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* * *
「怪奇現象?」
「ええ、それも、立て続けに三件。なんでも、大雨の日に雨と一緒に鼠が降ってくるとか……」
「鼠が? なんで?」
「だから、それを調べたいんですよ! 妙でしょう? 目撃者の話によると、雨の日に大量の鼠を見たって言うんです。三人とも、全然違う日時の違う場所でなんですが。でも、そんな形跡は全くなくて……」
占いの館————タロット、手相、姓名判断、四柱推命と書かれたメニュー表を全部無視して、
偽物の水晶玉を布で磨いていたエセ占い師は、次々に自分の言いたいことを喋る渚に、ため息をつく。
「あのなぁ、ナギちゃん。俺はこれから忙しいんだよ。ほら、あの番組あるだろ? 占い師がいっぱい出てくる番組! あれの出演依頼があって、これからその打ち合わせがあるんだから……」
この占いの館の主人・
スナックや居酒屋が入っている小さなビルに構えている照明の薄暗い怪しげな内装のこの店舗は小さいが、男一人が生きていくには十分なくらい繁盛していた。
さらに、最近はその占いが的中すると話題になっていて、メディアへの露出も少しずつだが増え始めている。
今日も予約があった依頼人に巧みな話術で、占いではなく、霊視によって見たものを並べて、ズバズバと過去や未来について言い当て、一仕事終えたばかり。
「忙しいのはわかりますけど、先生、興味あるでしょう? っていうか、これは先生じゃないと解決できない……そんな気がするんですよ!」
渚はか弱い女子高生だった時に友野に助けられてから、彼のことを勝手に先生と呼んでいる女子大生である。
「だから、勝手にそういう依頼を持ってこないでって言ってるだろ? 俺はもう占いだけで十分食っていけるようになったんだから、そういう危ない案件からは足を洗ったの」
友野は現在占い師として活動しているが、裏では心霊現象や怪奇現象による事件の解決を副業としていたのである。
すでに勘当されてしまったが、霊媒師をしている実家で得た知識を生かして、学生の頃はよく遊ぶ金欲しさに無茶なことをしていた。
「そんな! いいじゃないですか、ちょっとくらい! 減るもんじゃないんですから!」
「減るよ……俺だってもうすぐ
「私だって、もうすぐ
「年齢じゃなくて、体力の問題なんだけど……これだから若者は……はぁ……」
キラッキラの純粋無垢のような目で、渚は小首を傾げる。
男ウケ抜群のあざとい表情を作って甘えてこられても、内容が内容なだけにどうも気持ちが悪い。
目の前にいる女子大生は、準ミスに選ばれるくらいの美人なのに、怪奇現象や都市伝説が大好きなオカルト研究部出身なのだ。
そして、今は大学内でそういう怪奇現象などの依頼を受けては、身銭を稼いでいる。
その美貌を活かせば、他にいくらでも稼ぐ方法はあるというのに。
「だって、もう約束してきちゃったんですよ。依頼料も前払いでもらってきたんで、お願いしますよ! 先生!」
「また勝手に! 全くもう……」
渚の勢いに押されて、友野は渋々、翌日依頼人と会うことになった。
勝手に依頼を受けてきた、その雨の日に降る鼠を見た三人の目撃者のうちの一人、最上
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