エピローグ

34.やっぱりよく分からないけど

「ったくさ、散々だぜホント……」

「あれはアナタが悪いのよ。声高にハーレム要員なんて宣言するから」


 呆れ声でオーミが首を振った。


 討伐クエストから戻り、頭を下げまくってどうにか温情でカフェでのお茶に混ぜてもらった後、帰り道が一緒のオーミと帰路につく。


 徐々に日も沈んでいる。もう少しすれば、綺麗な夕焼けがハイレムの大地を輝かせながら包み込んでいくだろう。



「とりあえず4人の仲が戻って良かったぜ」

「まあ半分はタクトのおかげね。あれがなくてもいつかは元通りになったと思うけど」


 カフェにいるときも、話題は俺のハーレムについて。


 アーネックからは「それをパーティーの仲間に言うって人としてどうなんだ」と怒られ、カナザからは「転生してくる男子ってホントに単純ね」と呆れられ、ナウリからは「ワタシやニッちゃんは対象に入れないでね~」と拒絶された。陪審員と判事がはじめから俺を敵視している厳しい裁判である。



「で、どうなの? 女子グループのことは分かってきた?」


 下から見上げるように聞く彼女の顔には「そんなことないと思うけど」という予測がありありと透けている。


「ぜーんぜん。まだまだ時間かかりそうだよ。しばらくは俺のやり方でコミュニケーション取っていくしかないな」

「そっか。まあ面白いけどね、アレ。ストレートに話すのも時には効果的なんだなあって、男子のやり方がちょっと羨ましくなったわ」

「そりゃどうも」


 どこか楽しそうな彼女に、鮮やかな西日が射す。ぱっちりと切れ長な目も、薄墨色の瞳も、ピンクでぽってりした唇も、オレンジに照らされた彼女はやっぱり綺麗で、見つめていると時間も俺の足と一緒に進むのを忘れてしまいそうだった。



「次のクエストでもまたオーミ達のことを勉強しなきゃな。やっとこの5人にも慣れてきたし」

「あら、そういうタイミングでメンバー入れ替えがあったりするものよ」


「そんなバカな! ぐぐ……でもそれも有り得る……」

「それに、パーティー構成の話聞いた? 同学年だけだとうまく回らないことも多いらしくて、今度から先輩や後輩と組むことも検討するって」


 なんだとお!


「ちくしょう、また関係性から勉強しなおしじゃん! いつになったら俺のハーレム計画は本格始動するんだ!」


 全身脱力するように嘆息する俺を見て、オーミも鼻で小さく溜息をつく。


「全然うまくいかないんだもの、そろそろ諦めたら?」

「いいや! 俺は諦めない! ハーレムを作る!」


 拳を突き上げて高らかに宣言すると、彼女はプッと吹き出した。



「変わってるわね」

 涼しい向かい風。薄紫の髪が、ふわりと靡く。


「でもタクトのそういう真っ直ぐなところ、キライじゃないわよ」

「……え?」

 ん、え、あれ? なんか今、聞きなれない言葉が!


「何それ、どういうこと!」

 彼女は、少し意地悪にクスクスと笑って、3歩先を走り出す。


「ふふっ、せっかくだから受付所に行って、次のクエスト選んじゃおっか」

「ねえ、何! ちょっと、オーミ!」



 女子グループにも女心にも振り回されっぱなしだけど、今はそれはそれで悪くない気もしたりして。


〈了〉

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転生したからハーレム目指すけど、男子校だから女子グループが全然分からない 六畳のえる @rokujo_noel

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