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まあそんなわけで、私が突然言いだした提案について、彼は前向きに検討してくれてる最中みたいだったけど、さすがにこれだけじゃ説明が足りないよなぁ…と思った私は、もう少し注釈を加えることにした。
いきなり、私のお兄ちゃん役をやって! って言うだけじゃヘタすると私、おかしな趣味のある頭の弱い子、なんて彼から思われちゃいそうだからさ。
それは心外だし、イヤだった。
まず私は、さっきも話したとおり、ずっと前から、もし自分にお兄ちゃんがいたら、どんなカンジなのかなって考えることがよくあった。
それも、彼と同じ、自分より2歳年上のお兄ちゃんがいたら、私の人生はどうなっていたんだろうかという想像だ。
幼い頃から今日まで、暇をもてあましたときには、お兄ちゃんのいる自分の生活について、私は幾度となくシュミレーションをしてみた。
何の面白味もない、いつもの私の日常の中に、自分より2歳年上の男性が加わった生活を想像するのだ。
だけど何度やってみてもそのシュミレーションは、とても薄っぺらで、しっくりくるものではなかった。
いろんなパターンやバージョンでやってみても(文系のインテリ形お兄ちゃんとか、体育会系のノリノリお兄ちゃんとか)全然ダメで、きっと上手くいかない理由は、リアリティのなさにあるのだろうと私は考えた。
当時の私にとって『お兄ちゃん』とは、ドラゴンとかユニコーンとか、名前や姿形、だいたいの特性は知識として知ってはいても、自分と同じ世界には存在し得ない、幻想の生物だったからだ。
その幻想の生物を、間近で詳しく観察することができたのなら、私のお兄ちゃんシュミレーションは精度を増すのになぁ…なんて冗談で考えていたら、ひょっこりと今回そのチャンスが到来したというわけだ。
19歳の男の人、17歳の私より、2歳年上の彼。
そんな、おあつらえむきの人が、いま私の目と鼻の先、同じ部屋の中にいる。(しかもイケメン)
こんなチャンス、きっともう掴むことは出来ないだろう。
で、どうしてそこまでして、私が『自分より2歳年上のお兄ちゃんのいる生活』について長年ものあいだ頭を巡らせていたのか、その理由を述べよう。
なんてことはない、今は一人っ子の私だけれど、実は私には、2歳年上の兄が実際にいるからだ。
…いや、2歳年上の兄が、私の知らない過去にはいたのだ。
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