第6話 生徒とご対面
「
「……いいわよ、入っても」
そんな返事が聞こえてきたので、日葵さんはそっと扉を開いた。
「失礼しま~す……」
俺もおずおずと肩を縮こまらせて日葵さんの後に続いて部屋に入る。
そして、そこで初めて日葵さんの妹を見た俺は、驚いてぶっ倒れそうになった。
その容姿は、さすが日葵さんと姉妹というだけあって洗練されていた。
姉同様のサラサラの長い髪を紺色のリボンでくくって小さな房を二つ作っており、まだあどけなさが残る顔立ちも相まって、まるで愛らしいお人形のようだった。
だが、そんな可愛らしさがどうでもよくなるほどの衝撃を、俺は彼女の格好から受けた。
まずはその胸元。
彼女は制服姿だったのだが、そのシャツの上ボタンは外されて胸の谷間がばっちりと見えていた。
その双丘のふくらみは、姉の日葵さんのように暴力的な大きさは持っておらず、むしろ控えめな方ではあったのだが、男の純情を
さらにさらに、そのスカートの短さたるや、もはやパンツが見えるか見えないかのぎりぎりを責めたその絶対領域。
下着を見せずに階段を上れるのかも怪しいその短い布切れの下から、健康的な白い足がすらりと伸びている。
悪魔的だった。
それは俺の知る日葵さんのような清楚でおしとやかな印象とはまるで正反対。
過去に俺を
「ぐおおおおお……」
頭痛がする、過去にあったクソみたいな経験が、この姿の女子を本能的に拒否するのだ。
しかし、こんなことでへこたれてはいけないぞ
俺は日葵さんとの輝かしい大学生活をエンジョイするために、ここはなんとしても耐えなければならない。
負けそうになった自分の心と身体を奮い立たせ、俺は彼女と対峙した。
「……君が日葵さんの言っていた
俺が頭を下げると、妹はじっと俺のことを見てきた。なんだか値踏みされているような気分になった。
「どうも、ご丁寧に。わたしはつむぎ、
向こうもぺこりと頭を下げてきた。
意外や意外、見た目からは想像できないほどきちんと挨拶のできる子だった。俺はほっと胸をなでおろした。
彼女の見た目は俺のトラウマそのものだが、きっとこの子はいい子だ。
だってあの日葵さんの妹なのだから。人を見た目で判断してはいけませんってよく言われているもんな。
「なんと呼んでくれてもいいよ。ただ、ここではお姉さんと区別するために、俺は君のことを月麦さんって呼ぶけどいいかな?」
「呼び捨てでもいいですよ? わたしが年下なんですから」
「わかった、じゃあ月麦って呼ぶことにするね」
すんなりとコミュニケーションはとれたと思う。最初のインパクトは
「月麦、大地くんの言うことをちゃんと聞くのよ?」
お互いに挨拶が済んだところで、日葵さんは不安そうに切り出した。
「わかってるわよ、お姉ちゃん」
「ほんとかなぁ……大地くん、私はリビングにいるから、何かあったら声をかけてね?」
「はい、任せてください!」
そうして日葵さんが部屋から出て行ったあと、俺はこのビッチっぽい格好をした月麦と二人きりになった。
さて、勉強が嫌いということだけど、どうしたものか。
「とりあえず始めよっか。得意な科目と苦手な科目はある?」
「全部苦手……」
まあそう答えるだろうとは思っていた。そんなときのために用意もしてある。
「じゃあ、いったん実力を測るための簡単なテストをするね?」
俺はそう言って、昨日家でつくってきたテスト用紙を取り出した。
「範囲は高校一年生で国語、数学、英語、理科の基礎的な問題が二問ずつあるからやってみてほしいんだ」
月麦は嫌そうな顔でこちらを見ていたが、さすがにここを譲るわけにはいかない。
苦手にしたって勉強嫌いにしたって、度合いがわからないことには対策の立てようがないのだ。
「じゃあ今から始めるね、制限時間は一時間で。よーい、スタート」
その掛け声とともに、月麦は面倒くさそうにシャープペンシルを紙に走らせたのだった。
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