第34話 デートレクチャーの成果
今日はデート当日。
海羽には絶対に遅刻するなと言われて朝早くに家を追い出されてしまったので、待ち合わせ場所に予定時刻より一時間も前に着いてしまった。
『待ち合わせ場所に着いたら、読書でもして待っていてください。忙しいのに自分と会ってくれる、知的な男をアピールするのです。読書と言っても漫画は駄目ですからね!』
と海羽に言われていたので、仕方なく最近表紙買いしたライトノベルを読んでいる。
ライトノベルを読んで待ち合わせ場所にいると、本当に時間がなくて忙しい中自分に会いにきてくれた知的な男になるの? まるでそんな感じはしないんだけど?
そもそも、いまから俺たちが行くところは遊園地で、文字通り思いっきり遊びに行くんだし、暇な男であることは明白なんだけどそれはいいのか?
そんなこんなでまもなく待ち合わせの時間である。
待ち合わせ時刻までもうすぐ十分を切ろうかというとき、読書に
「おはよ、そんなに集中して何読んでるの?」
「うお! びっくりした!」
突然目の前に現れた月麦に、俺は驚いて飛び上がってしまう。
「そ、そんなに驚かなくてもいいじゃない」
「なっ! お前その格好……」
「えっ? あ……こ、これは違うのよ。別にあんたを喜ばせようとして着たわけじゃないんだから! せっかく買ったんだし、着ないともったいないかなって思っただけよ!」
月麦はいつものように男を誘惑するような格好ではなく、俺の好みの清楚な服装に身を包んでいた。
今日は日差しが強いせいもあってか、月麦はつばの広い白の帽子を
改めてこうやって月麦の姿を見ると、俺はその可愛さに心を掴まれた。
『デートではまず相手の服装を
海羽の言葉が脳内で再生される。
俺はそうやって何度も妹に念をおされていたので、思ったことを月麦に伝えることにした。
「……すごく似合ってる。帽子とそにょ服、かっ、かわっ……かわいいぞ」
うわぁ、めちゃくちゃ噛んだ!
初めてこの姿を見て興奮していたときは簡単に言えたのに、こうやって冷静な頭で言葉にすると恥ずかしい。
「そ、そう? どしたの急に。あんたがわたしを誉めるなんて珍しいじゃない?」
月麦は俺の言葉に目を丸くして、照れくさそうに帽子を深く被りなおした。
「でも、ありがと。改めて言われるとなんか照れるわね……」
お互いに頬を染めて、なんとなく見つめ合ってしまう。
「と、とりあえず早く行きましょ! 時間は限られてるんだし」
「そ、そうだな。早く行こう」
そうして俺たちはまだ早朝の人の少ない駅のホームから電車に乗り込んだのだった。
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