都会で平凡な日常を送る若者がふとしたきっかけで摩周湖を訪れることから物語は始まる。遠路はるばるやってきた摩周湖は雲海に覆われ、その美しい景色を見ることはできない。がっくりと肩を落とす青年にお婆さんが声をかける。
地元の人から聞いて知った悲しい伝説、若者は湖に浮かぶ島へ近づくためにひとりボートをこぎ出す・・・
霧に包まれた美しい湖の景観、聞き慣れない方言や地名がミステリアスな雰囲気を醸し出しており、物語を静かに盛り上げる。読者はいつしか孤独な主人公から目が離せなくなるでしょう。
視覚的な情景描写はもちろん、空気や温度の表現が豊かで、まるで目の前に美しい青さの摩周湖が見えるような気分になりました。
結末も、透き通った湖の青さのように美しい。ぜひご自身でこの物語の結末を確かめてください。