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 そして、春がやってきた。


 まだ吹きつける風は少し肌寒く感じるけれど、太陽の光は暖かく、これからどんどん春めいてくるんだろうなぁと予感させる。


 桜並木の下を、私は自販機を求めて、あてもなく彷徨い歩いていた。

 周囲は、桜の花を観にきた人々でいっぱいで、賑やかな中をかき分けるようにして歩かなくてはならなかった。


 まったく、やれやれだ。

 食後に飲まなきゃいけない薬があるらしいのに、水を持ってくるのを忘れたとか、しょうがないなぁ。


 両親をベンチで待たせているので、早くミネラルウォーターをゲットして、戻らなくてはいけなかった。

 満開に咲いた、ピンク色の桜の花を見上げながら、それでもさほど急ぐことはなく、私はのんびりと歩いていた。


 あの、雪が積もった夜から少しだけ時が過ぎ、次の新しい年が明けて、そして、私と母はボロアパートを引き払い、実家に戻っていた。

 

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