第13話 首長の首を!?

 イズモ神殿前に設置された舞台の上では、アメノミナカヌシノミコトやオオクニ、スセリ、シナノ、コンピラ、ワシノミヤ、カシマなどイズモ系の神々が集まって協議をしていた。


 彼らは本来、オオクニの勢力圏にいる神々である。しかし、そこにただひとり。異質な存在がいた。


 イセの魔王、イセである。イセはオオクニのやり方を糺すべく呼ばれもしないのに舞台に上がっていたのだった。


オオクニ「せっかく財政が良くなりつつあったのに、この飢饉騒ぎはほんと困る」

シナノ「うちは山中の領地ですけど、隣接地での飢饉なら放ってはおけませんわ」

コンピラ「セトナイカイは平穏なものじゃ。多少なら援助物資を送ることぐらいはできるぞ。キタカゼ家にでもやらせよう」


オオクニ「それは助かる。飢饉はエチゴ国とデワ国(山形、秋田)で主に起きておる。その難民が近隣諸国になだれ込むかも知れないのだ。すぐにも米など支援物資を送ってやってくれ」


イセ「その前に自助努力をしてもらわないとな」

オオクニ「イセは黙ってろ。お前には関係ない」

イセ「な……」


コンピラ「物資を送るのはいいとして、どの港にどのくらい届ければ良いのじゃ?」

オオクニ「んーと、それはまあ、適当になるべくたくさん頼む」

コンピラ「そんないい加減なことで、危険な仕事をさせるわけにはいかん。受け入れたあと、デワはどういうルートで人々に配布するのじゃ?」

オオクニ「えっと、それはデワのチョウカイにやらせればいい。やつと連絡をとってやってくれ」


イセ「お前はどんだけ無能だよ」

オオクニ「なんだとぉ!!」

イセ「ただのひとり言だ」

オオクニ「黙ってろって言っただろうが!」

イセ「ひとり言を言うぐらいかまわんだろ。それに俺の言ったことは事実だ」


コンピラ「オオクニ。その件に関してはイセの言う通りだ。お主はなにもせんのか? チョウカイの直接支援はお主の仕事ではないのか。そこまでこちらにやらせるのか」

オオクニ「こちらもまだ累積赤字が溜まっているんだ。ない袖は振れん」

カシマ「それなのに我らには援助物資を送れというのか」

オオクニ「その通り」


「「「「「その通りドヤッ、ではないだろ!!!」」」」」


オオクニ「うわお、びっくりした。どうしたんだ、お前ら。今日はやけに好戦的だな。イセごときに焚きつけられてどうする」

イセ「ひとのせいにするな。お前が全ての元凶だろうが」


オオクニ「飢饉は俺の領地で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!」

イセ「ネタが古いよ!! しかも意味が分からん。この国で起きたことは全部お前の責任だろが」


オオクニ「ともかく、首長が言うことを聞くのがお主らの仕事であろう。どうして素直に従えないのだ」

コンピラ「それはお主の態度に頭に来ているからじゃ。この国の首長がそんな無責任なことでどうする。本来なら率先して動くところじゃろが」


カシマ「オオクニってほんとバカじゃないのか」

シナノ「まじで、その通りね!」

ワシノミヤ「貧乳はステータスよ!」

コンピラ「そんなことでは協力……待て、いま誰かおかしなこと言ってないか?」


オオクニ「と、と、ともかくだ。お前らでよろしく頼む」


「「「「「ダメだ、こりゃ」」」」」


 そこにひょっこり顔を出したのがスクナとユウである。


「おおっ、そうだ。ユウがいたんだ。おいユウ。カイゼンの仕事があるぞ」

「なにがあったんだ?」

「飢饉が起こってたいへんなんだ」

「そんな重大なことを、ちょっとご飯食べていけみたいに軽く言うな!」


「オオクニ様、シキ研への仕事依頼なら私を通してください」

「詳細を話せ、オオクニ。それは国がふたつに割れているというのと関係あるんだろ?」

「ユウさんも好奇心旺盛を出さないで!!」


 そこでオオクニはコトの顛末をユウに話し、正式にシキ研に助力を要請するという話になった。


 しかしユウは、その前に片づけないといけない問題があることに気づいていた。


 この騒ぎで徹底的に拗れたオオクニ派とイセ派との確執である。


「ともかく、国が割れていたのでは援助もなにも進まない。アマチャン!」

「ん? なんじゃ?」

「俺にアイデアがある。聞いてくれるか」

「いいとも。なんでも言ってくれ」


 そしてこの話は7話に続き、イズモのラーメン屋で、ユウとアメノミナカヌシノミコトとのトップ会談となるのである。


(いったいどんな構成をすると、ここで7話に戻るノだ?)

(う、うる、うるさいよ。慣れないことをしたんで、順番が狂ったんだい)

(呆れた作者だヨ)



「待て待て。誰がトップだって?」

「オオクニ、細かいことは気にするな」

「ユウ。細かくないだろ!? 首長は俺だぞ?」


「そんな能力もないくせに、けっ」

「イセ、お前とは決着を付けるときが来たようだな」

「いいとも。かかってきやがれ」

「ふたりともいい加減にせんか! ぽかっ」

「「あ痛たたたた」」


 めったにないアメノミナカヌシノミコトの鉄槌であった。


 そしてラーメン屋にて。


「まったく。困った連中だずるる」

「俺が思うに、ここまで拗れたふたりを仲良くさせるのは無理だずるる」

「オヅヌとアマテラスのときはうまくやったではないかずるる。なにか良いアイデアはないか」

「あれはもともとふたりが好き合っていたからな。だが、今回はまるで違う。大らかで細かいことの嫌いなオオクニと、有能だが神経質なイセとでは水と油だ。あの反目は消しようがない」


「じゃあ、どうすればいいのじゃ?」

「首長の首をすげ替えよう」

「ふぁぁ!?」

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