知らないけれど、知っている
パパとママは自分たちの間にゾラを招き入れた。両側から伝わるぬくもりに安堵した途端、まぶたが重くなる。
とろんとした目のゾラを撫でながら、ママが微笑んだ。
「そうそう、さっき牛になった夢を見たわ」
「君も? 不思議だな、僕もだよ」
「何を言おうとしても『もう』しか言えないのよ。それにすごく眠くなっちゃって」
「そうなんだよ。でも一番気になるのは、背中に誰かが乗っていたんだ」
「あなたも? 不思議ね、私もよ」
「遠い昔に会ったことがあると思うんだけど、誰か思い出せないんだ」
「そうなのよ、小さくて気まぐれで、そこら中を飛び回っていた気がするんだけど」
ゾラは眠りに落ちながら、ジャスパーに話しかける。
ねえ、ジャスパー。僕、パパとママより先に寝るほうがいいや。だって、声を聞いていると安心して眠れるもの。
ウタカタンの者は誰だって一度はジャスパーに出会う。けれど、もやもやジェットが自分の中にあるのを見つけたとき、ジャスパーは忘れ去られる。
みんな知らないけれど、知っている。もやもやジェットのジャスパーは今夜もどこかを飛んでいる。
もやもやジェットのジャスパー 深水千世 @fukamifromestar
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