第14話 IMF方式
「く、首をすげ替えるって、お主。ちょくちょくとんでもないことを言い出すやつじゃのぉ」
「そうか? 首長が無能なんだから交代させれば良いだろってだけの話だが」
「それでも2,000年近くもこの国を治めて来たのじゃがなぁ」
「それが長すぎるんだよ。長すぎてそれが当たり前になって、義務よりも権利にしがみつくようになってるじゃないか。この国の大問題に関わろうとしないなんて、悪徳の極みだぞ」
「うむ、それはそうじゃが」
「アマチャンにも任命責任ってものがある」
「ワシにもか!?」
「そりゃそうだろ。この国の人が不幸になるのを黙って見ているのなら、アマチャンも同罪だ」
「他人ごとだと思ってずいぶんなことを言うやつじゃ。それでは誰を首長にすればい良いと思うのじゃ? お主がやるか?」
「俺はやらねぇよ! 統治能力は俺にはない。人民を不幸にするだけだ」
「自分というものが分かっておるのじゃな。それなら誰が良いと思う?」
「誰がふさわしいかは集まったみんなに投票してもらって決める、というのはどうだ?」
「ふぁぁ?!」
「ここでいっきに制度ごと変えてみるってことだが」
「制度を変えるか。それは選挙ってやつじゃな。お主はこの国を民主化するつもりか?」
「なんだ、知ってるじゃないか。だが、完全な民主化は無理だ。そこまで民度が育っていない」
「ワシもちょくちょくあちらの世界をぞいておるからの。Amazonの通販はタマに使っているし」
「そんなもんを使うなよ。支払口座はどうなってんだ。それよりも、選挙の話だ」
「七福神を決める総選挙的な」
「いろいろ混ざってるけど、アイドル事情ばかりに詳しくなってんじゃねぇよ。もっと普通の選挙だ。集まった神々に投票させて、一番票を集めたものを首長にする。任期は10年ぐらいでいいだろう。10年ごとに選挙をやるんだ」
「ふぅむ。解散総選挙はないのか?」
「党も派閥もないからそれはない。って中途半端な知識を持つなよ」
「ふむ。面白そうじゃ。ワシはそれに賛成するぞ」
「そうか。それは良かった。じゃあ次の人、入っておいで」
「アメノミナカヌシノミコト様の次は俺だ。で、ユウは俺に付くんだよな?」
「オオクニはまだそこかよ。もうそういう次元の話は終わったぞ」
「終わっ……はぁ?! いや、だってアマテラスが」
「お前は首長をまだ続けたいか?」
「え? いや、それは、アメノミナカヌシノミコト様がやれという限りは」
「じゃあ、アマチャンが降りろと言ったら降りるんだな?」
「嫌だ」
「最初からそう言えよ! もうやりたくないのかと思ったじゃないか」
「スポットライトを浴びる生活をしていると、軽々に引退などできんのだよ」
「どこの女優だよ。まだ続けたいのなら努力をしてもらおう」
「うがっ」
「なんだ、うがっって」
「いや、なんでもない。なんか嫌な言葉が聞こえた気がして」
「選挙をやろうと思ってる」
「せんきょ? とはなんだ?」
「誰が首長にふさわしいかを、投票で決めるんだよ。一番たくさん票を集めたものが首長だ」
「ふぁぁぁぁぁ!? そんなの無理じゃん!?」
「なにが無理なんだ?」
「俺にそんな人気があるわけがない」
「だから努力をしろと言ってんだ!」
「そ、そんなぁ」
「それは良い案ですわね」
「スセリは賛成だな」
「私も立候補していいの?」
「もちろん。首長になりたいというなら、エロ姫だって構わない」
「誰がエロ姫よ」
「まさか私でもなれるのかしら?」
「スクナは人間だから立候補はダメだ。ただしこの祭りに参加しているのだから、投票権だけはあることにしよう」
「我も良いノだ?」
「魔物は投票権もなしだ。キリがなくなる」
「しょぼんノだ」
「選挙なんかして、不正なことするやつが出ないか? 集計で誤魔化すとか」
「どこのドミニオンだよ。イセは心配性だな。投票にも集計にもミノ紙を使うから大丈夫だ。あれにはウソは書けない」
「なんでひとり1票なの。それは卑怯だと思うの」
「キタカゼ、なんで卑怯だよ。これが一番公正だろうが」
「金持ちの私もビンボ神も同じ1票なんて気に入らない」
「ヤマトにも投票権はねぇよ!」
「私には10票ぐらいよこしなさいよ」
「アマテラスには1票もやりたくない」
「うがぁぁぁぁ」
「ワイは参加する気はないやん。だけど、ヤマトの言うことには一理あると思うやん」
「マイド、どういうことだ?」
「納税額ではナンバー2のシマズ家としては、それ相応の見返りが必要かと」
「シマズ公もどういうことだその2?」
「納税額に見合った票を割り振るべきではないか、という意味であろう」
「ああアイヅ公、そういうことか。WHO方式(全ての国が1票を持つ)じゃなくて、IMF方式(出資額に応じて権利を持つ)にしろってことか。それは一考の余地がある」
「「「「「「「なんの話だ、それ?」」」」」」」
「なんか、ひとり1コマぐらいで片づけたノだ?」
「いろいろ出てきてよかったじゃないか」
で、話は変わって。
(ここでなノか!?)
(もう読者も慣れてるよ)
それはなんの前触れもなくやってきた。
耳障りな咆吼、熱を伴った直視することができないほどの猛光。直立していられないほどの暴風。それらが一斉に、神々の集まった場所――神殿前の広場に設けられた舞台――で起こったのだ。
異世界でカイゼンⅡ ~騒乱編 北風荘右衛 @souekitakaze
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