第16話 唯と凛は喜ぶ


 再び連日の暑さにやられておりました。

 遅くなってしまい申し訳ございません。

 毎日部屋が30℃を超える中、意識朦朧としながら何とか書き上げたので、おかしな点があったらすみません・・・



 ――――――――――――――――――



「ほんと、猫ちゃん達も可愛かったけど、はしゃいでるお兄ちゃんが一番可愛かったねぇ♪」

「いやぁ、本当だよね~!まさか猫以上にゆっちゃんが可愛いとはね!」


 ・・・

 もうやめて・・・


 俺をこれ以上辱めるのはやめてください・・・


 シクシク・・・


 だって、しゃあないじゃん!

 猫可愛かったんだし!


 と、2人に辱められながら、誰に弁解しているのかもわからない俺・・・


 そんな俺達は猫カフェを出た後に、ショッピングモールのフードコートで昼食を取っていた。


「でも、何も考えずにこの大型商業施設に来たけど、皆で回ると結構楽しめるもんだな」


 俺は恥ずかしさを誤魔化すように話題を反らす。


「うん、そうだねぇ。まあ何よりも、お兄ちゃんと一緒に来れた事が一番楽しいかなぁ♪」

「ほんと、それ!そこが一番の要因だよねっ!」


 ・・・いや。

 なんで話題を反らそうとしたのに、俺の話題に・・・


 嬉し恥ずかしなんですけど・・・


「そ、それよりも、この後どうする?」

「う~ん、午後は見て回るんじゃなくて、何か遊びます?」

「そうだね、そうしよっか?ここはカラオケもボーリングもゲーセンも入っているもんね」


 凛の言うように、この施設は本当に色々と入っている。

 だから遊ぶ場所に困った時には、大体ここを選んでおけば間違いないのだ。


 という事で、その後は唯の提案を採用して遊ぶことにした。


 と言っても、カラオケで2時間ほど歌ってゲーセンでクレーンゲームを少しやったくらいだが。


 それでも気が付けば夕方になっていたので、そろそろ解散する時間が迫ってきている。


 そこで最後にプラプラとショップを見ながら帰る事にした。


 そして、ファンシーショップに通りがかると・・・


「あ、これ可愛い~!」

「うんうん、それ唯ちゃんに似合いそうだね!」


「え~?本当ですかぁ?」

「うん、間違いないと思うよ!試してみなよ」


 と、唯と凛が2人で盛り上がり、物色し始めたのである。


 ・・・ほぼほぼ女性物しかないのに、この場に俺は必要なのだろうか。

 俺は別待機ではだめなのだろうか?


 いや、俺がいなくなったらいなくなったで、後で何を言われるかわからないので、一緒に付き合うしかないんだけどさ。


「どう・・・ですか?」

「うん!本当によく似合うよ♪ねえ、ゆっちゃん?」


 そこで俺に振るか!?


「えっ?あっ、ああ。いつもの感じとは違うけど、唯によく似合っているよ」


 急に振られた俺は焦りながらも、唯がいつもつけているヘアクセサリーのリボンを外し、店のクリップタイプのリボンを付けた姿を見て真面目に答える。


 いつもはピンク系の可愛らしい感じのリボンをつけている事が多いのだが、今付けたのは水色を基調とした物だった。


 唯としては、いつもと違う色が自分に似合うのか不安だとでも思ったのだろう。


 凛と俺が褒めた事で、少し不安げな表情からパア―ッと明るい笑顔を見せていた。


「そっかぁ!よかった!」

「うんうん。どうせなら、それ買って今度学校に着けてくればいいんじゃない?」


 凛は本当に似合うと思っているのだろう。

 ニコニコしながら唯に勧めているのだが・・・


 唯はちょっと渋っているようだ。


「うん、でも・・・今日は遊ぶつもりで来たから、お買い物はまた今度にします」

「う~ん、そっかぁ。可愛かったんだけどね・・・まあ無理に勧めるつもりはないけど」


 唯は服を見ている時にも思ったけど・・・

 幼い頃から片親しかいなかったせいで、あまり贅沢をしない・・・いわば節約する癖が付いているのかもしれない。


 そりゃ、無駄に金を使うよりは全然いいと思う。

 それに今日は遊びで少しお金を使ってしまっているわけだし。


 ただやはり、今まで我慢してきたのだからもう少しくらい自分に甘くしてもいいとは思うが。


 まあ本人の意思だから、俺から何かを言うつもりはないけどさ。


 しかし俺は、店のヘアリボンを外して元の場所に置く時に、少し寂しそうな顔をしたのを見逃さなかった。


 その後も、唯と凛は店の品物を物色しながら楽しそうにしていた。


 そして店を出ると・・・


「お兄ちゃん、凛先輩ごめんなさい。ちょっとトイレに行ってくるから、待っててもらえる?」


 少しモジモジしながら唯がそう言った。


「あ!私も行きたいから、唯ちゃんと一緒に行くよ~!」

「あっ、了解です。じゃあ2人で行きましょう」


 唯の発言を聞いた凛もトイレに行きたかったらしく、2人で行ってくるようだ。


「うん!という事で、ゆっちゃんは少し待っててね!」

「お兄ちゃん、ごめんねぇ」

「あいよ。じゃあ俺はそこのベンチに座って待ってるわ」


 別に謝る事じゃないけどなと思いつつも、特にその事には触れずにベンチで待ってる事を伝える。

 そして、唯と凛がトイレに向かう後ろ姿を見ながら・・・


「さて・・・」


 と、呟いた。



 ・・・・・

 ・・・



「お兄ちゃん、お待たせぇ!遅くなってごめんねぇ」

「ごめん、ゆっちゃん!思っていたより混んでて時間かかっちゃったよ」


 あれから10分ちょっと経っており、唯と凛は遅くなったことを謝ってきた。


「それは仕方ないし、別に全然気にしてないよ」


 むしろ俺にとっては、少し遅くなってくれて助かったわけだし。

 そんな事を考えながら・・・


「じゃあ行こうか」


 と俺はベンチから立ち上がって促す。


 その後は時間も時間なので、モール内をチラチラと眺めながら施設を後にした。

 そして、凛とはここで別れる事になる。


「ゆっちゃんも唯ちゃんも、今日はありがとね!楽しかったよ♪」

「ああ、俺達も凛と遊べて楽しかったよ」

「こちらこそ、強引に誘ってしまってすみませんでした。でも、私も楽しかったです♪」


 ニコニコして本当に楽しそうに礼を言ってきた凛に対して、俺と唯も楽しかったと告げる。


「じゃあ、また学校でね!」


 凛はそう言って去ろうとしたのだが・・・


「あ、ちょっと待ってくれ」


 と、俺は呼び止めた。


「ん?ゆっちゃん、どうしたの?」


 凛は足を止めて俺に向き直る。


「凛には今日付き合ってくれたお礼として・・・そして、唯は誘ってくれたお礼として、これをやるよ」


 俺はそう言って、凛と唯にカバンから取り出した小さな紙袋を渡す。


「えっ?何!?」

「お兄ちゃん、どうしたの?急に・・・」


 俺が渡した紙袋を受け取りながらも、凛と唯は戸惑っていた。


「いや、まあ・・・今日は唯に誘ってもらったおかげで楽しませてもらったし、凛のおかげで更に楽しませてもらったから、そのお礼だよ」

「ええ!?そんなの良いのに~!しかもいつの間に買ってたの!?」

「ほんとだよ、お兄ちゃん!それに、そんなに気を使わなくても・・・」


「まあまあ、そんな事は気にしなくていいから貰ってくれよ」

「・・・うん、わかったよ!ありがとう、ゆっちゃん」

「私もありがとう、お兄ちゃん!・・・早速開けてもいいかな?」


 多分俺があげた理由を聞いても、あまり納得は出来ていないのだろう。

 2人とも少し困惑気味にしていた。


 しかし、もうすでに買ってしまっているわけだし、せっかくだからという感じなんだと思う。

 少し気おくれしながらも、嬉しそうに貰ってくれた。


 というか、唯よ・・・

 開けてもいい?と聞いておきながら、俺の返事を待たずにすでに開けてるんだけど・・・


 本当は、家に帰ってから部屋でこっそり見てほしかった・・・


 まあ、開けてしまったものは仕方がないけど。


 そして、唯が袋を開けて中身を確認すると・・・


「あっ、これ・・・」

「ん?唯ちゃんが貰ったのは何だったの・・・って、ああ、なるほど。そういう事だったんだね?」


 唯は袋から取り出したものを見て固まり、そしてそれを見た凛は何かを察したらしい。


 結局、俺が唯にあげた物が何なのかというと・・・


 それは、先ほど唯が試しに着けていたリボンである。


「ゆっちゃん、本当に優しい良いお兄ちゃんだよね♪お礼とか何とか言って、唯ちゃんにそれをあげたかっただけなんだよねっ!」


 いや、やめてもらえます!?

 そんな事はっきり言われると、ちょ~恥ずかしいんですけど!!


「じゃあ、唯ちゃん!早速つけてみようよ♪」

「う、うん!」


 凛から着けるように促されると、唯は取り出したリボンを着けた。


「えへへっ、どう?」

「うん、さっきも言ったけど、唯ちゃん本当に似合ってるねっ♪」

「ああ、間違いなく唯に似合ってるよ」


 唯はリボンを付けた姿を嬉しそうに見せてくる。


 もちろん良く似合っているため、俺も凛も本心から唯を褒めた。


「あはっ!お兄ちゃん本当にありがとう♪」


 そう言って、唯は俺に抱き着いて来る。


 ・・・いや。

 嬉しいのはわかるんだけど・・・


 ここは人の目があるから、抱き着くのはやめてほしいんですけど・・・


 ほらっ!

 通りすがりの人達が、俺達を見てんじゃん!


 恥ずかしいんですけど!!


 とは思うものの、いつもの如く何も言えない俺・・・


「ふふっ、よかったね!唯ちゃん♪」

「はい!凛先輩もありがとうございます!」


「いやいや、私は何もしてないから」

「ううん、色々と凛さんのおかげですよ♪」


「そんな事はないけど、唯ちゃんがそう言うなら素直に受け取っておくね!」

「はい、本当にありがとうございます!」


 俺に抱き着いている唯に、凛が微笑ましそうに笑顔を向けている。


 ・・・いや、てか。

 この状態で話すのはやめてくれませんかね?


 せめて離れて喋って下さい・・・


「じゃあ、ゆっちゃん?今度は私のも開けて見ていいかな?」


 凛は俺に問い掛けてくるなり、すでに袋を開けている。


 ・・・俺の返答を聞かずに開けるなら、最初から確認しないでください。


 というか、本当に家に帰ってから見てくれよ・・・


「あ、これ可愛い~!」


 そう言って凛が取り出し、早速着け始める。


 凛にはパーマを掛けていても使えるように、桜の花のデザインや星型のヘアピンをいくつか見繕っていた。

 そして凛が今着けたのは、桜型の物である。


「あっ、凛先輩可愛い~♪よく似合ってますよ!」

「えへへっ、そうかな?ありがとう!・・・ゆっちゃんは、どう?」

「凛に似合いそうな物を選んだからな。思った通り似合ってるよ」


 唯は俺から離れて凛を褒める。

 そして唯に褒められて照れくさそうな凛は、俺にも感想を求めてきた。


 俺自身が選んだ物ではあるが、俺だけの考えだけでなく店員さんのアドバイスも参考にさせてもらったのだから似合っている事に間違いないのだ。


 というのも、つい先ほどの事なので店員さんも俺達3人が見ていた事を覚えていた。

 だから凛の特徴を伝えるとすぐにわかり、俺が選んだ物は人気のある商品であり、彼女には似合いそうだと太鼓判を押してもらったのである。


 そして、色々と悩みながら選んで買った結果、少し時間がかかってしまったのだ。

 唯と凛が戻る前に買い終わらせるつもりだった俺としては、2人が戻ってくるのが遅れて助かったというわけ。


 まあ、そんな事はいいとして・・・


「そっかぁ、ありがとう!」


 俺の似合っているという言葉を聞いて、今度は凛が俺に抱き着いて来る。


 ・・・いや、だから!


 公共の場ではやめてください!

 皆が見ています!!


 ・・・いや、皆が見ていない場所では良いと言っているわけじゃないよ?


「あはっ、凛先輩もよかったですね♪」

「うん、そうだね!唯ちゃんもありがとう♪」


 そして、凛に話しかけながら唯も俺に抱き着いて来る。


 ・・・なぜに!?

 もう、恥ずかしすぎるんですけど!!


 しかも、さっきからずっと意識しないように頑張っていたけど・・・


 2人にギューッと抱きしめられてい居る為、2人の身体の感触が・・・


 温かくて、やわこくて、気持ちいいです・・・


 もうダメだ俺・・・


 と、俺の頭がおかしくなりかけてきていると・・・


「ちなみに、お兄ちゃん?お兄ちゃんの事だから、お姉ちゃんとお母さんの分も買ったんでしょ?」

「あ、ゆっちゃんの性格ならそうだよね!」


 と、2人から言われる。


 見透かされてるし・・・


 さっきから俺の心を読まれているようで、凄く恥ずかしいです・・・


 というか、それをハッキリ口に出さないでください・・・

 あなた達の心の内に潜めておいてください・・・


 てか、話題に出てしまった事だし丁度いいから唯にお願いしよう。


「あ、ああ、そうなんだけどさ・・・俺から渡すのは何となく恥ずかしいから、唯から渡しておいてくれないか?」


 さすがに俺から渡すのは何か恥ずかしい気がするので、唯に頼んだのだが・・・


「ううん、お兄ちゃんから渡してあげた方が喜ぶと思うから、お兄ちゃんが渡してあげて!」

「うん、そうだよね!ゆっちゃんが直接渡してあげた方がいいと思うな!」


 と、2人から押し切られてしまったので、仕方がなく俺から渡すことにした。


 その後、満足げな笑顔を見せる凛と別れ、家路についたのである。


 そして家に居た穂香と朱美さんに、俺が買ったものを渡したら・・・


 ・・・

 もう、どうなったのかわかるよね・・・


 2人にサンドイッチにされた上、唯が更に加わってホットドックにされましたとさ・・・


 何を言っているのかわからない?


 ・・・うん、俺もよくわからん。

 いや、3方から抱き着かれて、逃げ出すことが不可能だと言いたいの・・・


 しかも、その後寝るまでずっと・・・


 ちなみに2人には、朱美さんにはレースで作られた花の様な物が付いたヘアバレッタ?という物、穂香にはシュシュを買っていたのである。


 3人に抱き着かれ包まれながらも、まあ喜んでくれたのならいいかと、遠い目をしながら思うのであった。


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桜井家は超絶複雑な家族だけど愛情にあふれています~おかげで俺の理性が崩壊寸前です・・・~ 黄色いキツネ☆ @kitakitsune3

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