第一話 終末、くしゃみ日和
見上げると、頭上で
一見すると、美しい地球の自然風景と
それを体現するかの様に、辺りには
骨組みだけになってしまった雑草生い茂る
ここは、かつて都心だったのだろうか。
その終わりを迎えてしまった地球を、私たち二人はアテもなく、されど絶望することも、
「疲れたあ」
「ウタは体力がないよ」
隣を歩く彼女を、私はウタと呼んでいる。本名は
「私はトワと違って元運動部じゃないの」
そして、そのウタと一緒に歩いている元運動部の私は
ウタは珍しい苗字と名前をしているが、私も名前では負けていない。そんなことで張り合うのもおかしな話だが、私たちが知り合ったきっかけも、
今や私たちとその名前は切っても切れない関係性にある。
「もう少し歩いたらお昼にしよう」
疲れを
ウタのそれには、
その私たちの背負っているランドセル…真違えた。学生鞄には、教科書などの学生必需品は何一つ入っていない。
そんなもの、数日前にどこかも分からない
終末の二人しかいない世界に、二次関数も政治も必要ないのだ。
だからウタの鞄の中には、教科書の代わりに詰め込んだよくわからない機械たちと、私たちがお昼に食べるようにと
「具体的には?」
「うーん……」
私の問いに困ったように辺りを見回すウタ。その
「んじゃあ、あの人工物のあるところまで行ったら食べようか」
視力の
目標の人工物までの距離はおよそ百メートル前後といったところか。私たちの歩きの速度で考えると、十数分の距離だと思われる。
よく見ようと目を
その感触に思わず鼻がむず
白い何かは大きなくしゃみに驚いたのか、
どうやら鼻先に止まったのは白い蝶々だったようで、あまり昆虫に詳しくないので定かでないが、羽の模様的にモンシロチョウだと思う。春先によく飛んでいるやつだ。
その時、ふと蝶々に関わるある言葉が
が、それを思い出す前にウタが訊ねてきた。
「花粉症?」
くしゃみで赤くなった鼻頭をさすっている私の様子から考察したのだろう。だが、そういうわけではない。
「んー……、太陽の暖かい日差しって、浴びているとくしゃみしたくならない?」
とっくに去っていった綺麗な白い蝶々のことは告げずに説明する。
「あー、確かにあるよね。ぽかぽかーって。特に学校の放課の時間とか、不意に窓から外眺めていると、
嘘の説明に納得したのか、ウタは同調して語り出す。私にもその現象は経験があった。
「あるある。それで結局くしゃみの方が優先されるんだよね」
二人仲良くそんなことを話して笑い合うと、急激に吹き込んだ風が顔を撫でるのと同時に、私たちにジリジリと注ぎ込まれた日差しの暖かさに、同時に『くしゅんっ!』と小さくくしゃみした。
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