第4話
どうも。異世界に転生した高濃度の魔石です。
36回目の転生そのまま続行中です。
今はまだ、今代勇者のバッグの中にいます。
同じくバッグの中に入っている薬草が枕代わりです。
そうそう。さっきの話で思い出しました。
初回の転生先が魔王だった時の事なんですけど。
この世界の魔王は、森の奥深くにある魔王城に住んでるんですよ。
そう魔王城です!異世界あるあるです。
ちなみに魔王城は、初代の魔王からずっと使い回されてたりします。
というか、魔王城の中心にある魔の吹き溜まりから、魔王は誕生するんですよね。
だから、魔王城は城の役割というよりか、魔の吹き溜まりを護るバリケード的な役割なんです。
それで、勇者の人生を終えた自分が、次の転生先に選んだのが魔王だった訳なんですが。
何故に初回の転生先を、この世界で敵として倒した魔王にしたのかと言うと。
召喚される前の自分が嵌っていたゲームアプリがですね。
『魔王と愉快な仲間達』
というほのぼの育成ゲームだったのですが、あのほんわかした世界を、是非とも実際に体験してみたかったのですよ。
で。結論から言いますね。
──────無理でした。
いやだって、魔王城の魔の吹き溜まりから転生したら、勇者パーティが待ち構えてたんですよ!
だから自分は速攻で魔王城から逃げ出す事になりましてね。
せっかく仲良くなろうと思ってた、魔王の配下となる筈だった魔族の皆様からは、当然ながら非難轟々を受ける事になり。
勇者パーティのみならず、魔族の皆様からも「待てやゴルァアアアア!!!」と、怒り心頭で命を狙われる魔王となりましたとさ…。
そんな訳で、2回目の転生は、ほのぼのとは無縁の人生(魔王生)だった訳ですよ。
いやでも、生まれてすぐ死ぬのは流石に、ねぇ…。
あの時ほど、背中に翼がある有り難みを感じた事はなかったですね‥。(遠い目)
それで逃げた先で、ふと思ったんです。
前世で勇者として魔王を倒した時は、こうじゃなかったなぁ〜とね。
自分が勇者としてこの世界に召喚された時は、魔王が誕生したタイミングでしたけど、自分は魔王城の中枢へ召喚されたのではなく、この国の王城内だったなぁ〜と。
しかも慣れないパーティを組んで、今代の勇者のように魔石を探して聖剣を作って、それから魔王城へ向かったなぁ〜と。
その、紆余曲折の末に魔王を倒した自分の流れと違う事に、ふと疑問を感じましてね…。
・・・・フッ…。
そこで自分は悟りましたよ。
これは神様からの挑戦状だとね!(キリリッ)
いや、だって、いくらこの世界の魔王が誕生する周期が、だいたい300年ほどだと、この世界に知れ渡っているとしてもですよ。
勇者を召喚するのは、この世界を創った神様しか出来ない御業な訳ですよ。
つまりは。自分の魔王転生の要望を聞き、神様が自分の時を一旦止めるか何かして、その間に勇者を召喚し、パーティが育ったところで魔王城に集結させ、それから自分を転生させた。という事になる訳ですよ。
これって酷くないですか?
せっかく前世で頑張って魔王を倒してあげたのに、初の転生で人生(魔王生)を何一つ楽しむ事もできずに殺されるなんて!
酷いよ神様…。ちょこっとくらいは、自分にも魔王な体験させてくださいよ…。
とか何とか思いつつ。
ふと自分の中にある魔王の『邪悪』な魔力と、前世の勇者から引き継いだ『神聖』な魔力を、掛け合わせたらどうなるんだろうって。
ちょこ〜っと疑問に思って。
疑問に思ったら、やってみたくなる性分なもので。
つい、軽いノリで『邪悪』と『神聖』の魔力を掛け合わせてみたんです。
すると、何ということでしょう。
見渡す限り、辺り一面が真っ白に。
───はい。ここ、見覚えあります。
つい何時間か前に自分が転生する前に居た、神様の領域です。
そして目の前には、先程お別れした神様がいらっしゃったんですよ。(と言っても姿は見えないから雰囲気ですがね。)
となると、やはりここは神様に、勇者パーティが待ち構えていた事とか、出戻りで呼び出されてる現状とかを、聞くしかないじゃないですか。
それで返答次第では、ちょっと物申しをしようと思ってたんですよ。
この扱いの酷さは、流石に少しくらい怒ってもいいですよね?と。
で。蓋を開ければ。
…全面的に自分が悪かった事が判明しました…。
なんでも、俺TUEEEチートスキル持ちな自分の、興味本位な行い(軽いノリでやったアレ)のせいで、この世界を滅ぼす一歩手前だった為に、自分が起こす筈だった事象ごと、神様の領域へ強制回収したのだそうでした。
この話を神様から聞いた時の自分の顔は、ポカ──(゚д゚)──ン。
まさに、鳩が豆鉄砲を食ったような顔、だったと思います。
え、何でそうなるん? って思いましたもん。
それで詳細を聞くと。…ふむふむ。
本来は共存し得ない、相反する力の掛け合わせは、その融合時に反発で生じる爆発的なエネルギーにより、世界を滅ぼす事象を起こすと。
…えーと。ごめんなさい。難しいです…。
とりあえず、相反する力を掛け合わせると、爆発的なエネルギーを生むんですね。
でも、例えば相反する火と水を上手く掛け合わせれば、火は消えないし、水も蒸発せずにお湯になるから、要は出力バランスじゃないの?
え、違うの?
それはこの世界の均衡を保つ、自然の魔力だから出来ること?
『邪悪』と『神聖』の魔力は、どちらも自然の魔力ではない、神力から生まれた魔力で、世界の均衡を崩す事ができる魔力で、相反する性質は絶対で交わる事はないから、一度掛け合わせれば永久に相互間で反発が続くと。
…えーと。ごめんなさい。難しいです…。
簡単に言うと、つまり?
地球で似たような現象でお願いします…。
ふむふむ。核爆発…。
・・・・・・・・。
か、核爆発ぅうううう?!!!
って事は、さっき軽いノリで行ったアレは…
『邪悪』×『神聖』=『核爆発が無限大』
な、な、何だと〜〜〜〜〜〜っっ?!!
───この後、自分が神様へ、スライディング土下座で平伏したのは言うまでもないですが、神様から勇者のスキルを持つ自分が魔王となった場合、生まれてすぐ殺されなければ消滅する事ができないと説明されて、2回目の人生(魔王生)は出戻りのまま強制終了する事に相成りました。
それなら最初から魔王に転生させなきゃ良いだろうって?
それが、願いを叶える時に、転生するモノへの成約を盛り込まなかったから、希望されたら拒否する事が出来ないんだそうで。神様の成約は絶対らしい。
それなら魔王に転生させてくれる時に説明して欲しかったよ!
…まぁ、説明されてても、あの時の襲ってくる勇者パーティは鬼気迫るオーラを纏ってたから、恐くてやっぱり全力で逃げただろうけど…。
あれ?
そういや今更だけど、3日は生きてたミジンコより、半日で天に召された魔王の方が短命だったわ!
…いや、ミジンコより短命な魔王ってどうよ…。
しかも生まれてすぐ逃げたし…ぜったい恥ずかしい語りで歴史に残ってるよな…。
…今代の勇者パーティに聞いてみるか?
いやでも、聞いたら聞いたで、ぜったい居た堪れなくなるよな…むむむ……。
っと、その前に意思疎通の手段をどうにかしないとな。
まずはそこから始めるとするか!
〜続く〜
───────────
一旦ここまでアップします。
少々(?)抜けてる主人公の異世界あるある話、いかがでしたか?
この続きは、話の展開というか構想自体はあるっちゃあるんですけど、気が向いたら更新します。あとはまぁ、続きを読みたい感想があれば書きます(笑)
異世界に転生したミジンコですが何か? 小伊成 @koinari
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