番外編その2 私達の、結婚式 イリス視点(3)
「イリス。ここはいつ訪れても、気持ちがいいね」
「うん、そうだね。……マティアス君。私の我が儘を聞いてくれて、ありがとうございます」
あれから、四十分ほど後。私達は切り株の前で立っていて、私は周囲にある木や青空を眺め回しました。
私達が今いるのは、ランドラの森。お母様と最後に出掛け、あの日2人で遊びに訪れ、最後の魔物を倒した場所。そこが、式場なんです。
「…………ここはね。あの頃以上に、大切な場所なの」
あの日マティアス君に『行きたい』と伝えた場所で、7年後にマティアス君が連れていってくれて、大きな脅威から護ってくれた場所。
『イリス。どこで式を挙げようか?』
なのでそう尋ねられた時、真っ先に浮かんだんですよね。
「ランドラの森は、俺にとっても特別な場所。とても良い、ピッタリな場所だと思うよ」
切り株。空。風にそよぐ草花。
「しかも、ほら見てイリス。素敵なお客さんが、お祝いをしに来てくれたよ」
「え? お客さんって、どなたが――わぁっ、本当だ。鳥さん達、ありがとう」
頭のてっぺんが少しだけ赤い、#5か月前_あの日__#一緒に過ごしたみんな。7匹の小鳥がパタパタと切り株に降りて、かわいらしく鳴き始めました。
「「「「「「「チチチチチっ♪ チチチチチチチ♪」」」」」」」
「「「「「「「ピィっ♪ ピィピィっ♪」」」」」」」
「ふふっ、讃美歌を斉唱してくれているみたいだね。……じゃあ、イリス。それを聞きながら」
「うん。始めましょう、マティアス君」
披露宴は#スタッフや干し肉屋の店長夫婦__お世話になった皆さん__#を招待して行いますが、式は2人きりで行います。ですので2人で、誓約――誓いの言葉を伝えあって、指輪を交換。スクエアストレートラインのもの――2人で決めた指輪を嵌めて、次はいよいよ、誓いのキスを行います。
「……イリス……」
「……マティアス君……」
鳥さん達の優しい鳴き声を聞きながら私達は見つめ合い、でも、まだ口づけはしません。マティアス君と私は、まるで示し合わせていたかのように――。目を瞑って、思い出を振り返ります。
「…………あの日市場であって、イリスが止めてくれた」
「…………そうして私達の関係は始まって、マティアス君のおかげで毎日に色がついて。苦しいだけの日々が、変化しました」
「…………やがて俺はその事実を知って、イリスの温かさを知って、決意する」
「…………それからマティアス君は、私のために旅立ってくれて。7年後、約束を果たしてくれました」
戻ってきてくれて。あの人達から助けてくれて。
『その時が来たら、絶対に。お前を、笑顔にさせられるからよ』
あの日言ってくれた事を、全部実現してくれました。
だからね。
「マティアス君、ありがとうございます。昔も今も、大好きです……っ」
「イリス、信じて待っていてくれてありがとう。その約束はこれからも、ずっと守るよ。……大好きだよ、愛してる」
振り返り終わったら破顔し合って、キス――。
私達は大切な人の体温と愛を唇で感じ合って、それが終わると、もう一度キス。次は恋人ではなく夫婦として口づけを交わし、変わらない愛を確かめ合ったのでした。
マティアス君。私は今も、とっても幸せです。
貴方と出会えて、よかった……っ。
継母と異母妹に虐げられていた私の日常は、初恋の人との再会によって一変しました 柚木ゆず @yuzukiyuzu
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