 薄暗い中を十メートルか二十メートルは下りた時だった。


「ぎぃゃああああああああ!!!」


 突然梯子の下から女とも男とも判断が出来ない叫び声が聞こえた。

 その瞬間、恐怖と興味が同時に目一杯に溢れた満僕の心の中は僅かに興味が上回り、僕は急いで梯子を下りた。

 そして、調理場から三十メートルはあるであろうその梯子を下りきった場所でそれは行われていた。


「ぎいいいいいいいいいい!!!」


「えぎゃああああああああ!!!」


「ぐぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ!!!」


「おごごごごごごごごごご!!!」


「イーッヒッヒッヒッヒッ、いい声さね。これは美味しいが出来たよい」


 それは、思わず目を覆いたくなる光景だった。

 老婆の前には身体からだを拘束されて身動きの取れない状態の若い男女が四人…男女というにはまだ幼いその男女は皆が裸で、その華奢な肉体は恐らく十代後半にすら届いていない様に見えた。

 老婆は拘束されたそのの鼻の穴に金属製と思われるストローの様な物を突き入れ、それを激しくも優しく掻き回しながら血と粘液と見たこともない白色の様な桃色の様な液体を抽出してバケツの中に集めていた。

 見るからに激痛が与えられていると思われる幼い男女達は口から胃液と思われる液体を流しながら断末魔にも似た叫び声を発し、同時に涙と尿と便を絶え間無く垂れ流していた。

 しかし、そんな状態にあっても幼い男女達は意識を保ち、死ぬことはない様だった。


「イーッヒッヒッヒッヒッ、今日はだからいつもにより量が少ないねい。あるいは、もう廃棄の頃合いかねい」


 老婆はそう言いながら一人の女の耳にかじりついて耳を噛み千切り、それを隣の女の膣へ放り込むと、今度はその女の鼻を噛み千切って耳を千切られた女の耳の穴に捩じ込んだ。

 さらに老婆は大きなペンチを取り出すと、二人いる男達の睾丸を一つずつゆっくりと時間をかけながら潰した。

 老婆はそれらの行為を嬉々として行い、それを終えるとこう言った。


「イーッヒッヒッヒッヒッ、あんた達はを作るための材料なのさね。わかってるかい?肉体からプリンが出なくなるまでは死ぬことさえ出来ないよい。まあ、アタシはせいぜいあんた達が長生きすることを望んでいるさね。新しいガキのは味がイマイチでねい。ようやく常連客も出来たのに味が落ちたら申し訳ないだろう?と言っても、あんた達以外にも三年物を超えたの素は二十人くらいいるけどねい。イーッヒッヒッヒッヒッ…ん?おやおや、、いつからそこにいたんだい?」


 あまりの光景に身動きが出来なかった僕は老婆な見つかってしまった。

 恐怖によって震えが止まらず、身体からだが動かなかった僕は黙っている以外に何も出来なかった。


「イーッヒッヒッヒッヒッ、そんなに恐れる必要はないさね。はもう十五歳じゅうごを疾うに越えているだろう?」


 僕は老婆の問い掛けに無言で頷いた。


「だったらは出来ないさね。ほれ、これがうちのプリンの隠し味のさね。取れ立て、味わってみるかい?」


 老婆はそう言うとスプーンを取り出してバケツの中から白色と桃色の中間の色をしたプルプルした物を掬い、僕の口元にそれを持ってきた。

 ガチガチと歯を鳴らす僕の口がほんの少し開いた瞬間、老婆はそれを僕の口の中へ放り込んだ。

 それは生臭く、柔らかかった。

 そして、僕はそれを悟った。

 この店のプリンが病みつきになるのはこの隠し味ののせいなんだ…


「ああ、なんて美味しいんだろう…」


 を味わった僕は思わず呟いていた。

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プリン、プリン、プリン… 貴音真 @ukas-uyK_noemuY

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